岩手県紫波町のWeb3タウン構想とは?DAOとNFTを活用した地域活性化の新戦略

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DAO(自律分散組織)は、NFTやトークン(暗号資産の一種)と連携し、分散する人々が特定の目的のために協力して活動する仕組みです。最近では、地方自治体が抱える問題の解決にDAOが取り入れられるケースが増えています。例えば、2022年6月10日に岩手県紫波町が町会議で「Web3タウン」の推進を表明しました。この取り組みでは、Web3技術を活用して地域活性化を図り、住民サービスの向上やトークンを利用した経済の循環を目指しています。

本記事では、紫波町が構築を進める「Web3タウン」の誕生背景や特徴について解説し、さらに他の地域で行われている地方創生DAOの取り組みについてもご紹介します。

目次

  1. 岩手県紫波町「Web3タウン」表明
    「Web3タウン」設立の背景
  2. DAOとは
    DAOを使うメリット/デメリット
  3. Web3タウンとは
    紫波町から始まる「Furusato DAO」の構想とは
    DAO活用による自主財源の確保
    トークンの活用を目指す「Help to Earn」とは
    デジタル紫波町民制度(NFT)の申し込み開始
  4. デジタル住民証(NFT)を発行してい自治体の事例
    石川県加賀市がNFTを活用した「e-加賀市民制度」
    山口県美祢市で「デジタル住民票NFT」を発売
  5. まとめ

①岩手県紫波町「Web3タウン」表明

紫波町は2022年6月10日、国内外の多様な人材がまちづくりに参加できるよう、最先端のWeb3技術を積極的に活用する「Web3タウン」の構想を表明しました。これにより、国内外どこからでもまちづくりに参加できる「DAO(自律分散組織)」を設立し、新しい形での対話や価値創出を目指しています。

DAOを通じて、紫波町のビジョンや取り組みに共感し、地域資源に愛着を持つ多様な人材が地域を超えて結びつくことを期待しています。地域課題の解決や持続可能なまちづくりの可能性が広がることが見込まれています。

1-1.「Web3タウン」設立の背景

日本国内では、Web3を含む新たなサービスが生まれやすい環境整備が進んでおり、Web3技術を活用した地方創生や地域活性化への期待が高まっています。

2022年、日本政府は「新しい資本主義」に基づく経済政策運営と改革の基本方針を発表しました。この方針には、以下の3つの柱が掲げられています。

  • 民間による社会的価値の創造
  • 包摂社会の実現
  • 多様化・地域活性化の推進

この3つ目の柱、つまり「多様化・地域活性化の推進」が、「Web3タウン」設立の背景を理解するための重要な手がかりとなります。

地域活性化の鍵は「人」であり、多様な人々との関わりが不可欠です。国内外からの様々な人材が関わることで、新たなアイデアや価値が生まれることが期待されます。そのためには、先端技術や新しい考え方の活用が重要です。

特に、岩手県紫波町では、デジタル分野における次世代技術である「Web3」の概念や技術を積極的に導入し、地域活性化を図ろうとしています。こうした取り組みの一環として、紫波町は2022年6月10日に「Web3タウン」の推進を表明し、国内外の多様な人々がまちづくりに参加できる新しい形を模索しています。

②DAOとは

DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、スマートコントラクトを基盤に運営される自律分散型組織です。スマートコントラクトにより、特定の条件が満たされると自動的に取引が実行され、組織の運営は中央集権型と比べて効率的かつ民主的になります。

DAOに参加するには様々な方法がありますが、通常は組織内で使用されているネイティブトークンを購入・保有することで、運営に関連する重要な議題の投票権を得ることができます。また、国内のNFTプロジェクトもDAOを使って運営されているケースがあり、こちらではスマートコントラクトは使用せず、プロジェクトに興味を持つ個人が自主的に活動しています。

2-1.DAOを使うメリット/デメリット

DAOのメリットとしては、ブロックチェーン技術を活用することで透明性が向上し、全ての取引や意思決定の過程が公開されるため、不正の排除や信頼性の高い運営が可能になる点が挙げられます。また、資金調達や配分が自動化されることで、迅速かつ低コストでの対応ができるため、効率的な運営が期待できます。さらに、DAOはコミュニティメンバー全員が意思決定に参加できる仕組みを提供するため、地域住民の意見が反映されやすく、地方創生プロジェクトへの関与が深まるとされています。

