仏トタルエナジーズ、ミャンマーから撤退へ。人権問題を深刻視

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仏エネルギー大手のトタルエナジーズ(ティッカーシンボル:TTEF)は1月21日、ミャンマーから撤退する計画を発表した(*1)。2021年2月に国軍のクーデターが発生して以来、人権や法の支配をめぐる状況が悪化していることを踏まえ、事業の継続は困難と判断した。

トタルはミャンマーの人権問題に関して繰り返し非難しており、進行中のすべてのプロジェクトを停止する決断を下した。ただし、ヤダナガス田を運営する共同事業(#1)に関しては、ミャンマー及びタイ市民に電力を供給するうえで欠かすことができないことから、これまで事業を継続してきた。

また、同事業に出資する国軍影響下のミャンマー石油ガス公社(MOGE)を通じ、国軍に資金が流れることを止めるよう対応を図ってきた。トタルの株主や国内外の市民社会組織(CSO)といったステークホルダーが、配当金支払いをとめることを求める事態に発展していた。

しかしながら、トタルはこの状況を食い止めることは不可能だと判断し、ヤダナガス田を運営する共同事業からも撤退する。同事業はガスの買い手であるタイ石油公社(PTT)が直接支払いを行っている。また、プロジェクトからの資金の流れをエスクロー口座に限定する部分的制裁措置を講じるためにフランス政府に働きかけたが、事態を打開する策を見出すことができなかったという。

トタルは21日付で撤退の旨をパートナー企業に通知し、最大6ヶ月を経て契約満了になるという。トタルが保有していた権益は既存のオペレーターに引き継がれる見通しだ。なお、米石油大手のシェブロン(ティッカーシンボル:CVX)も出資引き揚げを検討中であることを明らかにしている(*2)。

ヤダナガス田は年間約60億立方メートルの天然ガスを生産し、うち7割がPTTを通じてタイに輸出されている。残りの3割はミャンマー石油ガス公社を通じて同国内で利用されている。なお、ヤダナガス田はミャンマーの旧首都であるヤンゴンの電力需要の半分ほどを賄っているという。

(#1)ヤダナガス田の共同事業…トタルは1992年に参画し、31.24%を出資する主力オペレーター。同事業にはその他にシェブロンが28.26%、PTT系が25.5%を出資、ミャンマー石油ガス公社が15%出資している。

【参照記事】*1 トタルエナジーズ「TotalEnergies withdraws from Myanmar
【参照記事】*2 ロイター「Oil majors TotalEnergies and Chevron withdraw from Myanmar

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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