大気中の二酸化炭素(CO2)を分離・回収するスイスのスタートアップであるクライムワークス(Climeworks)は6月4日、第3世代となるダイレクト・エアー・キャプチャー(DAC)技術を発表した(*1)。
第3世代DAC技術は、モジュールあたりのCO2回収能力が2倍、エネルギー消費は半分となり、材料の寿命を延ばすとともに、コストを50%削減した。フィルター素材とプラント設計に最新の研究開発成果を組み合わせることで、ギガトン級の炭素除去をグローバルに展開する技術を開発した。
第3世代は、旧世代で使用されていた充填フィルター装置に代わり、新しい構造の吸着材を使用している。これにより、CO2との表面接触を増加させ、CO2を回収・放出する時間を少なくとも2分の1に短縮し、従来のフィルターに比べて2倍以上のCO2を捕捉することができるようになる。
新しいフィルター素材は、消費エネルギーが従来の素材の半分で、寿命が3倍長くなるように設計されている。第3世代技術の活用を通じ、2030年までに回収するのに1トンあたり250~350ドル、除去するのに1トンあたり400~600ドルの総コストを達成することを目標とする。これは現在と比べて最大50%のコスト削減となる。
クライムワークスは、第3世代技術の開発に専念する50人のスペシャリストを含む180人の強力な研究開発チームを結成した。これらのスペシャリストは、新しい吸着材のテストに15,000時間を費やし、耐久性と効率を最適化するために5,000回にわたるCO2回収・放出サイクルを積み重ねてきた。
同社は従来のコレクター・コンテナからモジュール化を進めたことで、回収効率を高め、コストを削減し、堅牢性を高めるために再設計した。
クライムワークスのヤン・ヴルツバッハー共同創業者兼共同最高経営者(CEO)は「過去5年間にわたって第3世代技術の開発を進めてきた。この開発は実際の現場データに基づいており、メガトン級の除去能力へのスケールアップを可能にしている」と述べた(*1)。
新技術を利用した最初のプラントは、米エネルギー省(DOE)が資金を拠出するメガトン規模の「プロジェクト・サイプレスDACハブ」の一部としてルイジアナ州に建設される予定である。クライムワークスは、米国でさらに2つのメガトン級ハブに参画する意向を示している。ノルウェー、ケニア、カナダでのプロジェクト開発にも積極的に取り組んでおり、ギガトン級の炭素除去に向けたさらなる候補地の開拓を進めている。
同社は2009年にスイスで設立され、空気中のCO2を回収するDAC技術を有するグリーントランスフォーメーション(GX)関連のスタートアップだ。DAC技術開発のパイオニアとして、17年に最初の商用プラントを立ち上げた。大気中のCO2を検証可能な形で除去し、企業にとって排出削減が困難なCO2に対処できるよう支援する。
アイスランドで世界最大の商用DACプラント「オルカ」を運営しており、24年5月にはその10倍の規模を誇る「マンモス」を稼働させた。
【参照記事】*1 クライムワークス「Next generation tech powers Climeworks’ megaton leap」

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