NFTチケットの可能性:アルゼンチン航空会社フライボンディの革新的な取り組みを解説

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一時は投資や投機目的のツールとして注目を浴びていたNFTですが、その活用領域が徐々に広がっています。今や国内外で、NFTは会員証や証明書、身分証明書、チケット等の形で利用され始めています。

その新たな動きの一つとして、アルゼンチンの格安航空会社(LCC)、フライボンディ(Flybondi)が電子チケットをNFTとして発行することを始めました。これにより、チケットの名義変更、譲渡、売却が可能になります。本稿では、この新しい形のNFTチケットと、そのメリットについて詳しく解説します。

目次

  1. アルゼンチンのLCC、フライボンディによる電子チケットのNFT化
  2. レコチョク、チケットをNFT化して二次流通が可能に
  3. 搭乗券やライブチケットをNFTにするメリットと注意点
  4. まとめ

①アルゼンチンのLCC、フライボンディによる電子チケットのNFT化

フライボンディは、2023年3月30日にNFT発券会社TravelXとのパートナーシップを強化し、電子チケットをNFTとして発行することを開始しました。このNFTチケットは、アルゴランド(Algorand)ブロックチェーンの技術を利用して発行されています。これは「Ticket 3.0」と名付けられた取り組みであり、2022年9月に始まったTravelXとのパートナーシップをさらに推進するものです。

乗客に発行されるNFTチケットは、名義変更、譲渡、売却が可能となっています。フライボンディは、NFTチケットによって「旅行計画や旅行者の選択を事前に固定せずにチケットを購入できるため、より自由で柔軟な旅行体験が可能になる」と述べています。一方、航空会社側は、顧客サービスのコスト削減や、取引手数料による収益の増大が期待できます。

フライボンディのウェブサイトから法定通貨でチケットを購入すると、TravelXはその電子チケットに連動したNFTチケットを発行します。そして旅行者がTicket 3.0のアカウントを作成すると、フライボンディを通じてNFTを管理・保管することができます。航空チケットの規則や条件は、スマートコントラクトに記載されています。

フライボンディのCEO、Mauricio Sana氏は、「ブロックチェーン技術を通じて、航空業界にポジティブな影響を及ぼすことが可能。業界のルールを変えるのは容易ではないが、利用者に自由で革新的な飛行体験を提供することが、私たちの目標である」と話しています。

搭乗できなくなった航空チケットの譲渡が可能

飛行機は旅行や出張など、さまざまなシーンで活用されています。しかしながら、予期せぬ事態で航空チケットをキャンセルせざるを得ない状況に直面することもあります。その際にはキャンセル手続きを行う必要がありますが、その手続き期限やキャンセル料などは航空会社によって異なります。

航空チケットのキャンセル料は、払い戻し手数料とキャンセル手数料が主に発生します。一般的に、チケット購入から出発日までの日数により、キャンセル料が定められています。例えば、定価で航空券を購入した場合、JALやANAでは出発前であればキャンセル手数料は発生せず、払い戻し手数料の430円だけが必要となります。しかし、普通運賃よりも安い価格でのチケットでは、出発までの日数により、払い戻し手数料に加えてキャンセル手数料が発生します。

格安航空会社(LCC)では、運賃タイプによりキャンセルが不可能な場合もあるため、何かあった時のために、選択した運賃タイプがキャンセル可能なのか確認しておくことが重要です。キャンセルできないと、たとえ安い価格でも、数万円が戻ってこない可能性があります。

こうした中、アルゼンチンのLCC、フライボンディのNFTチケットは、名義変更、譲渡、売却が可能となっています。つまり、何らかの理由で航空チケットを利用できなくなった場合でも、フライボンディを通じて、チケット購入代を回収することが可能となるわけです。これが、より自由で新しい旅行体験につながる要素と言えます。

②レコチョク、チケットをNFT化して二次流通が可能に

NFT Ticket 1
この他、チケットのNFT化は音楽業界でも注目を集めています。例えば、レコチョク株式会社は、チケットの発行から販売、入場管理、顧客管理まで一貫して担う「レコチョクNFTチケット」を2023年3月23日から提供開始しました。このチケットには、NFTを動的に変化させることが可能な“ダイナミックNFT”という技術が採用され、入場後に券面が変わる仕組みとなっています。これは、日本国内においてダイナミックNFTを用いたデジタルチケットの有料発行・入場管理が初めての試みとなります(2023年2月、同社調査による)。

