悩める投資家を指南。シュローダーが「インパクト投資ガイドブック」公開

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資産運用大手のシュローダーは5月13日、インパクト投資ガイドブックを公開した。インパクト投資とは何か、インパクト投資に必要な5つのステップについて説明している。

そもそもインパクト投資とは、投資家が社会的、環境的インパクトと同時に経済的リターンを追求することを可能にする投資のこと。「マイクロファイナンス」(貧困層向けの小口金融)需要の高まりのなかで開発金融機関(DFIs)が民間セクターで誕生し、民間資本を活用して、エマージング市場におけるフィナンシャル・インクルージョン(金融包摂、すべての人が等しく金融サービスを利用できるようにする取り組み)を推し進める動きが始まりで、その後、融資、債券、株式、仕組み商品等幅広い資産クラスにおいて、世界の開発・発展における重要な課題をプライベート市場におけるアプローチを活用して解決しようという動きが拡大していった。

ガイドブックは「インパクト投資は『社会的/環境的インパクトと経済的リターンは互いに相いれない』という通説に対して異議を唱えるもの」と示唆。さらに「インパクト投資戦略は『投資家への経済的リターンの提供と、投資がなされた地域社会への貢献を同時に実現する投資は可能』という考えに基づく。この二つの要素は補完的に互いを強化し、より幅広い目的の提供を可能とする」と解説している。

インパクト投資と「社会的責任投資(SRI)」「ESG投資」は区別が難しく見えるが、シュローダーは「それぞれのアプローチは明確に異なっている。SRIおよびESG投資は企業の規範やガバナンスを重視し、投資対象における除外や組入れ基準を設定し、適用する投資を意味する。一方、インパクト投資は、測定可能な社会的/環境的インパクト目標および経済的リターン目標を予め定義し、その目標達成に向けた投資を表す」と明確に定義している。インパクト投資の世界では、この概念は「ダブル/トリプル・ボトムライン・アプローチ」(経済、環境、社会におけるインパクトを管理するアプローチ)として知られている。

続いて「なぜインパクト投資なのか?」というポイントでは、国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)が、世界中のインパクト投資のステークホルダー(利害関係者)が参照すべき唯一の指標のようなものとなっている点を挙げ、SDGsの「2030年アジェンダ」を達成するためには、およそ毎年5~7兆米ドルの投資が必要だと推計されること、政府による拠出だけでこれらの問題を解決することはできないため、民間資本はSDGs達成において必須だと明示する。

その上で、「プラスのインパクトを創出するための5つのステップ」として①どのインパクトを達成したいか②どの程度の流動性やリスクを求めているか③どの地域にフォーカスを置くか④適切な投資ビークルはどれか⑤どのようにインパクトを測定するか――を挙げた。

このうち、どのインパクトを達成したいかというポイントとして、投資家が一番最初にすべきなのはどのインパクト・テーマをターゲットにするかをはっきりと定義することとしている。社会的テーマとは、フィナンシャル・インクルージョン、女性のエンパワーメント、雇用創出、低所得者向け住宅、教育、医療が挙げられ、環境的テーマとしては、気候変動対応、エネルギー効率化、再生可能エネルギー、サステナブル・インフラストラクチャー、グリーン・ビルディング、サステナブル農業など。これらに対して「投資家は一つもしくは複数のインパクト・テーマを選定し、その目標達成のために、特定のテーマ解決に向けた投資プロダクトや複数のインパクトやサステナビリティを重視した投資選択を実施するポートフォリオを選択していく」と示す。

4つ目の投資ビークルは、資産の証券化などの際、資産と投資家を繋げる機能を担う組織体を指す。ガイドブックでは「インパクト投資でも、投資家の様々なニーズに対応するため多様な投資ビークルが提供されており、適切な投資形態を選択するためには、各ビークルがどのような構造なのかを理解することが重要」と説き、個別口座による直接投資、インパクト・ファンド、ファンド・オブ・ファンズ、ブレンデッド・ファイナンス、パッシブ投資について、それぞれの特徴とリスクを説明している。

【関連サイト】【インパクト投資ガイドブック】インパクト投資に必要な5つのステップ

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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