必須金融情報のブルームバーグ エル・ピーは11月22日、「2030年までに世界の再生可能エネルギーを3倍に―困難だが達成可能で、ネットゼロ達成には必須」という見解を発表した。世界の再生可能エネルギーを2030年までに3倍に増やすことをCOP28議長国が提言しており、同社はブルームバーグのリサーチ部門であるブルームバーグNEF(BNEF)の分析に基づき「ネットゼロの軌道に乗るために必要な10.5テラワットの増加に相当」と試算。そのうえで、BNEFの予測では、太陽光発電は2030年までに必要な軌道に乗っているが、風力発電と蓄電池はさらに導入を増やすための取り組みが不可欠だとしている。
2030年までに世界の再生可能エネルギー導入容量を3倍にするという目標は、今月アラブ首長国連邦で開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で議長国が国際的な合意を目指している。レポートは、2030年までに再生可能エネルギーの発電容量を約11テラワット増加することに相当すると算定したうえで、「公約案は2050年までに全世界でネットゼロを実現するための軌道、そしてパリ協定の各種目標の達成に欠かせない取り組み」と主張する。
再生可能エネルギーの発電容量を3倍にするまでに2010年から22年まで12年を要したが、今回は8年間で実現せねばならない。BNEFの予測は、現在のテクノロジーの経済性やトレンド、開発中のプロジェクト、政策に基づいた導入量を反映したものだが、風力発電と太陽光発電は今や多くの国で最も安価な再生可能エネルギー源となっているにもかかわらず、現時点の導入状況はこの予想を下回った。
レポートは、太陽光発電についてはこの3倍増加の目標を達成できる可能性が高い一方、風力発電では官民が結束して導入を増やす必要があると指摘。また、適切な構成で発電容量を拡大することの重要性を挙げ、「太陽光発電に過度に依存することで再生可能エネルギー発電容量を3倍に増やして脱炭素化を急速に目指しても、適切な構成で実現した場合と比べて、発電量増加と排出量削減のどちらにとっても影響力が限られる」と見る。
BNEFの「ネットゼロ・シナリオ」は、地球温暖化を摂氏2度未満に抑えつつ2050年までに排出量ネットゼロを目指す道筋を示すもの。この中で、仮にエネルギー転換が全く行われない状態と比較すると、再生可能エネルギーが30年までに排出削減量全体の62%に寄与すると予想される。
一方、産業や道路輸送といったエンドユーザーを対象とする各種部門の電化は、それとは別に排出削減量全体の15%に寄与するとみられる。
ブルームバーグは「必要な取り組みを進めるためには、COP28での公約案を基に、再生可能エネルギー開発業者が直面するアクセスの障壁を取り除いたり、入札競争を可能にしたり、企業の電力購入契約を奨励したりすることが求められる。各国政府はまた、電力系統に投資し、プロジェクトの許認可手続きを簡素化するほか、新規の発電を活用できる柔軟な電力システムが奨励される電力市場・アンシラリーサービス市場の機能を確保する必要がある」と総括している。
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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