米国大統領選挙におけるドナルド・トランプ氏の勝利を受け、資産運用大手のシュローダー・インベストメント・マネジメントは11月6日、「米国大統領選挙の結果を受けて:投資家への影響」と題するレポートを発表した。トランプ氏の4年ぶりの大統領復帰が米国経済や世界貿易、株式および債券市場、エネルギー転換にどのような影響を持つのか、シュローダーの運用担当者が見解を述べている。このうち、エネルギー政策について、グリーンシフトを実現させる政府のインセンティブ「グリーン・インセンティブ」は失われる可能性があるが、再生可能エネルギーのコストは維持されると予測した。
トランプ氏はクリーンエネルギー産業への経済支援の打ち切りを示唆しているが、シュローダーの見解では、インフレ抑制法(IRA)を一方的に廃止するのは難しそうだ。グリーン税制優遇措置の撤廃には米国議会の支持が必要だが「IRAがもたらしてきた広範な景気刺激策を考えると、廃止は支持を得られない可能性がある」ため、トランプ氏といえど慎重な判断が求められるだろう。
グリーン・エネルギー・プロジェクトに関するシュローダーのデータ分析によれば、IRAの成立以降、共和党支持者が多い州では50%以上の新規雇用と設備投資を創出したのに対し、民主党支持者が多い州では20%に上っている。
にも関わらず、トランプ氏は税額控除を受けるための資格に関する規則を厳格化したり、グリーン・エネルギー・プロジェクトに対する助成金や融資の実施を凍結したりするなど、大統領令を通じて気候変動関連法案を妨害する可能性があるため、同社はクリーンエネルギーへの移行が減速する可能性、さらによりインフレにつながる可能性を挙げる。
要因として、「資本コストは持続可能なエネルギー・プロジェクト開発とクリーン・エネルギー商品に対する消費者需要の重要な原動力。したがって、投資の減少、プロジェクトの継続的な遅延、消費者の電気自動車や屋上ソーラー、ヒートポンプのような主要技術への乗り換え」が原則すると見る。
同社は、世界的なエネルギー転換の長期的な原動力として「コストと技術の改善、持続可能なエネルギー商品とサービスに対する消費者と企業の需要の拡大、長期的な政策支援」の3つを挙げる。この観点から「米国の政策情勢の変化がポジティブではないことは間違いないが、この分野への投資を促す他の力の強さを過小評価してはならない」と訴えた。
レポートは、トランプ氏の復帰によって「米国経済はソフトランディングを達成し、財政政策は引き続き支援材料となる」との見方を維持。一方でトランプ氏が主導する関税強化や財政政策の影響によりインフレが再燃するリスクが高まったとしている。
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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