人物の株のようなもの「Key」を売買できるSocialFiアプリ「friend.tech」の仕組みと今後の展望

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の村上和哉 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. friend.techとは
  2. 盛り上がりの背景
  3. ベータ期間
  4. PWA(Progressive Web Apps)とは
  5. まとめ

EthereumのLayer2であるBaseチェーンが「Onchain Summer」と題して大きくプロモーションを実施しています。Baseチェーンはアメリカの暗号資産取引所であり上場企業であるCoinbase社が運営するブロックチェーンであり、運営母体の安心感からか大きく注目を集め、多くのDappsやDeFiプロトコルがBaseチェーンに対応しています。今回はその中でもBaseチェーンネイティブかつ最も話題になっているアプリケーション「friend.tech」について紹介します。

friend.techとは

friend.techとは、特定の人物のKeyを所有しているとその人とチャットすることが可能で、このKeyを売買して使用することができるアプリケーションです。8月10日にベータ版をローンチしたばかりですが、全ブロックチェーンの全Dapps内で最も多くの収益を上げた日などもあり注目が集まっています。仕組み自体は、日本で2017年頃からスタートしたVALUというサービスに似ています。

現状friend.techで行うことができるのは、Keyの売買、Keyオーナー/ホルダーとのチャットのみとなっており、Keyにはチャット以外のユーティリティは特にありません。しかし有名人やインフルエンサーのkeyを所有していれば、チャットできるので価値が高くなっているものも多くあります。つまりKeyは、個人を株と同じような形で流通させたものであり、有名人やインフルエンサーなど影響力を持った人物(企業)であると値上がりしていく傾向がみられます。

Keyの価格算出式は「S^2/16000*1」ETHとなっており、Sは現在発行されているKeyの数となります。またオーナーが獲得する手数料は売買発生時の5%となっています。それでは、実際の数字を当てはめて見ていきたいと思います。

(例)
AさんのKeyをBさんが0.00025ETH(S=2)で購入すると、BさんはAさんと直接チャットすることができます。続いてCさんが0.0005625ETH(S=3)で、Dさんが0.001ETH(S=4)でAさんのKeyを購入することになります。この時BさんはAさんのKeyを0.0005625ETHで売却することが可能です。

この場合、BさんはKeyの価格上昇により0.0003125ETHの売却益を得ることができます。同様にKeyのオーナーであるAさんは上記の4回分の手数料5%である「0.00011624ETH」を獲得することができます。

盛り上がりの背景

上記のようにKeyのユーティリティ自体はオーナーとチャットすることしかできないので、強いとは言えません。なので、現状の盛り上がりはKeyの値上がりを期待したトレードによって引き起こされていると考えられます。有名人やインフルエンサーがサービスに参入したタイミングですぐにKeyを購入して、その後何名かが購入した後に売却するというのが最もスタンダードな流れで、ここにはすでに多くのBotが稼働しており、サービスを使い始めた時にいきなり自分のKeyが購入されて驚くかと思います。

またKeyの売買が多くなるとホルダーだけでなくオーナー側も手数料を収益として受け取ります。なのでオーナーにとっては自分のKeyが多く売買されることが自身のメリットになります。

これは8/22時点のランキング上位者の情報ですが、Cobie氏は自身のKey価格が平均して1.62ETHなのに対して、合計で82ETHの収益を上げています。彼のチャットがどれくらい活況で、どのような情報がやり取りされているかはわかりませんが、個人としてこれだけの収益を数日で手に入れることができるのは画期的です。

また、8/19には大手クリプトVCであるParadigmから出資を受けていることが明らかになりました。Paradigm以外のVCからの投資状況などは明らかになっていません。Uniswap、OpenSeaなどに投資した実績があるParadigmが投資したことにより、匿名開発者がローンチしていたアプリに対する一定の不安感が拭うことに成功したと言えます。

ベータ期間

810にベータ版が公開され、8/18には初めてのポイントが配布されました。現在6ヶ月間のベータ期間ということで、これから期間中は毎週金曜日にアクティビティに応じたポイントが配布されることになっています。このポイントはベータ期間中終了時に特別なユーティリティが与えられることがすでに発表されており、このポイントを多く獲得するためにユーザーも活発に活動しているとされています。ポイント配布のロジックは公開されていないとともに、不審なアクティビティがあった場合は、後にポイントの取り消しなどの措置を取る可能性があるようです。なお、ポイントはオフチェーンでの配布となっています。

PWA(Progressive Web Apps)とは

friend.techのユニークな点として、PCからは基本的にアクセスすることができずにスマートフォーンからしかアクセスできない仕様になっています。

またスマートフォンではPlay StoreやApp Storeからアプリをインストールするのではなく、ウェブブラウザベースのPWAという技術によって構築しています。iPhoneの場合だと、Safariからアクセスしてホーム画面に追加することで利用することができます。PWAを利用することにより、App Storeなどを回避することが可能になり、暗号資産やNFTの売買も制限なく行うことができる可能性があります。現状アプリ内課金によりNFTなどを購入すると30%の手数料がAppleに徴収されますが、PWAだとこの手数料を回避することができ、販売価格を上乗せする必要がなくなります。

friend.techではPWA内で自分のアカウントに紐づいたウォレットアドレスが用意されて、そちらのアドレスにBase上のETHを入金することで利用することができます。つまりMetamaskなどのウォレットアドレスを接続する必要もなく、トランザクションの承認もパスワード入力や生体認証なしでスムーズに行われます。一方でStoreの認証がないので、不審な挙動が行われたりするセキュリティリスクが発生する可能性もあります。

まとめ

friend.techは2023年8月にローンチしたばかりの新しいdappであり、ベータ期間中であることに注意が必要です。この6ヶ月間のベータ期間でアクティブユーザーを維持できるか、そしてベータ期間終了後のポイントをエコシステム内で有効活用できるか、今後の動きに注目です。また、PWAとしてdappの新しい道を切り開いており、今後PWAが暗号資産やNFTを活用したdappの未来として定着することができるかなどの動向も2023年下半期のテーマになってくるかと思います。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。