東ソーのESG・サステナビリティの取り組みや将来性は?株価推移、配当・優待情報も

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経営でESGやサステナビリティを重視する流れは強まっており、企業も自社の利益追求のみならず、環境や人権など幅広い課題の解決に貢献するよう求められています。東ソーは大手総合化学メーカーで、国内企業の中でもGHG排出量が特に多い企業ではありますが、その一方で課題を解決するためにESGに関して積極的な取り組みも行っています。

今回は東ソーのサステナビリティの取り組み、株価推移や業績について解説します。東ソーへの投資を検討している方、ESGに関心のある方は参考にしてください。

※2023年6月29日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 東ソーについて
  2. 東ソーのESGに関する取り組み
    2-1.カーボンニュートラルへの取り組み
    2-2.環境課題の解決に貢献する製品・技術
  3. 東ソーの10年間の株価推移と業績
    3-1.10年間の株価推移
    3-2.業績
  4. 東ソーの将来性
  5. 東ソーの配当・優待情報
  6. まとめ

1.東ソーの概要

銘柄 東ソー
証券コード 4042
株価 1,735円
PER(会社予想) 8.97倍
PBR(実績) 0.73倍
配当利回り(会社予想) 4.76%

※2023年6月29日のデータ

東ソーは山口県発祥で、創立87年目を迎えた総合化学メーカーです。売上高は9,186億円、営業利益は1,440億円、従業員数は連結で13,858人の規模です(2022年3月時点)。

東ソーには大きく5つの事業があり、売上や営業利益に占める割合は下記のとおりです。

売上高ベースの割合 営業利益ベースの割合
クロル・アルカリ 39% 48%
石油化学 19% 11%
機能商品 25% 30%
エンジニアリング 13% 9%
その他 4% 2%

※2021年度の実績

同社でもっとも大きい事業はクロル・アルカリで、営業利益では全社の半分近くの割合を占めています。クロロ・アルカリ事業では、国内最大の設備にて、苛性ソーダ、塩素、水素を生産しています。苛性ソーダは紙・パルプや化学繊維に、塩素は塩化ビニル樹脂や殺菌・漂白製品などに使用されます。

石油化学事業では、エチレンやプロピレンなどの石油化学の基礎原料を生産しています。具体的な製品の1つである「オレフィン」は、ナフサクラッカーで生産される各留分を有効活用し、付加価値製品を拡大することで事業を進化させています。

機能商品事業では、研究開発から生み出した独自技術による化学製品を展開しています。歯科材料としても使われるジルコニア、半導体製装置の石英ガラスといった高機能材料も生産しています。特徴的な機能を備えた製品でグローバルに事業を展開し、豊かな社会生活への貢献にに努めています。

2.東ソーのESGに関する取り組み

東ソーはGHG排出量が多い企業群ではありますが、サステナビリティ重視の経営を推進している企業でもあります。ここでは同社における環境関連の取り組みをいくつか紹介します。

2-1.カーボンニュートラルへの取り組み

GHG(温室効果ガス)の排出量削減は、気候変動対策として世界的に注目を集めている社会課題の1つです。東ソーではGHG排出量の2021年度実績が830.4万トン(スコープ1+2)となっており、事業活動の環境負荷が高い状況となっています。こうした状況を踏まえ、2022年にグループ全体でのGHG排出量削減方針を新たに策定しました。

省エネの推進 GHG排出量の計算に用いる内部炭素価格について、6,000円/トン-CO2に引き上げることで省エネの取組を推進する
脱炭素化 GHG排出量の多い石炭など化石燃料からの段階的な転換(バイオマス、LNGなど)を勧め、太陽光など再生可能エネルギーの導入の取り組みを強化する
CO2の回収・有効活用 発電設備などから発生するCO2を分離して回収し、ポリウレタン原料などに活用する技術開発を推進する
GHG排出量削減のための投資 上記の1~3に対応するため、2030年度に向けて約1,200億円のGHG排出量削減の投資を行う

CO2削減に向けて複数の取り組みを行っており、南陽事業所においては、新たにバイオマスを主燃料とした発電所の新設が決定されました。新たな発電所では石炭のみならず、木質系燃料や建築廃材などの廃棄物系燃料も利用可能で、多彩な燃料の使用が可能になります。

将来的にはバイオマス燃料のみ燃やすことを目指し、CO2排出量を年間約50万トン削減するのが目標です。新発電所は2026年4月に稼働開始予定となっています。

2-2.環境課題の解決に貢献する製品・技術

東ソーはイノベーション推進により、環境問題をはじめとした社会課題の解決に貢献する製品・技術を提供しています。グローバルの社会課題と目標に貢献するとともに、企業価値に貢献する方針です。

