株式会社電通は6月9日、第1回「カーボンニュートラルに関する生活者調査」の結果を発表した。カーボンニュートラル(炭素中立)は生産・活動によって排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量で相殺されている(中立)状態で、脱炭素社会を実現するための考え方として提唱されている。同調査はカーボンニュートラルに関する「認知・理解」や「興味・関心」について現状を把握し、今後の浸透の一助としてもらうことを目的に、電通グループ横断でサステナビリティ(持続可能性)に関するプロジェクトを推進する「サステナビリティ推進オフィス」および「電通Team SDGs」が実施。併せて経済産業省が発表した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の14の重点分野についての認識状況、カーボンニュートラルに取り組む企業に対する意識調査も行った。
対象は全国10~70代の男女計1400人で、1400人のうち、年齢層・性別を10代〜70代の7区分×男女2区分で各100名ずつ、性年代で均等割付。回収集計時には人口構成比に合わせてウエイトバック集計を実施した。調査は2021年4月2日から4日、インターネットで実施した。
分析では、カーボンニュートラルという言葉の内容まで理解している生活者は15%に留まる一方、取り組みの必要性は7割以上の生活者が感じていた。グリーン成長戦略の14の重点分野に関する認知や内容理解について、6分野は社会に浸透する可能性が見えてきているが、全分野、生活者に定着するまでには至っていない。年代別では、特に60-70代がほとんどの分野の取り組みに対する関心度が相対的に高い。取り組みの先導は「国」、正しい情報は「研究機関」、実施は「大企業」に期待する傾向があった。カーボンニュートラルに取り組む企業・団体に対しては「時代の変化に適応し、チャレンジ精神や、長期定期な経営視点がある」とポジティブな印象を持ち、また、約8割の生活者は、取り組みによる一定の追加費用の負担を許容しているという結果だった。
詳細を見ると、グリーン成長戦略重点14分野に関する認知率では「自動車の脱炭素化・蓄電池技術」と「資源循環型社会」の取り組みに対してはやや認知されているが、総じて、現状では14の重点分野の取り組みに関する認知は低い傾向にあった。同社では、14の重点分野の世の中の浸透度をスコア化した「実施状況(行動・関心度)」と「今後自分は関与を高めたい・増やしたい」の組合せによって「定着」「トレンド」「兆し」「潜在」「停滞」「マンネリ」の6つのグループに分ける「カーボンニュートラルポテンシャルマップ」を作成。6つの分野が実行動への誘因で更に話題を大きくできる「トレンド」に位置しているが、5分野は関心もなく、今後関与を高めたいともまだ思われていない「潜在」に位置しており、今後の課題と言える。
カーボンニュートラルの実現に向けた各取り組みについて、今後必要性意識が高まりそうかを聞いたところ、ほぼ全ての項目で「高まりそう・増えそう(やや高まりそう・増えそうを含む)」が半数以上となった。特に「自動車の脱炭素化・蓄電池技術の実現」「資源循環型社会の実現」の必要性意識が高まりそうと思われていた。
日本におけるカーボンニュートラルは、2020年12月に2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略が策定、21年4月には2030年の目標として温室効果ガス46%削減の発表が行われた。さらに改正地球温暖化対策推進法(温対法)が5月26日、参院本会議で可決、成立した。環境省は22年4月の施行を目指している。企業もサステナビリティをより重視した経営を進める中で、カーボンニュートラルへの取り組みを加速させており、こうした動きを踏まえ、同社は今後も同調査を定期的に実施、公表していく。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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