公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は9月22日に創立50周年を迎えたのを機に、今後の活動目標と活動計画を発表した。深刻化が続く環境問題に対し、国際社会は気候危機を止める「パリ協定」の実施と、生物多様性を回復するための世界目標「ポスト2020枠組」への合意を進捗させている。WWFジャパンも「人と自然が調和して生きられる未来」を目指し、2030年、さらにその先の未来に向け「2030年生物多様性回復目標」「2050年脱炭素社会実現目標」という2つの大きな目標を掲げた。
2030年生物多様性回復目標は「世界の生物多様性を回復させるために、2030年までに、生物多様性の劣化を回復に向かわせる」。WWFは1996年以降、地球環境の現状を報告する「生きている地球レポート」を隔年で発行しており、2020年版では、地球上のさまざまな環境に生息する4000種あまりの野生生物の個体数の変化から、過去半世紀の間に世界の生物多様性が68%劣化したことを示し、その劣化を回復させるためのシナリオを作成。30年までに劣化を反転させるには①野生生物の生息環境の保全②持続可能な生産の推進③持続可能な消費の実現という三つ要素を組み合わせ、同時に推進していくことが必要になると示している。
野生生物の生息環境の保全は、野生生物が生きられる海や森などの自然環境を守る取り組み。持続可能な生産の推進は、製品を生産する過程で生じる自然環境への圧力を下げる取り組み。持続可能な生産活動を支える法律の整備や仕組みつくり、エネルギーや原料調達、廃棄物処理の長期目標を作る、などがある。さらに、持続可能な消費の実現は消費者一人ひとりが意識を持ち、声を上げ、行動する必要のある活動だ。持続可能な方法で作られた製品や温室効果ガスを出さない電力を選ぶ、企業に改善を求める声を届ける、などがある。
2つ目の2050年脱炭素社会実現目標では「2050年までに、世界の二酸化炭素の排出ゼロを実現する。そのために、2030年までに、日本の温室効果ガスの排出量を50%削減する」と打ち出す。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を「ゼロ」に抑える、つまり石油や石炭に頼らない「脱炭素社会」の実現が必要とされる。それは持続可能な太陽光や風力などの自然エネルギーを主力とした、グリーンな経済の実現でもある。WWFの提唱する脱炭素社会のための5つの条件は①消費者が、太陽光や風力など温室効果ガスを出さない電力や、省エネの製品を選ぶ②企業がビジネスで使うエネルギーを化石燃料から再エネに切り替え、明確な排出削減目標を立てる③温暖化防止に意欲的な企業に投資する④再生可能な自然エネルギー政策を推進する国会議員に投票する⑤政府に働きかけ、より高い排出削減目標を掲げ、実現するよう求める。
目標を達成するため、WWFジャパンは中期プロジェクト(2021年7月~2026年6月)を策定。気候エネルギー、森林、海洋水産、野生生物、淡水、金融、マーケット、フード、生物多様性というグループを設置し、それぞれが活動計画を進めていく。
また、50周年記念特設サイトに、新しいコンテンツ「5つの活動テーマと50の野生生物」を公開した。森林の保全、海洋の保全、淡水の保全、野生生物の保全、気候変動への取り組みという、WWFの5つの活動テーマの背景や問題の原因を紹介し、それを象徴する野生生物をテーマごとに10種ずつ選定し、絶滅の危機にある原因や解決策について解説している。
【関連サイト】WWFジャパン 中期プロジェクト一覧
【関連サイト】WWFジャパン 5theme and 50 species ~5つの活動テーマと50の野生生物~

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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