環境テックスタートアップの豪サムサラ・エコ(Samsara Eco)は6月27日、シリーズA+(資金調達ラウンド)で6,500万ドル(約105億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、酵素リサイクル技術を拡大して廃プラスチックの削減を加速させる。
今回の投資ラウンドは、シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスと、ディープテック領域に特化した投資会社の豪メイン・シーケンス(Main Sequence)が主導した。カナダのスポーツ衣料品メーカーのルルレモン、日立製作所のコーポレートベンチャーキャピタルであるHitachi Venturesなども参画した。
今回の資金調達を受け、サムサラは酵素リサイクル技術を拡大させ、向こう数年間で東南アジアに新しい商用施設を建設する計画だ。同施設では、廃棄された繊維製品や包装材など、何百万トンもの廃プラをリサイクルし、何万トンものモノマー(プラスチックの最小単位)を生産する。それが全く新しい製品に生まれ変わることにより、真のサーキュラーエコノミーが形成されることになる。
化学者、エンジニア、技術者からなるグローバルチームの規模を拡大させるとともに、プラスチックを食べる酵素ライブラリーも増やす方針だ。
サムサラのポール・ライリー創業者兼最高経営責任者(CEO)は「プラスチックは、これまでに作られた90億トンのほとんど全てが地球上に残っており、環境破壊を引き起こしている。しかし、適切な技術さえあれば、ほとんど全てのプラスチックは再利用・リサイクルできる」と述べた(*1)。
サムサラは2020年の創業以来、ナイロン6,6とポリエステルを含むプラスチックのリサイクル技術を開発し、無限のリサイクルにおける世界初のイノベーションを主導してきた。2024年2月には、ルルレモンと協働し、世界初の酵素を活用してリサイクルされたナイロン6,6を発表した。
サムサラの特許リサイクル技術であるEosEcoは、生物物理学、化学、生物学、人工知能(AI)などコンピューター・サイエンスを組み合わせ、プラスチックを食べる酵素を作り出す。この酵素はナイロンやポリエステルでできた繊維製品などプラ廃棄物を原料に分解し、既存の製造工程にシームレスに組み込んで新しい製品を作る。
EosEcoはエンド・ツー・エンドのリサイクル時間を短縮すると同時に、より低い温度と圧力で運転することで、最終的に廃棄物と二酸化炭素(CO2)排出量を削減することができる。
同社は、あらゆる形態のプラスチックを無限にリサイクルする技術を拡大し、自動車、電子機器、消費者向けパッケージ商品のような既存の分野横断的サプライチェーンで利用できるようにする計画だ。
サムサラはオーストラリア首都特別地域で最初の実証施設を稼働中である。現在は、同国ニューサウスウェールズ州に新しいイノベーション・キャンパスの建設を進めている。
ライリーCEOは、サムサラの酵素リサイクル技術がプラスチックのクローズドループを構築することにより、ほとんど全ての業界でサステナビリティと脱炭素化の目標を達成することを容易にすると見ている。
【参照記事】*1 サムサラ・エコ「Samsara Eco secures $100M in Series A+ funding to help end plastic waste」
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