省エネ・GHG排出量削減分野では、以下のような製品があります。

製品名 用途 貢献内容
ポリメリックMDI・変性MDI 建材用断熱材ウレタン発泡材の主原料 建築物の断熱性の向上によって、冷暖房など電力の省エネ効果を改善する
塩化ビニルコンパウンド 複層ガラスと組み合わせた樹脂サッシ 断熱性と気密性を高め、冷暖房効率を改善する
塩ビ管・継手用
塩化ビニル樹脂
耐久性やリサイクル性能に優れたパイプで、都市インフラや水道管などに使用 原料の6割が塩のため、プラスチックと比較して石油資源の節約につながる

3.東ソーの10年間の株価推移と業績

ここからは、東ソーの長期の株価推移や近年の業績について解説していきます。

3-1.10年間の株価推移

同社の株価は10年前の2013年はおよそ700円で、現在は1,700円程度ですので、10年間で2倍以上になりました。株価が大きく伸びたのは2016年の9月以降の1年間で、1,000円から一時期2,600円以上にまで上昇しました。

2018年以降は下落が続きましたが、下値は1,000円を切ることなく推移しています。上昇前である2016年以前よりは高い水準です。2022年から2023年は値動きの幅が小さくなっており、上昇トレンドになるのか注目されます。

3-2.業績

直近5年間の業績推移は下記のとおりです。

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
売上高 8,614 7,806 7,328 9,185 10,643
営業利益 1,057 816 878 1,440 746
経常利益 1,130 859 951 1,604 899
当期純利益 781 555 632 1,079 503

※単位:億円、1億円未満は切り捨て

2020年度まで業績で苦戦していましたが、2021年度は復活し、2022年度は売上高が1兆円を突破しました。売上高が大きく伸びた一方、利益はいずれも2021年度を下回っています。

利益が大きく落ちた要因は、クロロ・アルカリ事業における交易条件や固定費の上昇です。ナフサや石炭等の原燃料価格上昇に伴う交易条件が悪化しました。機能商品事業とエンジニアリング事業では、利益は前年増となりました。

2023年3月期の予想は、売上高が1兆800億円(対前年+156億円)、営業利益950億円(対前年+202億円)、経常利益950億円(対前年+50億円)、当期純利益600億円(対前年+97億円)としています。

4.東ソーの将来性

投資先としての東ソーの将来性について、サステナビリティ・ESGと業績の両面から考察していきます。まずサステナビリティに関して、現在は環境負荷の高い企業となってしまっていますが、この環境上の課題を解決するために環境関連の取り組みを数多く行っています。温室効果ガス排出量削減のため、2026年にはバイオマス燃料による発電所を新設するなど、推進を強化しています。

同社のホームページでは具体的な目標値、その実現のための施策などが明確に示されており、同社が大きく注力していることがわかります。ESGデータ一覧も公開され、温室効果額の排出量やエネルギー使用量などの数値が年度単位のトレンドで掲載されており、どの程度達成しているのか一目でわかるようになっています。

次に業績について、直近5年間は一時期苦戦していましたが、2021年度に売上・利益とも大幅に拡大しました。ただし2022年度は原材料高騰などにより、減益となりました。2023年度は利益も対前年プラスを見込んでいますが、2021年度の数値には届かない予定となっています。外部要因が大きく難しい問題ではありますが、いかに収益性を向上していけるかが問われています。

5.東ソーの配当・優待情報

1株あたり年間配当 2022年3月期実績:80円
2023年3月期予定:80円
主な株主優待 なし

1株あたりの年間の配当金は80円で、2023年3月期も同水準を維持する予定となっています。

株主優待として、以前は四日市や南陽事業所における工場見学会が行われていました。2019年は各回40名を招待し、プラントや塩山の見学が行われました。

現在は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、現在は中止されています。再開時期については今後、同社ホームページで通知されます。

6.まとめ

東ソーのESG関連の取り組み、株価推移や近年の業績について解説してきました。クロロ・アルカリや高機能材料などを手掛ける総合化学メーカーで、ESGでも積極的に数多くの取り組みを行っています。

直近の業績では売上は好調に伸びているものの、原材料高騰などの影響により利益面で苦戦しています。株価は大きく下がることなく堅調に推移しており、今後の上昇も期待されています。

東ソーのESGやサステナビリティの取り組み内容に関心のある方は、この記事を参考にご自身でもお調べになった上で検討してみてください。

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安藤 真一郎

マーケティング会社に勤務した後、ライター・コラムニストに転身。 さまざまなジャンルの執筆を行う途中でマネーリテラシーの重要性に気づき、現在はマネー・金融分野を中心に執筆活動を行う。投資、資産形成、年金、税制度、ローン、節約、キャッシュレス決済など多数の執筆実績あり。投資に関しては中長期での利益獲得を目指し、米国株式や先進国株式を中心とする投資スタイル。ファイナンシャルプランナー資格保有。