IMF(国際通貨基金)が論じる、仮想通貨の闇に立ち向かう方法

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国際金融や為替相場の安定化を目的として設立された国際通貨基金(以下IMF)の専務理事であるクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)氏が、世界的な仮想通貨ブームのなかで、仮想通貨の危険性とその対策について論じている。記事は3月13日、公式ブログに投稿された。内容を要約していこう。

同氏はまず、デジタル資産が持つ可能性は本当のところ何か、という問いについて、銀行口座を持たない低所得地域に住む人々の低コスト決済による金融アクセスの改善を挙げた。このように、ブロックチェーンなどのテクノロジーの進歩がもたらす革命は、金融分野だけにとどまらない。

一方、そんな仮想通貨を魅力的なものにしている理由こそが、仮想通貨の危険性でもあると指摘。中央管理者を持たず、中央銀行が発行しないこの通貨は匿名性を帯びるようになり、結果的にマネーロンダリングやテロ目的の資金供与の新しい手段となる可能性を秘めているという。

他にも価格のボラティリティが極端に高いことや、銀行など従来の金融とのつながりが十分でないことがある。そういった課題に対応するためには、規制による枠組みが必要なのだ。

たとえば、金融安定理事会(FSB)によるフィンテックの進歩のための法整備や、金融活動作業部会 (FATF)によるマネーロンダリングやテロ資金供与に向けた基準の策定・推進などだ。

IMF自身も、過去20年にわたってマネーロンダリング・テロ資金供与の対策に取り組んできた。FATFが設定した基準に基づき、これまでに各国の規制枠組みの評価を65件実行し、世界120か国を対象に能力開発を提供してきている。

IMFは、さらなる規制や監督のために、不正に使われるテクノロジーを逆手に取り、同じテクノロジーによる対抗策を考えている。ラガルド氏が期待するのは、以下の2つの事例だ。

ひとつは、分散型元帳技術(DLT)の利用。市場の参加者と規制当局のあいだの情報共有を加速させ、シームレスな取引を実現する。国を越えた取引を即時に可能にする技術を使い、電子署名とともに標準化検証がされた顧客情報リストを作成できる。また、資源を優先的にニーズに割り当てることができ、グローバル取引に伴うものを含めた脱税を減らすことも可能だ。

もうひとつは、バイオメトリクスや人工知能、暗号化技術だ。デジタル取引における安全性の強化や、不正が疑われるような取引をすぐに特定することに活用できる。

消費者保護のためには、デジタルな取引とデジタル以外の取引に同じ規制が適用されるようにする必要がある、と同氏は論じる。現在、世界中の規制当局がICOの一部に標準的な株式と同じ法律を適用しており、買い手が潜在的なリスクに警戒するような注意喚起に役立っているという。

しかし、単独でこの課題に取り組める国はないため、国際協力が不可欠だ。デジタル資産にはすでに国境がない。だからこそ、それを規制する私たちの枠組みも国境を超えたものでないといけないのだ。

3月19日、20日にアルゼンチンで開かれるG20の会合では、仮想通貨が議題のひとつとして取り上げられる予定だ。

仮想通貨はバブルなのか、一過性の流行でしかないのか、それともインターネットと同様に、金融セクターのあり方を一変させ、いずれは法定紙幣に代わるような革命的な存在なのかについて、世界中で激しい議論が巻き起こっている。真実は、こうした極論のどこかにある。

現在、仮想通貨の広がりをただ拒否するのは賢明ではないだろう。その秘めたる可能性を歓迎しつつ、リスクにも目を向けるべきなのだ。

仮想通貨の潜在能力によるメリットを享受しつつも、デジタル資産における不法行為や金融の脆弱性を防ぐ方法。それは、お互いが協力し、公共善のために最新テクノロジーを活用することだ。

【参照サイト】Addressing the Dark Side of the Crypto World

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