リチウムイオン電池の電極製造装置を製造するスタートアップAM Batteriesが、シリーズB(資金調達ラウンド)で3,000万ドル(約46億7,000万円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、ドライ(乾式)電極(DBE)技術及び電極製造装置の商用化を目指す。
今回の投資ラウンドは、トヨタ自動車のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)であるトヨタベンチャーズが主導した。新たにポルシェベンチャーズと旭化成が参画したほか、TDKベンチャーズやゼオンベンチャーズなど既存投資家も加わった。
従来のウェットコーティング(湿式)の電極製造プロセスは、電極材料と溶媒を混ぜることでスラリー(ドロドロの液体)を作成する。このスラリーを電極の基材に塗布し、スラリー中の溶媒を炉で乾燥・蒸発させて電極を製造する。このプロセスは、乾燥工程でエネルギーを消費するほか、スラリーを作成する際に有害な溶剤を使用する。
現在、サステナビリティを重視するギガファクトリーがアジア、ヨーロッパ、アメリカなど世界各地に点在する中、バッテリー製造の効率化は最も重要な要素の一つとなる。
そのような市場環境下において、AM Batteriesのドライ電極プロセスは、電極の乾燥と溶媒回収の必要性を排除することで、バッテリー電極の製造工程数を7工程から4工程に減らすことができる。
これにより、バッテリー製造プロセスを迅速化し、製造工程におけるエネルギー使用量と二酸化炭素(CO2)排出量の40%削減に貢献する。有害な溶剤を使用せずにリチウムイオン電池の電極を製造することも可能だ。
AM Batteriesはこれまでに6,000万ドルを超える資金を調達した。最近では、優れた電池セパレータ技術を有する米セルガード(旭化成傘下)の最高経営責任者(CEO)だったリー・シー(Lie Shi)氏をCEOとして迎え入れた。
リー氏は乾式電極分野で世界的に有名な専門家であり、マックスウェル・テクノロジーズ(テスラが買収)、ゼネラル・エレクトリック(GE)などでバッテリー技術を推進する指導的役割を果たしてきた。テスラの元取締役でもある。
電気自動車(EV)市場が大きく拡大する中、低コストで環境面にポジティブインパクトをもたらすAM Batteriesのドライ電極技術の拡大に期待が持てそうだ。
【参照記事】*1 AM Batteries「AM Batteries Closes $30M Series B led by Toyota Ventures to Accelerate the Commercialization of its Dry Battery Electrode Technology」
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