新型コロナウィルスの世界的な大流行は金融市場を揺るがし、市場は短期的に全面売りの状況に見舞われたが、その中で健闘を見せたのが、ESG(環境・社会・ガバナンス)を配慮した銘柄への投資を行うESGファンドだ。
S&P Globalが5月22日に公表した記事によると、世界のESG ETFおよびETPの合計資産は2020年2月末に4.93%増加し、679.9億米ドルの新記録を達成したことが分かった。
また、同社はこのESGファンドへの資金流入を誰が牽引したのかについて、ユニークな洞察を提供している。これまで一般的にESG投資に関心が高い層として注目されていたのはミレニアル世代だったが、S&P Globalによると、最近ではミレニアル世代だけではなくすべての世代の投資家がESG投資について、そして、その価値観を行動に移す方法について関心を持っており、この中にはベビーブーマー世代も含まれているという。
同社は、最新の報告は「団塊の世代はミレニアル世代やX世代よりもESG投資に参加したいと考えており、その理由は企業が良き企業市民になることを奨励するため」であることを示していると指摘している。
また、S&P Globalはベビーブーマー世代も含めてすべての世代がESG投資の方法やどのように自分の価値観にあった投資をできるかを学びたいと考えているとしたうえで、ベビーブーマー、X世代、ミレニアル世代の間では、パフォーマンスを犠牲にせずに自身の価値観に沿った投資をするという目標が共有されていると説明する。
実際に、今回のコロナショックのなかでS&P 500®ESGインデックスはESG投資とパフォーマンスとの間にはトレードオフが存在するという神話を払拭した。S&P Globalのデータによると、2019年3月末から2020年3月末までの一年間において、S&P500®ESGインデックスのリターンは-4.30%と既存指数であるS&P 500の-6.98%を上回っている。
これは、ESGはパフォーマンスを損なうのではなく、むしろ従来の財務分析では把握しきれなかった重要な指標の可視性を高めていることの表れでもある。また、S&P 500 ESGインデックスの目標はS&P 500ベンチマークを上回ることではなく、女性の管理職比率上昇や温室効果ガス排出量の削減、リスク文化の効果的な促進など全体的なESGパフォーマンスの大幅な改善をすることにある。
コロナショックにより自分の価値観に沿ったESG投資はパフォーマンスを犠牲にしないという新たな常識がミレニアル世代を超えて全世代に共有されたことで、今後、ESG投資の裾野はますます広がることになりそうだ。
【参照サイト】Move over Millennials: ESG Investing Is a Multigenerational Conversation

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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