近年、NFT(非代替性トークン)やWEB3(分散型インターネット)が注目されています。地方創生や環境事業にブロックチェーンやWEB3が活用されつつあります。特に地方創生のためにNFTが活用され、ふるさと納税の返礼品にNFTが登場すると、人気のコンテンツは即完売するほど注目されます。2023年以降も地方や地方を応援する事業がWEB3を活用する動きは進みそうです。
ここでは今国内でどういったWEB3×地方創生の活動が行われているのか、まとめてご紹介します。今回は、2023年2、3月をまとめています。
目次
- 石川県加賀市がNFTを活用した「e-加賀市民制度」の実証実験へ
- 農業支援組織Metagri研究所の「ナカジマみかんNFT」シリーズ
- 神戸市がNFTを活用し東京圏のZ世代と地域を越えて“つながる”オンラインコミュニティを運営
- LLAC 認定NPO法人「D×P」向けにチャリティーオークションを開催
- 「CryptoNinja Partners」と「あるやうむ」とのコラボ返礼品
- あるやうむが「地方創生WEB3研究所」を公開!第一弾は「山古志DAO」
- 3月1日よりDAOへの参加権および投票権を付与した『美しい村NFT』の予約販売を開始
- まとめ
①石川県加賀市がNFTを活用した「e-加賀市民制度」の実証実験へ
加賀市は2018年に「ブロックチェーン都市宣言」を発表し、2021年12月にNFTを活用した「e-加賀市民制度」の実証実験の実施を発表しました。電子上の住民である「e-加賀市民」の創出を目指した制度で、2023年からの正式導入を計画しています。
加賀市による「e-加賀市民制度」は、関係人口の創出ににより同市への将来的な移住・定住を図ることを目的に、従来の市民と市民以外に加え、電子上の住民である「e-加賀市民」の創出を目指した制度とのことです。実証実験では、参加者に「e-加賀市民」に登録してもらい、システム及び提供サービスを体験してもらうことで、「e-加賀市民制度」開始に向けた課題の洗い出しを実施するとしています。
参加者は、暗号資産(仮想通貨)・NFT利用者やデザイナー・クリエイターなどの事前選定者の他、一般の参加希望者から100名程度を集めるとのことです。
また実証実験の参加者には特典として、e-加賀市民証となるオリジナルNFTの進呈やオンラインとオフラインで提供するe-加賀市民専用コミュニティへの参加、乗合タクシーの利用、市内宿泊事業者の協力によるワーケーションサービスの利用が提供されるとのことです。
なおこのオリジナルNFTは、講談社「バガボンド」「ジパング」等の題字を手掛けた「SYO ARTIST」吉川壽一氏がデザインを担当しています。実証実験に関する募集・告知は、2023年1月以降に実施予定とのことです。
②農業支援組織Metagri研究所の「ナカジマみかんNFT」シリーズ
農業ブランディングサービスを展開する「株式会社農情人」が運営する農業支援組織「Metagri研究所」は、愛媛県松山市中島における「ナカジマみかんNFTシリーズ」最終章として、立春の日、2月4日(土)に「ナカジマはるみNFT」を販売しました。
中島は愛媛県松山市の北西沖合、瀬戸内海に浮かぶ怱那諸島(くつなしょとう)は柑橘の栽培が盛んです。オンライン上の新たな交流手段として注目を浴びるメタバース(仮想空間)で、中島の名産である柑橘や六次産業化(アロマオイルなど)による商品をオンラインで販売したり、オンラインのコミュニティを現地におけるオフラインの体験につなげています。
メタ中島コミュニティによるプロジェクトの一つとして、Metagri研究所は中島で生産された柑橘とNFTを掛け合わせた「ナカジマみかんNFTシリーズ」を発行しています。NFTをきっかけとした”つながり”により、DAO(自律分散型組織)のコミュニティ運営支援も手掛けることで関係⼈⼝創出を目指しますとしています。
2月4日(土)21時から12点限定で 価格は0.05ETHです。NFTマーケットプレイス「OpenSea」にて販売開始されています。NFTユーティリティは、コミュニティ内の限定ページへのアクセス特典のほか、メタバース空間でのイベントや、中島におけるいよかんサウナイベントへのご案内、中島特産の柑橘や関連商品の割引購入など、様々なユーティリティを予定しています。
③神戸市がNFTを活用し東京圏のZ世代と地域を越えて“つながる”オンラインコミュニティを運営
神戸市は、Z世代向けクリエイティブ事業を展開する合同会社rakugoka、株式会社uzumaki creativeと協働し、東京圏のZ世代をメインターゲットに、神戸をモチーフにしたNFT作品を制作します。と同時に、作品取得者などがチャットツールDiscord上で集い交流し、地域を越えて神戸と“つながる”コミュニティを創出する実証プロジェクトを開始します。Z世代とのつながり構築を目指し、自治体として初めてNFT作品及びDiscordを活用したオンラインコミュニティを創出する、新たな取り組みを開始します。
背景としては、Web3の市場が世界的に拡大する中、国の骨太の方針2022においても、Web3の推進に向けた環境整備が掲げられています。ブロックチェーンを使ったデジタルデータに唯一性を付与するNFT作品は、若年層を中心に注目を集め、NFT作品を持つ同士でオンライン上のコミュニティを作ってつながるなど、個性を示すコミュニケーションツールとしても活用され始めています。
