国際労働機関(ILO)は4月6日、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括・包含)に関する新たな報告書を公表した(*1)。同報告書によると、4人に1人が職場で自分の価値を実感していないが、より上級職はインクルード(含み入れる、仲間に入れる)されていると感じているという。
ダイバーシティとインクルージョンに関するこれまでの研究は、欧米の高所得国における大企業を対象としたものが多かった。一方、本報告書は5地域75か国の低中所得国と高中所得国における、あらゆる規模の企業の12,000人以上を対象とする。スタッフ、マネージャー、上級管理職といった多様な役職クラスから情報を収集したという。年齢や性別、性的指向、民族・人種・宗教、障がい者、HIV感染者といった多様な情報も反映されている。
本報告書での研究では、職場でインクルージョンを感じるのは、個人の経歴や年齢、性別、民族・人種・宗教などの特徴よりも、年功序列と関連する可能性が高いことがわかった。上級職の92%が職場でインクルードされていると感じるとともに、ダイバーシティが尊重されていると答えたのに対し、下級職では76%であったという。また、中堅、大企業、多国籍企業の従業員は、中小企業や国営企業よりも肯定的に感じている傾向があった。
経営層において女性がクリティカルマス(40~60%)を占めると答えた割合はわずか25%であった。3分の1は上級管理職に障がい者がいないとも回答。ILO労働条件・平等局のマヌエラ・トメイ局長は、新型コロナのパンデミックが発生して経済社会の不平等が広がるなか、職場での平等、ダイバーシティ、インクルージョンは(困難に直面したときに)回復力を発揮するための重要な要素になると述べた(*1)。
本報告書では、職場や事業、経済、社会で高いパフォーマンスを発揮するには、ダイバーシティとインクルージョンが決定的な役割を果たすと指摘する。そのうえで、上級職クラスのみインクルージョンを感じる企業は、かなりの便益を失うことになると付け加えた。
また、ダイバーシティとインクルージョンに関するビジネスケースを、政策や法的枠組み、企業価値と結びつけることが、持続可能で根本的な変化をとげるために企業へ最も影響を与えうる方法であるという。
近年、グローバル投資家はESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する傾向にあるなか、ダイバーシティとインクルージョンを推進する各企業が、従業員の採用や維持、人材開発といった場面でいかなるアクションを起こすか注目したい。
【参照記事】*1 国際労働機関「Diversity and inclusion in the workplace: Greater progress on diversity and inclusion essential to rebuild productive and resilient workplaces」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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