一方で、DAOにはいくつかのデメリットも存在します。まず、新しい技術であるため合法性や安全性に対する懸念が残っています。また、スマートコントラクトに欠陥が見つかった場合、修正が困難であり、コミュニティ全体の合意を得る必要があるため、迅速な対応が難しいというハッキングリスクもあります。さらに、DAOは法的な枠組みがまだ整っておらず、法的問題が発生した際には複雑な対応が求められる可能性があります。

③Web3タウンとは

紫波町のWeb3タウンは、Web3技術を駆使し、さまざまな人々との結びつきを創出するため、ブロックチェーン技術を活用した新しい地方創生の取り組みを行い、地域の活性化を目指すDAOです。DAOの構築には、SOKO LIFE TECHNOLOGY株式会社と紫波町が連携協定を結び、Web上のコミュニティ構築や地域通貨のトークン発行から流通、NFTを活用したふるさと納税返礼品の開発を行うそうです。

NFTを活用したふるさと納税返礼品は、既に2022年10月1日から数量限定で発売されています。「くりぷ豚レーシングフレンズ」というゲーム内で利用できる、「紫波町オリジナルくりぷトン」をNFTの返礼品と提供しています。単にNFTを返礼にするのではなく、紫波町のブランド豚である「しわ黒豚の精肉とセットで、返礼品を開発しました。

またWeb3タウンのネット上のコミュニケーションは、DAOではよく利用されているDiscordで行われています。

3-1.紫波町から始まる「Furusato DAO」の構想とは

「Furusato DAO」は、DAOに集まる人材やアイデアを活用し、地域課題の解決を目指す取り組みです。さらに、Web3技術を積極的に導入することで、自主財源を創出しつつ、地域住民同士のコミュニケーションを活性化させることを目的としています。

地方自治体が抱える課題には、人口流出、少子高齢化、財源不足、地域間交流の希薄化などがあります。これらの課題に対処するため、「Furusato DAO」は、Web3技術を利用して人材不足や財源不足を補い、NFTやトークンの活用によって新たな財源を創出することを目指しています。

3-2.DAO活用による自主財源の確保

このスキームのポイントは、発行体が発行したトークンを自治体に無償譲渡することです。自治体は、無償譲渡されたトークンの一部をPRや普及に活用し、残りを適切なタイミングで売却することで自主財源を確保します。

    トークンの発行と付与

  • 新型地域通貨としてトークンを10億枚発行(仮)
  • 投資家がトークンを購入
  • トークンを保有することで、DAO内のプロジェクトの意思決定に参加可能
  • 自治体への連携

  • 自治体に100万枚(仮)付与
  • 自治体はトークンをPRし、住民に50万枚(仮)を付与
  • 住民の支持を得て、トークンの普及を促進
  • トークンの売却

  • 自治体はトークンの価値が上昇したタイミングで、残りの50万枚(仮)を売却し、自主財源に充てる

この仕組みは、トークンの普及と価値の向上を図りながら、自治体の財源を確保する新しいアプローチです。自治体が積極的にトークンのPR活動を行うことで、地域社会全体の経済活動が活発化し、結果としてトークンの価値が高まることが期待されます。

3-3.トークンの活用を目指す「Help to Earn」とは

トークンを住民が保有できるからには、トークンエコノミーの構築によって、地域住民同士のコミュニケーションの活性化が期待できます。具体的には、職員でなくてもできる業務、例えば草刈り、雪かき、公共施設の運営、各施設の清掃、破損した道路の発見などを住民に依頼し、それらの業務を、住民がDAOを通じて運用するというものです。

業務遂行の対価として受注者の住民にトークンを付与することで、自治体職員は職員でないとできないコア業務に集中することができ、支出や負担を軽減できます。住民もボランティアではなく対価が得られるので、三方良しを実現します。

