社会や環境における課題の解決を図りながら経済的な利益を目指す「インパクト投資」について、一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は9月27日、「2021年度版インパクト投資に関する消費者意識調査」の結果を公開した。今年3回目。認知度は全体の6.6%で、前年度調査の6.1%とほぼ横ばい。投資経験のある20代、30代の層におけるインパクト投資の認知度が高く、特にその中でも20代男性に約3割の認知度があった。投資意欲を測る関心度は全体の17.2%で、前年度の19.1%から約2%減少した。投資金額については、「50万円以上を投じてもよい」が約3割。潜在顧客層に関心のあるインパクト投資における社会・環境課題のテーマを聞いたところ、再生可能エネルギー、環境、医療、介護が上位を占めた。
調査期間は8月8日~9日、20歳から79歳までの全国の一般消費者にインターネットで実施、4127人から回答を得た。全国の性別人口比と年齢帯人口比に近似するよう層化二段無作為抽出している。はじめに、インパクト投資の経験者は47.6%で、19年の44.8%、20年の45.2%から微増で推移している。認知度は6.6%で、統計上の誤差を考えるとほぼ横ばい。ただし、インパクト投資を実際に行ってみることに約2割 (17.2%) の消費者が関心を持っており、認知度より高いため、社会・環境課題解決の機会があれば活用してみたい「潜在顧客」が一定規模いることがわかった。世代別では認知度、関心ともに20代、30代の割合が高い。
「投資によって社会・環境課題解決を支援したい」と考える分野は、再生可能エネルギー、環境、医療、介護が上位。7割以上の潜在顧客層が、自身の資産を運用する機関投資家によるインパクト投資に対して肯定的な考えを示した。また、インパクト投資に割いてもよい金額は「50万円以上」が多く、顧客層は各年齢帯に一定割合存在している。
結果から、SIIFは「インパクト投資の個人市場開拓への示唆」を公表している。「想定顧客セグメンテーション」では「株式、投資信託など既に投資を行っている投資経験者に重点を置くことが有効か」「積極的な投資方針の消費者はインパクト投資意欲が高いので、株式比率高い消費者に重点を置くことが有効」、世代では「20代、30代 (Z世代、ミレニアム世代) のほか、個人金融資産を多く有する60歳以上の世代も有望」とする。さらに「世帯年収約500万円、世帯金融資産約1,300万円が投資商品50万円を販売する目安」と分析する。
商品設計については、回答から「積極的投資方針の消費者には、株式、投資信託を取り入れ、他の投資商品と同等のリターンを訴求する」「バランス型、安定的投資方針の消費者には債券を組み込んだリスク回避型商品が有効」と分析。さらに「日本ではリスク忌避の投資家が多いので、 “インパクト預金” のような元本保証型商品も検討の余地あり」と示唆する。
情報を発信するコミュニケーションツールについては、インターネットのニュースサイトはほぼ全世代共通の情報ツールとなっており、20代にはSNS、30代~50代 はテレビ、60歳以上は新聞と、世代別の媒体の使い分けを提唱。また「リターンと並行して社会貢献性を訴求する」ことを上げている。
【参照リリース】2021年度版インパクト投資に関する消費者意識調査(pdf)
【関連サイト】一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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