子どもと一緒に学べる金融教育は? 現状と課題や楽しい学習方法も解説

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※本記事は株式会社Japan Asset Management 盛永 裕介氏による寄稿記事です。

株式会社Japan Asset Managementは、資産運用に関する助言を提供するIFA法人です。IFAとはIndependent Financial Advisorの略であり、独立系ファイナンシャルアドバイザーを指します。中立的な立場からの資産管理・運用アドバイスを提供する存在として、注目されています。

株式会社Japan Asset Managementは、日本経済の持続的な成長にとって金融リテラシーのレベルを引き上げが重要との考えから、金融経済教育にも取り組んでいます。ビジネスプランニング部・採用人事部マネージャー 金融教育プランナー・JAM ACADEMY 塾長 盛永裕介氏に、子どもと一緒に学ぶ金融教育について伺いました。

目次

  1. 金融教育が注目されている背景
  2. なぜ子どもに金融教育が必要なのか?
  3. 金融教育の現状と課題
  4. 子どもたちが楽しくお金と向き合う方法
  5. 保護者が学び、子どもたちに教えるには?
  6. まとめ

1.金融教育が注目されている背景

2023年現在、個人のライフスタイルや働き方が多様化し、自分自身で将来の資産形成や資金計画を立てる重要性が増しています。特に、日本は海外よりも金融教育が遅れていることや、日本の成年年齢が18歳になったことに伴い、金融リテラシーの向上が求められています。

成年年齢の引き下げによって、親の同意がなくても18歳から携帯電話の購入やクレジットカードの作成や、返済能力が認められればマイカーローンを組んで自動車を購入できるようになりました。しかし契約が自由になれば、自分で適切な借り入れを判断し、消費計画を立てる必要があります。

2.なぜ子どもに金融教育が必要なのか?

OECDの報告(※1)では、金融リテラシーが低い国の消費者が、借金問題や無計画な消費に陥るリスクが高いと指摘されています。さらに、金融広報中央委員会の調査(※2)によれば、保護者や学校から金融教育を受けた子どもたちの方が、望ましい金融行動を取るというデータがあります。そのため、子どもたちが適切な金融行動を取るためには、金融リテラシーの向上が重要です。

※ 調査は資産運用、借入れ、生保加入時に他の金融機関や商品と比較した人の割合。

【参照】※1 OECD「「G20/OECD INFE report on adult financial literacy in G20 countries
【参照】※2 金融広報中央委員会「金融リテラシー調査(2022年)

子どもたちは貯蓄や投資の重要性を学び、資産形成に必要な知識やスキルを習得し、適切な家計管理や投資判断ができるようになることが求められます。さらに、金融商品やサービスのリスクや特徴を理解していれば、悪徳商法や詐欺などの被害防止が期待できます。

また、ライフスタイルの多様化によって、昔と比べて自分らしい暮らしが出来るようになりました。同時に、自由な選択するためにはある程度のお金が必要になります。ライフステージが進んでいく上で、働いてお金を稼ぐこと以外にも貯蓄・投資・保険などとうまく付き合っていくことが、ウェルビーイングの実現に繋がります。また、金融リテラシーの高い人ほど、金融トラブルが少ない、経済ショックへの耐性が強いという調査結果があります(※2)。

3.金融教育の現状と課題

金融経済教育推進会議(※3)によれば、高校生向けの金融リテラシーは、家計管理、生活設計、金融知識・金融経済情勢の理解・適切な金融商品の選択、外部知見の適切な利用の4分野に分類されます。2022年度からは、家庭科の授業で資産形成が取り上げられるようになりました。

【参照】※3 金融経済教育推進会議「金融リテラシー・マップ(2015年6月改訂版)

しかし、教員の中には金融商品やリスク管理に自信がなく、授業で資産形成を扱わない場合があるとの問題が指摘されています。また、金融教育に積極的な高校は4割弱に留まっているとの調査結果もあります(※4)。教員の金融教育専門性向上が求められる一方で、家庭科の授業時間だけでは金融教育に十分な時間を割くことが難しいのが現状です。

【参照】※4 株式会社QUICK「高等学校における金融教育の意識調査2022

問題に対処するためには、金融教育を家庭と連携し、学校だけに頼らない多様な金融教育の環境を整備することが重要です。家庭での金融教育の重要性が高まる一方で、自身の子どもに金融教育を行ったことがない家庭の割合は80.4%であり、「自分自身も理解できていないから(66.2%)」との理由が最も多くなりました(※5)。