Help to Earnのシステムイメージは、一般的なマッチングアプリのように、仕事を依頼したい人、仕事を受けたい人、双方が案件を投稿することができます。またチャットを通じて、仕事を受ける側と詳細なやりとりをすることができます。さらに受注者が見つからなかった場合、プロに依頼することも可能です。

3-4.デジタル紫波町民制度(NFT)の申し込み開始

紫波町は、2023年8月、デジタルシワ町民制度の発表と募集を開始しました。同制度は、紫波町に暮らす人、町と何らかの関りを持つ人、町に関心を持つ人、町を応援したい人等に登録してもらい、紫波町への更なる愛着を育み、町の応援者の拡大につなげることを目的としたものです。

引用:紫波町

対象は以下に該当するものです
  1. 町民(町に住民登録をしている人)
  2. 町出身の人
  3. 町内の高等学校、中学校又は小学校等に在学している、もしくは卒業した人
  4. 町内に勤務又は勤務経験のある人
  5. 前4号のほか、町を応援したい又は町に関心のある人

申し込みフォームに必要事項を入力し、町が申し込みを適性と認めた時、申し込み者に「デジタル紫波町民証(NFT)」が発行されます。NFTの有効期限は、制度が存在する限り有効です。

町がデジタル紫波町民に期待すること
  1. 当町を応援したり、町に関心を持ったりする人が増えるように応援すること
  2. それぞれの居住地や職場、SNSなどで当町をPRすること
  3. 当町に有益な情報の提供、建設的な提案・意見をすること
デジタル紫波町民の特典
  1. ラ・フランス温泉館の入浴料割引(町民限定割引の適用)が受けられます。
  2.    ※適用は平日のみ、デジタル町民のみ(同伴者は不可)です。
       ※割引内容は現地にてご確認ください。

  3. デジタル紫波町民限定のイベントやアンケートへの参加資格が得られます。
  4. この制度を通じて、NFTに触れる機会が得られます。

 その他、特典は随時追加を検討していきます。

禁止行為は、デジタル町民証(NFT)を他者へ転売、貸与又は譲渡です。そのほかにも禁止行為はあるので、ルールに従ってNFTを保有しましょう。

④デジタル住民証(NFT)を発行してい自治体の事例

日本各地で、紫波町のようにデジタル住民証NFTを発行している自治体が増えています。ここでは、石川県加賀市と山口県美祢市の事例をご紹介します。

4-1.石川県加賀市がNFTを活用した「e-加賀市民制度」

加賀市では、2018年に「ブロックチェーン都市宣言」を行い、ブロックチェーンとICT技術を活用した地域振興を進めています。その一環として、2024年3月にNFTを活用した「e-加賀市民制度」の本運用を開始しました。この制度では、マイナンバーカードと連携したweb3ウォレット機能を持つ「e-加賀市民証」が発行され、加賀市の各種サービスで公的個人認証として利用できます。また、e-加賀市民証を通じて地域活性化のためのオープンイノベーションが推進されています。

4-2.山口県美祢市で「デジタル住民票NFT」を発売

美祢市では、地域振興と移住促進を目的に「デジタル住民票NFT」を販売しました。このNFTは、関係人口の創出を目指し、保有者がデジタル住民として美祢市を応援するためのものです。NFTを保有することで、美祢市のデジタル住民であることが証明され、SNSなどを通じて市を応援する活動が可能になります。また、市長も参加するオンラインコミュニティへのアクセスが提供され、美祢市とのつながりを深める機会が増えます。

さらに、特別天然記念物である鍾乳洞「秋芳洞」の入場料が無料になるなど、美祢市内の施設でさまざまな特典が提供され、地域との関係をより一層深めることができます。

このNFTは、2023年7月14日から23日までの期間限定で1個1,000円で抽選販売され、初回販売はわずか2分で完売するほどの人気を集めました。

⑤まとめ

日本の各地域では関係人口の創出のためのDAO構築や、一緒に地域を盛り上げてくれる仲間をデジタル上で募るための、デジタル住民証NFTの発行など、Web3技術を活用した取り組みが活発化しています。これらはブロックチェーンについて知らなくても、誰でも気軽に参加できるようになっており、Web3による活動がどういったものなのか気になる方は、こうした地方創生系のプロジェクトから参加してみるのがお勧めです。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。