人口減少が進む中、地域と地域外の人々が多様に関わる関係人口の重要性が高まっており、NFT作品を制作するとともに、Z世代の利用が多いチャットツールDiscordを活用が着目されました。自治体として初めての、NFTをきっかけに東京圏のZ世代と地域を越えて“つながる”オンラインコミュニティを運営していくとしています。Z世代の“推し”の自治体となって関係人口の創出を目指すとのことです。
NFT作品については、神戸の魅力は人であり、人とのつながりを大切に、人のために力を尽くし、新しいことに挑み続ける人や気持ちを愛するという神戸市のメッセージ「BE KOBE」などをモチーフにした作品を、神戸ゆかりのNFTアーティスト 「Kawaii SKULL」さんが手がけるそうです。
販売は、NFTマーケットプレイスOpenSeaで出品されます。事前に購入申込フォームで申込みが必要です。
※申込み多数の場合は抽選となります。購入方法は添付の参考資料ファイルをご参照ください。
- 出品数 :078体
- 販売額 :0.02イーサ (約4,000円相当、令和5年2月15日時点)
※仮想通貨イーサリアムでの決済で、別途ガス代と呼ばれる手数料がかかります。 - 事前申込み:https://forms.gle/G9iEVx39dfDLvXga9から申込みください。
- 販売日 :令和5年3月中旬(予定)
④LLAC 認定NPO法人「D×P」向けにチャリティーオークションを開催
“猫のように生きる”をコンセプトとした国産ジェネラティブNFTプロジェクト『Live Like A Cat(以下、LLAC)』は2月22日(水)の【猫の日】に合わせて、認定NPO法人「D×P(ディーピー)」向けチャリティーオークションを開催します。3点のLLACをオークション形式で出品し、売上は全額D×Pへ寄付されます。“NFT×支援”という新しいカタチで「10代の孤立」の解消を目指す活動をサポートします。
LLACは「猫のように生きる」をコンセプトとしたNFTプロジェクトです。株式会社むらかみかいぞくが運営する「フリーランスの学校」を母体にしています。“それぞれが、自分の心地よい生き方を探し、自分らしく生きること”をテーマに「人生のOSをアップデートする」を掲げています。
“10代をひとりにしない”をコンセプトに活動する認定NPO法人「D×P」へのチャリティーオークションでは、LLACを3点発売されます。売上は全額「D×P」へ寄付され、「10代の孤立」という社会問題の解消を目指す団体の活動を支援するとのことです。また、今回のチャリティーオークションの落札者には、LLACリードデザイナーである猫森うむ子氏が描き下ろした限定SBTが贈呈されます。
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チャリティーオークション詳細
- 日時:2月22日(水)20:00~
- 出品数:3点
チャリティーオークションページは当日公開されます。詳細はLLAC公式ホームページ内に掲載している、Discordコミュニティから確認をしてみてください。
⑤「CryptoNinja Partners」と「あるやうむ」とのコラボ返礼品
「NFTによる地方創生」を推進する株式会社あるやうむと、国内最大級のNFTプロジェクトCryptoNinja Partners(以下、「CNP」)が、コラボした返礼品企画「ふるさとCNP」は、すでに複数のふるさと納税NFTを返礼品として制作しています。
今回、京都府宮津市は2月26日(日)18:15より宮津市のふるさと納税の返礼品として「宮津市ふるさとCNP2023」を提供します。222種類の一点ものNFTを寄付金額30,000円/種類で用意し、あるやうむ独自のポータルサイト「ふるさと納税NFT β版」上で提供されます。暗号資産を必要としない日本円での寄付によりNFTおよびCNPをカジュアルに体験しつつ、宮津市の魅力を満喫できる仕掛けをしていくとしています。
本NFTは、パーツや背景、キャラ等それぞれ異なる組み合わせの合計222種類となります。宮津市は、アイテムとして、名産品である黒ちくわやコッペガニ、由良みかん、オリーブ、日本酒のほか、背景には上世屋棚田、海燕、昇龍観、金引の滝、飛龍観をモチーフにしたNFTアートを作成します。メインキャラクターにはCNPの人気キャラクター「ヤーマ」を採用し、宮津市を訪れることでNFTのレベルを上げる仕掛けも実装予定です。
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「宮津市ふるさとCNP2023」の概要
- 寄付受付開始:2023年2月26日(日)18:15(予定)
- 寄付金額:30,000円/種類
- 注意事項:NFT発行から、1年間の転売制限を施しております。
- 発行元:株式会社あるやうむ(北海道札幌市)
- 寄付受付サイト:ふるさと納税NFT β版
返礼品としてNFTを受け取るために、送付先のウォレットアドレスを入力します。そのため予め「メタマスクウォレット」を作成しておきましょう。
