ふるさと納税の返礼品でNFTの導入が見られたり、地方のクラウドファンディングでトークンを発行するなど、Web3の技術が地方創生の中で注目されています。株式会社ガイアックスが実施した調査によると、このようなWeb3技術を取り入れた地方創生の取り組みが全国で増加していることが明らかとなりました。その結果が「全国web3×地方創生マップ」として公開されています。
今回、この記事では2023年5月現在のWeb3を利用した地方創生のプロジェクトや支援活動を紹介します。
目次
- ガイアックスの調査内容
1-1.web3×地方創生プロジェクトは1年で8倍に! - ガイアックスとは
- 日本国内の地方創生や支援をおこなっている企業・NFTプロジェクト
3-1.NFTによる地方創生を推進する株式会社あるやうむ
3-2.日本最大級を目指す農業NFTコミュニティ「Metagri研究所」
3-3.地域のアイデンティティの象徴をNFTアートにした「山古志DAO」
3-4.株式会社カヤックが提供する「まちのコイン」
3-5.トークン発行型ファンディング「FiNANCiE」を運営する株式会社フィナンシェ
3-6.NFTを活用して農家を支援する国内発の「支援DAO」 - まとめ
①ガイアックスの調査内容
分散型自律組織「DAO」の取り組みをサポートする株式会社ガイアックスは、全国の地方自治体でのWeb3技術の導入状況を調査しました。その調査結果を「全国web3×地方創生マップ」に纏め、各地方自治体の取り組み内容とともに公開しています。
調査対象は、2023年4月までに開始され、以下の3要素を満たすプロジェクトです。
- Web3の技術(NFT、DAOなど)やメタバースを活用している。
- 地方自治体や関連団体との連携や公認、後援などの関わりがある。
- 目的が地方創生や地方への資金調達である。
調査方法はインターネットリサーチを使用し、2023年3月から5月まで行われました。
1-1.web3×地方創生プロジェクトは1年で8倍に
2022年4月には14件のプロジェクトがありましたが、2023年4月にはそれが111件と約8倍に増加しています。しかし、全国47都道府県、1,718市町村の中でこの取り組みが行われているのは約6%にすぎません。これからのWeb3技術のさらなる導入の余地は大きいと、ガイアックスは分析しています。
Web3×地方創生プロジェクトの中で、特に注目されるのがNFTを活用した取り組みです。全体のプロジェクト62件のうち、半数以上がNFTを用いており、これはふるさと納税の返礼品にNFTが導入されるケースが増えていることが一因と考えられます。
その代表例として、地方創生を推進するための「ふるさと納税NFT/観光NFTソリューション」を提供するスタートアップ、あるやうむのサービスが挙げられます。さらに、国内最大級のNFTプロジェクト、CryptoNinja Partners(CNP)とのコラボレーションで生まれた返礼品企画「ふるさとCNP」も注目を集めています。
②ガイアックスとは
1999年の創業以来、ガイアックスは「人と人をつなげる」というミッションのもと、より良い社会を築く活動を行っています。2015年以降、シェアリングエコノミーの隆盛を受けての取り組みを始め、個人間の情報交換のしやすさからCtoC(個人対個人)の取引の普及を予測しました。
その延長線上で、web3やDAOのようなブロックチェーン技術は、個人が主役のフラットなコミュニティ形成の鍵となると捉え、研究・開発を進めています。ガイアックスは、今後も個人それぞれが輝く社会の実現に向けた取り組みを続けていく方針です。
〇ガイアックスのWeb3/DAO取り組み実績例
ガイアックスのWeb3/DAO取り組み実績例は以下になります:
-
【日本初】DAO型シェアハウス「Roopt神楽坂 DAO」
詳細はこちら -
web3特化のシェアオフィス「CryptoBase@NIB SHIBUYA」
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【日本初】既存NPO組織(NPO法人ドットジェイピー)のDAOへの移行
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【日本初】複数自治体の連合DAO「美しい村DAO」
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【日本初】「DAO型入社式」を開催
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③日本国内の地方創生や支援をおこなっている企業・NFTプロジェクト
NFTやメタバースの認知が高まる中、Web3を活用して地方創生や支援を進めるプロジェクトや企業が日本国内で増加しています。ここでは、2023年5月時点の代表的な活動をいくつかご紹介します。
