企業は株主以外にも「説明責任ある」と考える投資家は6割。ナティクシスIM グローバルESG調査

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ESG(環境・社会・企業統治)投資の機運が高まる中で「企業は株主のもの」という論調に変化が表れている。投資運用大手のナティクシス・インベストメント・マネージャーズが11月9日に発表した調査で、世界中の投資家の60%が「企業は株主のために価値を創造することだけに責任がある」という考え方を否定。企業が環境や社会に与える影響についても責任を負うことを期待しており、政策当局やファンドマネージャーを含む民間部門のさらなる行動を求めている。

調査は、投資資産が10万米ドル(または購買価格平価相当額)以上の世界24ヶ国の個人投資家8550名を対象に実施、国連気候変動枠組条約会議(COP26)の開催に合わせ発表した。まず、回答者の77%は、気候変動や格差を含む社会への影響について企業に責任を負わせることが投資家としての責務であると考えている。また、82%が企業は社会的課題に取り組む責任があると答え、 政府に責任があるという回答者数(78%)を上回った。さらに、45%が、より持続可能なビジネスモデルに移行している企業に投資することが重要と考えていた。気候変動を抑制する上で重要な要素であるカーボンフットプリントに対して、良好に対処しているファンドに投資したいと回答した投資家は67%に上った。

環境・社会・ガバナンス(ESG)投資戦略の運用総資産が全世界で1.6兆ドル(2020年)に達する中、今回の調査では、個人投資家の21%が現在ESG投資戦略を採用していることがわかった。うち24%が過去1年の間に初めてESG投資を実行しており、また、以前から投資していた人の33%が保有している資産への投資を増やしていた。ESG投資を行っていない人の中でも、49%が「もっと詳しく学びたい」と答えている。

これまで、ESGの採用は、自分の資産が環境、社会、倫理的な変化を促進することを望む社会意識の高いミレニアル世代によって推進されてきたとされる。確かに若年層の割合が高くなってはいるが、結果からミレニアル世代の27%がESGに投資していると回答したのに比べ、X世代の20%、ベビーブーム世代の18%もESGに投資。さらに、関心は、ミレニアル世代の52%、X世代の52%、ベビーブーム世代の44%と、すべての年齢層において高まっている。欧州はESGの採用でリードしてきたが、世界も追いついてきている。現在、ESGを採用している北米の投資家は28%で、欧州(22%)およびアジア(22%)の投資家を上回った。ESG投資の割合が最も少ないのは中南米諸国(13%)だが、まだ投資をしていなくてもESGに関心があると回答した投資家は62%と多く、情勢が変わっていきそうだ。

「より良い世界を作りたい」と回答した投資家とほぼ同数の投資家が「ESGは新たな投資機会を提供する」と回答(37%)している点も注目される。投資家としての現実的な見方と、価値観を追求する手段としての投資は、矛盾なく結びついている。また、35%の投資家が、ESGは投資手法として良い手法とシンプルに考えている。

ナティクシスIMが2017年に行った調査では、投資家の64%が、個人の価値観に合った投資を行うためには、リターンの可能性をある程度犠牲にする必要があると考えていたが、投資家の意識は大きく変化した。非財務的なパフォーマンスに関する情報がないためにESGへの投資を控えていると回答した投資家は22%にとどまった。一方、35%の投資家が、ESGは投資手法として良い手法とシンプルに考えている。

投資家の多数(58%)は、 投資を通じて社会問題の解決に貢献する責任があると考えている。53%が、企業にメッセージを伝える最善の方法は株式を売却することであると考えており、ミレニアル世代の43%、X世代の38%、ベビーブーム世代の29%が、企業のESGパフォーマンスの低迷を理由に投資を売却したことがあると回答した。

こうした変化について、同社は「ESG投資の意思決定プロセスには、ファイナンシャルアドバイザー、ファンドマネージャー、投資家自身などすべての投資関係者が関与すべきだと考える個人投資家が増えている。投資においてESGがいかに主流になっているか、そしてESGが投資における最も重要な意思決定項目の一つになる可能性を示している」としている。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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