ビジネスにおけるジェンダー・ダイバーシティ(性別、人種などの多様性を尊重する姿勢)は良好なコーポレート・ガバナンスにつながるという見方が、日本でも受け入れられつつある。アクサ・インベストメントマネージャーズは英国現地時間の3月9日、オウンドメディア「Tomorrow Augmented」で「ジェンダーの平等およびダイバーシティは今後の企業の必要条件に」とする記事で、「投資家にとってジェンダー・ダイバーシティは急速に投資先企業の必要条件になりつつある」とレポートしている。
2019年夏、ダイアン・モアフィールドという女性が米国の自動車オークション会社の最高財務責任者として雇用された。この人事により、「S&P 500指数構成銘柄」で、男性だけで取締役会を構成する企業はなくなった。今年、ゴールドマン・サックスは「少なくとも1人の女性(または白人ではない人)が取締役会に参加していない限り、その企業の新規株式公開に取り組まない」という方針を発表している。
クレディ・スイスは、経営陣に占める女性の割合が15%未満の企業、20%以上の企業、30%以上の企業の過去約10年の業績を比較した。ジェンダー・ダイバーシティが平均を超える企業の業績は、2010年1月から2019年5月にかけ、同社の「クレディ・スイス・ジェンダー3000」の分析対象企業と「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」の銘柄の平均を上回っていた。
ピーターソン国際経済研究所の研究は、取締役会および広範な従業員の中でのジェンダー・ダイバーシティは財政的な観点からポジティブという見方を支持している。経営陣に女性がいなかった企業が女性比率を30%まで増やした場合、収益の15%の増加に関連すると結論づけている。さらに、マッキンゼーの分析では、経営陣のジェンダー・ダイバーシティ上位の企業は、収益性で高いパフォーマンスを示す可能性が高いと強調されている。また、ダイバーシティが進んだ企業は高い配当利回りが高く、ボラティリティとリスク・エクスポージャーが低くなる傾向があり、「投資家にとっては朗報」とする。国際金融公社によると、取締役会のダイバーシティ化は、環境、社会、ガバナンス(ESG)の基準も改善し、好業績に繋がるという。
一方で、ビジネスでのダイバーシティは十分に浸透しておらず、マッキンゼーによると、最高経営幹部レベルの役職で、女性の比率は21%に過ぎない。女性の昇進を妨げる障壁の存在、女性が低位の職位に留め置かれる状況は根強い。
こうした現状を改善するため、同社は「投資家は、経営層に占める女性の割合などの基本的な重要業績評価指標、業界ごと、国や地域での他社比較を行い、長期的な進捗に注目すべき」と主張する。企業は採用、昇進、メンター制度、性別による賃金格差、育児休暇の提供に関するデータをより多く公開しており、提供されない場合、投資家は開示を要求できる。また、注目すべき点として、投資先企業の戦略、目標、雇用、人事評価に関する方針、ダイバーシティやインクルージョンの担当責任者がいるか、ジェンダーの平等に関するグローバル指標であるEDGE認証などを達成しているか、外部評価ランキングに登場しているか、などを挙げる。
「ジェンダーに関する平等とダイバーシティは改善しつつあるが、依然として発展途上。投資家からの圧力や監視の強化は、将来、ジェンダーのバランスが企業の必要要件となるのを後押しするはず。これは企業から投資家、もちろん女性自身、すべての関係者にとってウイン―ウインとなる」と同社は提唱している。
【関連サイト】アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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