3-1.NFTによる地方創生を推進する株式会社あるやうむ
札幌発のスタートアップ、あるやうむは「NFTによる地方創生」を推進しています。全国の自治体へのふるさと納税や観光NFTソリューションを提供し、NFTの返礼品を通して地域の魅力を伝えるとともに、地域創生や関係人口の増加を目指しています。社名「あるやうむ」はアラビア語で「今日」という意味。今を大切にし、地域の魅力を即座に伝えるためのNFT技術を自治体や地域へ提供して、持続的な地域づくりをサポートしています。
「ふるさとCNP」とは、国内最大級のコミュニティNinjaDAOが手掛ける「CryptoNinja Partners」とのコラボ企画です。CNPのクリエイターが地元の魅力を反映したイラストを作成し、それをもとにあるやうむがNFTを制作。これらのNFTはふるさと納税の返礼品として提供されています。ふるさとCNPの第一弾は、北海道余市町のワインをテーマにしたNFTとして提供されました。また、和歌山県白浜町もこのプロジェクトを採用し、5月28日から返礼品として提供が開始される予定です。
CryptoNinja Partnersは、地域の名産や名所を背景にして、人気キャラクターと組み合わせた新しいNFTコレクションです。各自治体ごとに特典を設け、NFTの所有者が実際にその地域を訪れると、さまざまなメリットを享受できる仕組みが考えられています。
3-2.日本最大級を目指す農業NFTコミュニティ「Metagri研究所」
Metagri研究所は、農業とブロックチェーン技術を組み合わせて、持続可能な農業を目指すコミュニティです。「研究所」という名前には、新たな取り組みに対する挑戦の精神を込めています。りんごやいちご、メロンなどの様々な農作物において、ブロックチェーン技術の活用を探求しています。
主な活動内容は以下のとおりです。
- NFTホルダー向けのオンラインイベントの実施
- 農業活性化のための独自トークン発行や「farm-to-earn」モデルの採用
- NFTを利用した農業支援プラットフォームの構築
- NFTの2次、3次流通を活用した収益モデルの確立
興味を持った方は、Discordを通じてコミュニティへの参加がおすすめです。
Metagri研究所からは既に複数の農家向けNFTが発行されています。例として、なかはた農園とのコラボレーションで「MetagriLabo Ichigo Collection(略称:MLIC)」が1月15日のいちごの日に、また愛媛県松山市中島の「ナカジマみかんNFTシリーズ」最終章「ナカジマはるみNFT」が2月4日の立春の日にそれぞれ発行されました。
これらのNFTは、農家と消費者、ファンとの新しいつながりを生み出す手段として位置付けられており、農業を地域が支えるものから、地域を支える事業へと進化させることを目的としています。これらのNFTは「OpenSea」というマーケットプレイスでの取引が可能で、所有者にはコミュニティ内での特典や、メタバース上のイベント参加などの機会が提供されています。
3-3.地域のアイデンティティの象徴をNFTアートにした「山古志DAO」
山古志村はかつて2,200人以上の住民がいたものの、現在は約800人ほどとなり、高齢化率が55%に達しています。このような背景から、隣接する長岡市に合併されることとなりました。
2004年の新潟中越地震を経て、竹内春華氏が山古志村に関わるようになり、村の魅力に惹かれました。竹内氏は後に「山古志DAO」の発起人となり、合併後も山古志村のアイデンティティを保存・発展させるために、仮想空間での村体験を提案しました。
エストニアの「e-Residency(電子国民プログラム)」に触発され、竹内氏はNFTをデジタル住民票として利用するアイデアを考案しました。これにより、山古志村に物理的に住んでいない人でもデジタル上での村民としての役割を果たせる「山古志DAO」を立ち上げました。
プロジェクトを進行する中で、実際の山古志の住民も参加すべきだという考えが浮上。このため、山古志の住民に無償でNFTを配布する提案がなされました。発行された「Nishikigoi NFT」の保有者を対象にしたアンケートを実施し、その結果、100%の賛成を得て、住民へのNFT無償配布が決定されました。受け取りのためのウォレット「Metamask」の開設サポートも実施されたようです。
3-4.株式会社カヤックが提供する「まちのコイン」
「まちのコイン」は、株式会社カヤックが提供するコミュニティ通貨サービスです。このサービスは分散台帳技術を用い、QRコードを通じてユーザーがポイントを獲得・利用できます。目的は、地域の内需拡大のみならず、外部の人々も巻き込みながら地域の経済や環境を向上させることです。
この通貨は、各地域の特定テーマを中心に体験を提供する仕組みとなっており、それを通じて新たな地域の繋がりを深めることができます。特に、SDGsに関連する活動など、難しく感じる取り組みにも「まちのコイン」を用いて気軽に参加することが奨励されています。
