ナティクシス・インベストメント・インスティチュートが9月11日発表した「ナティクシス・ストラテジスト・アウトルック調査」で、ナティクシス・グループの投資専門家は史上最速の相場急落と反発を受け、相対的には楽観的な見通しを示しているものの、完全な回復には時間を要すると考えていることが明らかになった。
調査はナティクシス・インベストメント・マネージャーズ、そのグループ運用会社、ナティクシス・コーポレート・インベストメント・バンキングのストラテジストやエコノミスト、ポートフォリオ・マネージャーの計36名を対象に実施。今回は回答者の約半数が相場の大幅な急落を予想する一方、半数が12月まで株式相場の反発が続く“二重底”を予想。 最大の懸念事項として、新型コロナウィルス感染拡大の第二波、次に米中の貿易に関する対立と米大統領選挙が挙がった。また、調査対象のストラテジストのほぼ全員(91%)がESG投資こそがコロナ危機における勝者であると回答した。
今日までの回復、実施された大規模な財政・金融支援策にも関わらず、ストラテジストの3分の1はW字型回復を予想しており、景気が再度悪化することを見込んでいる。この見解は、相場の上昇を予想している回答者(47%)と相場の下落を見込んでいる回答者(53%)の双方に共通しており、さらに回答者の約半数(44%)が、経済は回復に向かっているものの、その前に行き詰まる可能性が高いと見ている。また、株式市場の急速な回復にも関わらず、経済がそれに追随すると見ている専門家はわずか2.8%にとどまった。結果について、ナティクシスは「二番底は『なるかならないか』ではなく、『いつなるのか』という問題」と切迫した見方を示す。
秋から初冬にかけてインフルエンザの流行と共に世界的に第二波が到来し、コロナ関連リスクが高まる可能性が懸念される中、調査対象者の86%が新型コロナを、リスク格付けで「5以上」の最大のリスク要因として挙げており、平均スコアは7.5となった。一方、11月に予定される米国大統領選への外国の干渉がもたらす市場リスクに対しては、それほど大きな懸念を抱いていない(平均スコア:3.5)が、ナティクシスのストラテジストは「政情不安や大統領選の結果次第で市場の変動が大きくなる可能性も想定できる」と考えている。
米大統領選挙については、回答者の78%がジョー・バイデン候補が勝利すると予測。バイデン氏勝利は世界貿易(75%)、地政学的リスク(75%)、世界経済(61%)に有利と考えていた。しかし、結果が米国民にどのように受け取られるかについては、回答者の半数は「選挙が社会不安をもたらす」と懸念している。また、半数以上(58%)が法人税の引き下げとトランプ氏の持つ企業優先とのイメージから、トランプ氏の再選は株式市場にとって望ましいと考えている。
ストラテジストの間では、テクノロジーが市場の勝者との見方が主流となっている。同様に、94%のストラテジストは今後ヘルスケアが政策立案者にとってさらに強力なセクターになると予想しており、在宅勤務に関連した産業は僅差で3位(91%)となった。しかし、調査は「最も驚くべきことは、パンデミックがESG(環境・社会・ガバナンス)投資の回復力を明らかにしたことにある」と強調している。
同社は、2020年前半のESG投資戦略のほとんどは抵抗力を示し、ESG投資への関心は大幅に高まり「ストラテジストの91%がESG投資を勝者だと考えるに至った。今回のパンデミックによる危機を受け、75%のストラテジストが「ESG投資はより重要かつ主流になる」との見方を示した。
一方、景気回復はゆっくりしたものであると予測される中、伝統的なエンターテインメント(85%)と旅行(83%)といった産業は業況が一層悪化した。20年第1四半期以降、独自の課題を経験してきたエネルギーも、回答者の77%が「敗者になる可能性が高い」と見ている。
【参照記事】「ナティクシス・ストラテジスト・アウトルック調査」:ナティクシスのストラテジストとグループ運用会社の資産運用担当者が2020年末までの主要な市場リスクを特定
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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