リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)スタートアップのOrchidは12月5日、初となる胚の全ゲノム解析検査を開始したと発表した(*1)。顧客は同サービスを利用し、体外受精による妊娠開始前に胚の遺伝子異常を特定することができるようになる。
Orchidは、不妊症や遺伝的問題を引き継ぐ危険性のある人々のための治療法である体外受精を受ける顧客を対象に、胚の全ゲノムシークエンシングレポートの提供を開始した。
体外受精は、女性が2週間ほど毎日ホルモン注射を受けた後、成熟した卵子を取り出して研究室で受精させ、その後、生存可能な胚を子宮に移植する。Orchidによると、この新しい検査は、これまで出生後にしか検出できなかった先天性欠損症、神経発達障害、染色体異常、小児および成人発症の癌などの遺伝的リスクが胚にあるかどうかを特定するのに役立つという。
既存の胚検査では、ゲノムのごく一部しか解析されないため、これらのリスクを同時に検出することができず、これまで体外受精を受ける人は、受精卵の遺伝的リスクを知ることが限られていた。
Institute for Reproductive Healthによると、体外受精は、米国で平均12,000ドル以上かかるという(*2)。成功が保証されているわけではないため、妊娠に至るまでに何度も体外受精を繰り返す人もおり、心理的・経済的に大きな負担がかかる。また、米国だけでも、希少疾患の大半は遺伝性であり、3,000万人、つまり10人に1人が罹患している。
そのような中、Orchidの30倍速全ゲノムシークエンスは、胚のゲノムの配列を99%以上解読し、これまでの1%未満と比較して飛躍的に分析の精度を向上させている。また、同社の遺伝子検査は、受精卵1個につき2,500ドルの追加費用がかかるが、体外受精のプロセスに新たなステップやリスクを加えるものではなく、業務を自動化することでコストを下げられる見込みだ。
Orchidの検査は、ロサンゼルス、シカゴ、マイアミ、オースチンなどの主要都市の体外受精クリニックで利用できるようになった。検査から約3週間後にレポートを受け取り、認定遺伝カウンセラーがその結果を理解する手助けを行う。
Orchidの胚の全ゲノムシークエンシングにより、以前は発見されなかった遺伝的リスクをより包括的にスクリーニングすることができ、次世代の人々の健康寿命を延ばすことができるかもしれない。
ハーバード大学医学部遺伝学教授のジョージ・チャーチ博士、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏、コインベース最高経営責任者(CEO)のブライアン・アームストロング氏などのエンジェル投資家(#1)がOrchidを支援する。
(#1)エンジェル投資家…起業して間もない企業に資金を出資する投資家
【参照記事】*1 Orchid「Meet Orchid, the first whole genome embryo reports」
【参照記事】*2 Institute for Reproductive Health「In Vitro Fertilization (IVF) Costs」
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