2019年9月に、神奈川県の「SDGsつながりポイント事業」で採択された「まちのコイン」は、現在までに23の地域、例えば福岡県八女市などでの導入実績があります。
鎌倉を拠点とするカヤック社は、「鎌倉資本主義」というコンセプトを掲げ、地域の魅力や価値を大切にする姿勢を示しています。彼らの「まちのコイン」は、地域コミュニティとの絆を深め、その結果として地域の課題解決や経済活性化を目指しています。
利用者は、「まちのコイン」アプリをダウンロードし、QRコードを用いてポイントを獲得・利用できます。これらのポイントは、特定の加盟店での利用が可能ですが、現金には交換できません。
3-5. トークン発行型ファンディング「FiNANCiE」を運営する株式会社フィナンシェ
株式会社フィナンシェは、NFT事業やIEO支援をはじめ、「FiNANCiE」などトークンを活用したコミュニティの形成を支援する様々な事業を展開しています。今までに、180を超えるスポーツチーム、エンタメプロジェクト、個人向けのトークン発行・運用の実績を持ち、国内で唯一のWeb3プラットフォームの実現を目指しています。
トークン発行型ファンディングとは、特定のプロジェクトやスポーツチームが自らのトークンを発行・販売し、それをサポーターやファンから購入してもらい資金を集める手法です。これを通じて、プロジェクトオーナーやチームは資金を調達しつつ、強固なコミュニティの形成が期待できます。
「FiNANCiE」はブロックチェーンを基盤にしたプラットフォームで、この種のトークン発行が実施できます。トークンが流通することで「トークンエコノミー」が生まれ、コミュニティ内での交流や活動が活発化します。
・FiNANCiEのコミュニティトークン
トークンエコノミーとは、トークンを中心にした経済活動を意味します。コミュニティトークンの導入により、コミュニティの持続的な活動が可能となり、トークン保有者は投票や企画参加、特典の受け取りなどのアクティビティに参加できます。
コミュニティの活発な活動はトークンの経済価値を上昇させ、それがプロジェクトやスポーツチームの資金調達や目標達成に寄与します。さらに、このプロセス全体がサポーターにとっての魅力となり、コミュニティの一員としての参加意欲を高める要因となります。
・ フィナンシェトークン「FNCT」
2021年12月、株式会社フィナンシェは国内仮想通貨取引所コインチェックにおいてIEOを実施し、「フィナンシェトークンFNCT」を上場しました。FNCTはイーサリアムブロックチェーン上で発行され、FiNANCiE内のコミュニティトークン間の連携を強化し、その価値を長期的に向上させる役割を果たします。
3-6.NFTを活用して農家を支援する国内発の「支援DAO」
数々のNFTプロジェクトの中で注目されるのが「支援DAO」、このプロジェクトは農家の支援を目的としたNFTを利用したクラウドファンディングです。支援DAOのファウンダー自身はリサイクル業に従事していますが、兄が農業を行っていることから、農業への支援を考え「tomajoDAO」という農業系NFTコミュニティに参加しました。「支援DAO」はこのtomajoDAOから派生したもので、農家の支援・応援をメインとしたプロジェクトです。
「支援DAO」のクラウドファンディングの流れは次のようになります。まず、支援を希望する人が立候補。複数の希望者がいる場合、投票を行って被支援者を選びます。次に、NFTの発売日や枚数が決まり、これに伴う告知がコミュニティ内やSNSで行われます。購入は「支援DAO」の「ミントサイト」からでき、支援者はこのNFTを手に入れることができます。全てのNFTが購入された後、収集した資金は被支援者に渡されます。
これまでの取り組みとして、2023年5月時点で2回の支援が実施され、被支援者への資金としてイーサリアムが送られています。また、発行されるNFTはその都度デザインが変わるのも特徴の一つです。
NFTを利用したこの方法では、被支援者も積極的に宣伝を行いますが、コミュニティ全体が一緒になってその活動をサポートします。集められた支援金は、NFTが完売した際に即座にイーサリアムで送られる仕組みとなっています。
④まとめ
ガイアックスの調査によれば、web3を活用した地方創生プロジェクトは1年間で8倍の成長を見せました。NFTを活用する動きが特に顕著でした。
急激な成長があったとはいえ、Web3の導入の余地はまだ多いと言われています。その背景には、NFTを利用したふるさと納税や、地方創生をサポートする様々なプロジェクトや企業の登場が挙げられます。今後の動向にも注目して、各プロジェクトの取り組みを追ってみることをおすすめします。
立花 佑
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