WWF(世界自然保護基金)はアセットオーナーが資産運用会社を選ぶ際、各社の気候パフォーマンスを評価するために利用できる「アセットオーナー向けのWWFリソースガイド:資産運用会社の選定、任命、およびモニタリング」を発刊した。年金基金などのアセットオーナーが資産運用会社とのエンゲージメントや、選定の際に参考にできるよう、既存のガイダンスや、温室効果ガスの排出を実質無くす「ネットゼロ」などに関する投資家のイニシアチブの概要をまとめている。WWFジャパンが1月12日、日本語版を公開した。
「パリ協定と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃特別報告書は、気候変動による最悪の事態を回避するため、温室効果ガス排出量を早急に削減する必要があるというコンセンサスを確立した。しかし現在、投資の流れはこうした野心と整合していない」。報告書は冒頭でこのように指摘する。WWFの2018年の調査では、アセットオーナーの上場株式や社債のポートフォリオは、いまだパリ協定の目標達成に整合していなかった。「気候変動対策の目標と整合していないことは、アセットオーナーにとっても重要な課題。パリ協定の目標が達成されなければ、異常気象などによる被害が拡大し、アセットオーナー自身が気候関連の財務リスクにさらされることになる」と警告。そのうえで、「アセットオーナーは、現在および将来の世代の年金を保全し、資産の保護をする長期的な義務を負っているため、気候変動に対処する方向へと舵を切る必要がある」と明記した。
一方、パリ協定の「地球温暖化を産業革命以前に比べ2℃未満に抑える」という目標に整合した投資を行うと、何もしない場合に比べて、最終的に投資収益率が向上し、財務リスクが低減する。こうした状況を踏まえ、協定の目標と整合した投資を行い、公正な移行に貢献する必要性とその実現可能性を確信するアセットオーナーは増えている。
WWFは「アセットオーナーは金融システムにおいて独自の地位を占めており、サービスプロバイダーを通じて気候関連商品やサービスの需要を喚起することができる。資産運用会社は、与えられたマンデート(資産運用委託)に基づいて資産を管理するため、アセットオーナーにとって特に重要」と、アセットオーナーと資産運用会社の役割と正しい選択の重要性を強調。「資産運用会社に指示を与え、資産の運用方針を左右する立場にあるアセットオーナーは、金融システムにおいて独自の地位を占めている。つまり、アセットオーナーが気候変動問題に対して高い関心を持ち、解決に向けた信念や目標を定めるなら、すべての資産はその解決に活かされる形で管理されることになる」としている。
本ガイドは年金基金など機関投資家向けのものとして作られてはいるが、気候変動対策やESG投資に関心がある個人投資家にとっても、投資信託のファンド選びや資産運用会社各社が発信する情報などを精査する際に参考になる情報といえるだろう。
【参照リリース】WWFジャパン「報告書 『アセットオーナー向けのWWF リソースガイド(日本語版)』を発表」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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