英国に本社を置くシューローダーの日本法人シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は8月19日、「新型コロナウイルスと日本企業」と題したレポートを公開した。運用部日本株式ファンドマネジャーの豊田一弘氏が「新型コロナウイルスと日本企業が取り組むESGについて考えてみたい」と考察を述べている。
ESG(環境、社会、ガバナンス)のうち、環境(E)について、豊田氏は、今年の化石燃料に由来するCO2排出量は新型コロナの感染拡大によって最大7%減となり、「第二次世界大戦後の最も大きな前年比減少となる見込み」を引用。「7%という数字は工業化以前と比べて地球全体の平均気温を1.5%に抑えるために必要な年平均の減少率と整合的。言い換えると『非連続的』なアプローチやビジネスモデルの大転換がなければ、1.5%の達成は非常に難しい」と指摘、このような状況で役員報酬のKPI(重要業績評価指標)にCO2排出量を取り入れたエネルギー関連企業の取り組みに注目する。
社会(S)では「最も重要なステークホルダーと考えられる『従業員』と企業との間に様々な課題を提起することになった」と述べる。リモートワークなどの対応がとられる中、企業価値に直結する課題として従業員の労働生産性に注目が集まる。「困難な事業環境の下、マネジメントがいかに従業員エンゲージメントを進められるか、即ち、従業員の働くモチベーションの維持・向上を図ることが出来るかという点で、企業間格差は一層広がる」という予測だ。雌雄を決するのは経営トップのリーダーシップであり、そのコメントには特に注意しているという。
ガバナンス(G)については、株式投資のリターンは配当と株価上昇によるキャピタルゲインのため、投資家にとって配当は最大の関心事の一つだが、豊田氏は今回、配当水準の決定においても企業間で差異が見られたと指摘する。「同じ業種で同じような財務体質であっても一方は配当維持、他方は大幅減配といった具合。株式市場の反応は、配当を維持すると見られていた会社が減配とされた場合、大きな株価調整に繋がったケースが多くあった。つまり、バランスシートが強固な日本企業にあっては、これまでの還元水準が低かったこともあり、投資家は一定の還元維持を期待している」と結論づけた。
そのうえで、新型コロナウイルスは「日本企業のESGの取り組みを『ポーズとしてのESG』と『企業価値向上のためのESG』という2つのカテゴリーに峻別するリトマス試験紙になるのでは」と考察している。
シュローダーは1804年創業のアセットマネジメントを専門とする英国の多国籍企業。ヨーロッパ、アメリカ、アジア、中東、アフリカの35拠点に5,000人以上の従業員を有する。シュローダーの責任投資への包括的なアプローチは国連責任投資原則(PRI)から最高格付け「A+」*を取得している。また、英国で責任投資を推進するNGO、ShareActionによる「2020年責任投資調査」では、欧州系資産運用会社として7位となった。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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