【参照】※5 auじぶん銀行「子どもの夏休みと金融教育に関する調査

金融教育の目的は、金融リテラシーを高めると同時に、適切な金融行動を促すことです。金融に関する知識を単に教えるだけでは十分ではなく、貯蓄や健全にクレジットカードを利用する習慣を身に着けさせるためには、家庭での金融教育が必要でしょう。

4.子どもたちが楽しくお金と向き合う方法

子どもたちが楽しくお金と向き合うには、家計管理や資産形成を体験できるゲームやスマホアプリの活用が有効であると考えています。親子向けの金融教育ワークショップに参加することも選択肢の一つでしょう。

例えば、家計管理アプリを親子で利用すれば、家計の管理方法や節約術を学べます。親子で月々の収支をチェックし、節約方法や無駄遣いの削減について話し合えます。「マネーフォワード ME」が代表的なアプリです。

資産形成の知識を身につけるためには、「人生ゲーム」や「モノポリー」などのボードゲームが役立ちます。ボードゲームを家庭での金融教育に活用するために大事なことは、ゲームで起こる出来事に関心を持つことです。「保険って何?なぜ必要なのかな?」「どうしてその土地を買ったの?土地は借金してでも買った方がいいの?」など、ゲームをする中で出てくる疑問やその理由を親子で一緒に考えてみましょう。

また、投資に関する関心が高まってきたとき、アプリを活用して投資シミュレーションを行う方法もあります。親子でやってみて、「なぜ株価が下がってしまったのか」を考え、株式投資のリスクについて話し合えば、より実学的な理解が深まるでしょう。

親子で金融教育のワークショップへの参加も、金融知識を向上させるための有効な方法です。ワークショップでは、専門家からのアドバイスや他の親子との交流を通じて、金融に関する理解がさらに深まります。筆者も親子向けの金融教育ワークショプを定期的に開催しており、「家族でお金について話すことで、子どものお金に対する意識が高まった」との感想をいただく事例もあります。

5.保護者が学び、子どもたちに教えるには?

子どもに適切なアドバイスをするために、保護者自身が基本的な金融知識を習得することが不可欠です。多くの情報が溢れかえっている現代では、正確な情報を見極める力が求められます。金融知識を身につける際は、信頼性の高い人物や組織からの情報を参照しましょう。

例えば、金融庁が提供する「高校生のための金融リテラシー講座」や、日本証券業協会が発信する「投資の時間」といった教材は、大人にとっても有益な内容が含まれています。日本銀行の提供する「にちぎん・学びの部屋」では、親子で金融知識を学ぶためのアイデアや情報が提供されています。

子どもたちに教える前に、保護者自身が信頼性の高い教材や情報源を活用し、金融知識を習得しましょう。子どもたちに適切な金融教育を提供できるようになります。

金融教育を通じて、子どもの疑問に親子で一緒に取り組むことで、投資や資産運用への興味を喚起し、思考力の向上が期待できます。金融知識を詰め込むのではなく、家計管理や資産形成を体験できるゲームやスマホアプリを活用し、親子で一緒に体験学習をすることがポイントです。

6.まとめ

子どもと一緒に学ぶ金融教育の重要性と、効果的な学習方法について検討しました。親子での金融教育の実践が、子どもたちの金融リテラシー向上や適切な金融行動に繋がります。

ゲームやスマホアプリを活用した、体験型の学習を通じて親子で金融知識を身につけることがポイントです。また、保護者自身が信頼性の高い情報源から金融知識を習得し、子どもたちに適切な指導を行うことが重要です。親子で一緒に金融教育に取り組めば、子どもたちの投資や資産運用への興味が喚起され、思考力の向上が期待できるでしょう。

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盛永裕介

早稲田大学大学院教育学研究科(教職大学院)修了。教職修士(専門職)。 大学院在学時、私立中高一貫校にて教壇に立つ。2021年4月に株式会社Japan Asset Management新卒1期生として入社。 JAM Academy塾長として年間2,000名以上の小中高生に金融教育プログラムを提供する。金融知識や分かりやすい資料づくりのノウハウを生かし、セミナー資料の作成のほか、セミナー講師としてマーケティング業務にも従事。 小学校教諭二種免許状、中学校教諭専修免許状(技術)、中学校教諭二種免許状(家庭)、高等学校教諭専修免許状(情報、工業)、証券外務員一種保有。