⑥あるやうむが「地方創生WEB3研究所」を公開!第一弾は「山古志DAO」
『NFTによる地方創生』を推進する株式会社あるやうむ)は、Web3技術を活用した地方創生の取り組み事例を紹介するオウンドメディア「地方創生Web3研究所」を立ち上げました。「地方創生WEB3研究所」では、地方創生にWeb3技術を活用した事例を紹介することで、地方創生における新しいWeb3技術の活用方法を探っていきます。多くの事例を地方創生に取り組む方々に届けることにより、全国で新しい取り組みが展開されるよう推進するとしています。
第一弾では新潟県の旧山古志村のNFTとDAOを活用した取り組みを紹介しています。山古志村では2021年12月に世界で初めてNFTをデジタル住民票としての用途で発行しました。2021年12月に人口800人、高齢化率55%超えの限界集落が存続をかけた挑戦が功を奏し、デジタル住民(関係人口)は1,000人を超えているそうです。そして、これからの地方地域のあり方を画期的に変革するのではないかと考えられる、山古志DAOが立ち上がりました。オンライン上で、NFT所有者の関係人口と地域住民が関わり町を作っていく「仮想山古志」が誕生しました。
山古志村は、2,200人以上いた町が約800人ほどまでに減少し、高齢化率は55%と存続の危機となっている状況にあり、隣町の長岡市に合併されました。それでも山古志村のアイデンティティを存続させていくために考えられたのは、「山古志を疑似体験できる仮想空間を作り、価値観を共有する人と共同体を作って山古志を存続させる」という構想だったそうです。
そしてエストニアの電子住民票「e-Residency(電子国民プログラム)」からインスピレーションを受け、山古志にいなくても、山古志村の一員であるような証明書としてNFTに行き着いたそうです。NFTをデジタル住民票として活用することで、保有している世界中の人がデジタル上で山古志村の村民になれる世界(DAO)をスタートしました。
⑦3月1日よりDAOへの参加権および投票権を付与した『美しい村NFT』の予約販売を開始
DAOの立ち上げ支援を提供する株式会社ガイアックスが開発する、複数自治体横断の地域創生コミュニティ『美しい村DAO』は、3月1日よりDAOへの参加権および投票権を付与した『美しい村NFT』の予約販売を開始します。
参加権&投票権が付与された『美しい村NFT』は、NFTの購入により地域の課題解決プロジェクト等に参画できる権利のほか、『宿泊割引』や『温泉入湯割引』などのインセンティブが付与されます。またよりデジタル村民と地域住民が一体となって『未来の地域づくり』に取り組むようDAOを設計していくそうです。なお、『美しい村DAO』は4月1日よりDAOとしての活動を開始する予定です。
「美しい村DAO」とは「日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業 」として、鳥取県智頭町と静岡県松崎町が取り組んでいます。事業概要は、ブロックチェーン技術に裏付けられたスマートコントラクトを構築し、DAO方式で管理する「デジタル村民コミュニティ」を創設するとしています。具体的な内容としては、デジタル村民証となるNFTの発行や、地方の魅力的なコンテンツを体験できる権利を含む地域資源NFTが購入できるプラットフォームを作成します。そしてデジタル村民証はリアル村民と同じように村民向けサービスを受けられるなどの特典を受けることができるとのことです。
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『日本で最も美しい村 デジタル村民の夜明け』イベント概要
- 開催日時:2023年3月6日(月)~3月12日(日)
- 開催場所:Marunouchi Happ.、丸の内HaNT
- 内容:『Marunouchi Happ.』1,地域素材を活用したPOP UP CAFE、美しい村NFTの予約販売 2,『丸の内HaNT』、トークイベントの開催、NFTファッションショー
また、3月9日にはガイアックスweb3事業本部長である峯 荒夢(みね あらむ)が、株式会社デジタルガレージ 共同創業者の伊藤穰一氏らとのトークイベントに登壇する予定です。リアル会場で話を聞くことができ、既に満席となっています。WEB3への関心が集まっているようです。
⑧まとめ
今回は2023年2月、3月の間に国内で活動している、またはこれから始まるプロジェクトなどを紹介しました。地方自治体がWEB3を活用する動きが進んでおり、NFT発行やDAOの創設などが行われており、NFTは投機的な側面だけでなく、何かをするための「媒介」としての活用方法が注目されています。
またブロックチェーンを活用していることでグローバルに応援を受けることができ、支援の追跡や関係性の可視化、デジタル資産としての証明など、従来の支援ではできなかったユーティリティーの提供が可能になりました。WEB3やNFTが気になる方は、まずは地方と関わっているプロジェクトから始めてみてはいかがでしょうか。
立花 佑
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