電動航空機の開発を手掛けるベータ・テクノロジーズ(BETA Technologies)は10月31日、シリーズC(資金調達ラウンド)で3億1,800万ドル(約490億円)を調達したと発表した(*1)。電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発を進め、物流や防衛、医療などの市場開拓を目指す。
今回の投資ラウンドは、政府系ファンドのカタール投資庁(QIA)が主導した。フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニー、TPGライズ・クライメートなどの既存投資家も参加している。ベータはこれまでに合計10億ドル超を調達した。
ベータは2017年の創業以来、航空輸送をよりクリーンで安全、かつコスト効率の高いものにすることで、物資や人の輸送方法のパラダイムを変えることを目指している。eVTOL最大級の航続距離および積載重量を有するALIA-250などの開発を進めている(*2)。
今回の資金調達により、全電気式固定翼航空機およびeVTOL機ALIA、高性能な電気推進システム、マルチモーダル充電システム、インフラネットワークなど、これらのソリューションの製造、認証取得、商用化を推し進める方針だ。
ベータは、全電気式航空機の2つのバリエーションについて米連邦航空局(FAA)の認証取得を目指している。ALIA CTOLは、従来の方法で離着陸するために滑走路を使用する。 ALIA VTOLは、垂直に離着陸するため滑走路を必要としない。
これらの航空機は構造的に類似しており、どちらもベータの高性能電気推進技術とフライ・バイ・ワイヤ飛行制御システムを採用している。同社は両機の貨物および旅客用の認証取得を目指している。
ベータは航空機に加え、同社および同業他社の航空機、あらゆるタイプの電気自動車(EV)に対応するマルチモーダル充電システムの設計、認証、製造を行っている。航空機用UL認証取得のグリッドタイ充電システムの唯一の製造業者であり、同社の充電器は複数の航空機メーカーを含む多数の顧客に採用されている。
さらに、ベータは充電システムの販売に加え、米国全土の空港で充電システムネットワークの構築も行っている。現在までに米国東部および南部全域にインフラを設置しており、今後数年間で米国全土にネットワークを接続し、世界的に拡大していく計画である。
ベータは4年以上にわたり、米国で最も利用の多い空域での運航、国境の越境、米国国防総省への配備など、独自のインフラ上で航空機の飛行と充電を行ってきた。燃料を使用する航空機と比較してコスト削減を実証し、量産予定のeVTOLの有人飛行移行なども達成した。
2023年後半には、約18,580平方メートルの製造施設を開設し、ニュージーランド航空、UPS、米陸空軍など向けに航空機の製造を進めている。年間300機までの生産能力があり、今後数か月の間に顧客に納入する航空機の生産を開始している。今後18~24か月の間に生産ペースをさらに加速させる計画だ。
商用化へのアプローチには、電気航空機の実現に不可欠な技術である電気モーター、インバーター、バッテリーパック、高電圧配電、フライトコントローラーなどを所有管理しなければならない。他のコンポーネントについては、最高水準の実績と伝統を持つ航空宇宙サプライヤーと提携することを検討する。このアプローチにより、生産スケジュールの最適化や収益源の多様化などを図る。
【参照記事】*1 Business Wire「BETA Technologies raises more than $300M in additional equity capital to fund growth and commercialization」
【参照記事】*2 双日「双日、米BETA Technologiesと日本国内における次世代エアモビリティ(AAM)市場の構築を目指す」
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