鉄鋼大手のJFEホールディングス株式会社は1月20日、脱炭素の実現を目指して「トランジションボンド」を発行することを明らかにした。発行は2022年度、公募形式で行い、主幹事証券会社は野村證券株式会社。年限や発行額は公表されていないが、総額300億円程度と想定されている。
トランジションボンドは、低炭素経済社会等に移行(トランジション)するためのプロジェクトを資金使途とする債券。地球温暖化対策や再生可能エネルギーなどへの取り組みに特化した資金を調達するために発行される債券にグリーンボンド(GB)があるが、CO2多排出産業は発行条件を満たすことが難しい。トランジションボンドはこうした産業が脱炭素化に向かうための資金調達の手段のひとつで、移行債とも呼ばれる。
フランスの大手運用機関アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)が2019年6月にガイドラインを公表、各国で発行例が続いている。日本では21年7月、日本郵船株式会社が総額200億円を発行。JFEホールディングスは国内製造業で初の発行となる。
同社は50年のCO2排出量実質ゼロに向け、24年度に鉄鋼事業の排出量を13年度比で18%減らす方針を掲げている。同債の資金使途候補としては①省エネ・高効率化に関する取り組み②エコプロダクトの開発③超革新的製鉄プロセスの開発④バイオマス・地熱・太陽光発電など再生可能エネルギーに関する取り組みに充てる。
JFEグループは気候変動問題を重要な経営課題ととらえ、カーボンニュートラルの実現に向けて「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を策定。「鉄は引き続き必要不可欠な素材であり、2050 年カーボンニュートラルに向けたロードマップで示すように、既存のプロセスへの様々なトランジション技術を活用しつつ、世界の競合他社に先んじて、革新的技術となる脱炭素技術を可能な限り早い時期に確立することを目指す」としている。
同債は、経済産業省の「令和3年度クライメート・トランジション・ファイナンスモデル事業に係るモデル事例」に、国内製造業で初めて選定されている。同省はCO2多排出産業の2050年カーボンニュートラル実現に向けた具体的な移行の方向性を示すため、「経済産業分野におけるトランジション・ファイナンス推進のためのロードマップ策定検討会」を開催、第一弾として「トランジション・ファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップをとりまとめた。今後は化学、電力、石油、ガス、製紙・パルプ、セメントの6分野についてもロードマップを策定する予定。
【参照リリース】
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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