人工知能(AI)による衛星画像解析の技術を提供するスタートアップのエーアイダッシュ(AiDash)は4月30日、シリーズC(資金調達ラウンド)で5,850万ドル(約90億円)を調達したと発表した(*1)。気候変動に強い持続可能なインフラ産業への移行目指す。
今回の投資ラウンドは、インパクト投資のパイオニアである英Lightrockが主導した。既存投資家であるベンチャーキャピタル(VC)の米Benhamou Global Venturesや仏電気大手シュナイダー・エレクトリックが支援するグローバルVCの米SE Venturesなどに加え、丸紅や米電力大手デュークエナジーも新たに参加した。
エーアイダッシュの資金調達総額は9,150万ドルに達している。
同社のアビシェック・シン共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は「次の100年に向けて、信頼性が高く持続可能なインフラを確保し、気候関連事象の影響をより的確に予測、準備、管理できるようにすることは、これまで以上に重要である」と述べた(*1)。
エーアイダッシュは2019年に設立され、米カリフォルニア州を拠点とするスタートアップだ。衛星データとAIを活用し、電力・ガス・水道などの重要インフラ向けに、資産の保守・運用の最適化やデジタル化を可能とするソリューションを提供する。
同社によると、顧客のインフラ企業は地理的に分散した資産を有し、運用、保守、サステナビリティの向上に何千億ドルもの資金を費やしている。しかし、ハイパーコネクティビティ(#1)、気候変動による災害、経験豊富な労働者の高齢化など、これらの資産に影響を及ぼす複雑な要因のために毎年数十億ドルを失っている状況だ。
そのよう中、エーアイダッシュはAIによる衛星画像解析により、地理的に分散した資産を大規模に監視し、インフラ産業がよりレジリエンス(強靭性)で、効率的で、持続可能なものになるよう支援している。
例えば、電量会社向けには、衛星データとAIを活用して送電線路および配電線路を360°見渡し、グリッド(送電網)全体の植生状況を分析する。正確な植物成長モデルを使用して、倒木や火災などのリスク分析と剪定計画を最適化する。
同社のソリューションはインフラ企業にさまざまなアウトカム(成果)をもたらしている。O&M(運用・保守)費用を20%削減したほか、暴風雨による停電を15%削減、検査コストを20~30%削減し、サービス導入の1年目から投資収益率(ROI)の改善を実現している。
(#1)ハイパーコネクティビティ…デバイス、ソーシャルネットワークなど、さまざまなプラットフォームを介した、人々やモノの相互のつながりが急激に強まった状態。
【参照記事】*1 エーアイダッシュ「AiDash Closes its Oversubscribed Series C Funding Round at $58.5 Million」
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