レコチョクは2022年1月から、NFT(ノン・フングィブル・トークン)の世界に本格的に足を踏み入れました。これにより、NFTの生成から販売、そして再販売(二次流通)までを含むWeb3.0のエコシステムへの参加が可能となりました。こうした動きは、特に音楽とエンターテイメントの分野において注目され、これまで多数のNFTが発行されています。それにより、NFTがファンとのコミュニケーションの新たなきっかけとなりうることを示しています。

レコチョクではこれまで、チケットの半券をNFT化する取り組みを進めてきました。しかし、今回新たに提供を開始する「レコチョクNFTチケット」では、”チケットそのものがNFT”となるという新たなステップを踏み出します。このNFTチケットは法定通貨で購入可能となっており、特定の保有者への特典提供や特別な体験を用意することが可能です。さらに、ブロックチェーン技術の特性を活かすことで、不正な偽造や転売を防止しつつ、マーケットプレイスでの安全な売買(二次流通)を実現しています。

NFT Ticket 2

具体的には、レコチョクの専用ストアでチケットを購入し、イベントやライブの当日は、スマートフォンなどのデバイスの画面上で表示されるQRコードを入場時にスタッフに読み取ってもらいます。すると、QRコードのデザインが変わり、これが来場証明となるとともに、ゲーム性も持たせています。

さらに、当たりチケットを設定したプレゼント企画や、チケット購入後・終演後にイベント主催者やアーティストからメッセージ・動画・最新情報が送付されるなど、NFTチケット所有者限定の特別な体験を提供することで、ファンとのコミュニケーション強化に活用されます。

「レコチョクNFTチケット」の主な特徴としては、以下の通りです。

  • ブロックチェーン上に構築したレコチョク独自のNFT管理システムにより、発行から転送までをサポート
  • 法定通貨での販売・購入が可能(暗号資産は不要)
  • 券面デザインを自由に設計可能
  • ダイナミックNFT技術を採用し、入場すると券面デザインが変化
  • チケット利用後もイベント参加の証として半永久的に保管
  • イベント終了後も所有者限定の付加価値・体験を提供可能
  • ブロックチェーン技術により、不正な偽造・転売を防止、二次流通を制御

③搭乗券やライブチケットをNFTにするメリットと注意点

NFT(非代替性トークン)化することによる搭乗券やライブチケットのメリットと注意点についてお伝えします。

  1. 偽造防止:
    ブロックチェーン技術により、NFT化された搭乗券やライブチケットは偽造から保護されます。これにより、不正なオンライン取引や偽造チケットの流通を大幅に減らすことが可能になります。
  2. 保管の安全性:
    物理的な紙のチケットは紛失しやすいですし、一度無くしてしまったら取り返すのは難しいです。しかし、NFT化されたチケットはデジタル形式であるため、安全に保管でき、いつでも簡単にアクセス可能です。
  3. 旅行記録の追跡:
    NFTを活用することで、搭乗履歴やライブ参加履歴などを確認することができます。これはどの航空便を利用したか、どの座席に座ったかなど、旅行の詳細な記録を追跡するのに役立ちます。
  4. 環境負荷の軽減:
    NFTの利用は、紙を使う伝統的なチケットシステムに対する環境負荷を減らすことができます。通常のチケットは一時的にしか利用されず、使用後は廃棄されますが、NFTはデジタルであり繰り返し使用することが可能です。
  5. 転売防止:
    ライブチケットをNFT化することで、チケットの無許可転売を防ぐことが可能になります。NFTチケットは所有者のみが取引できるため、不正な転売を防ぎます。
  6. 二次流通の促進:
    また、NFT化されたライブチケットは、マーケットプレイスを通じて容易に売買することが可能となります。人気のライブチケットは需要が高まると価格も上昇する可能性があります。

NFT化により、チケットの利用は新たな可能性を秘めています。たとえば、NFTチケットの保有者限定特典の提供など、従来の紙チケットでは実現しにくかったサービスも展開できるようになります。

しかし、全てがメリットではありません。デジタル技術に不慣れな利用者にとっては、NFTチケットの取り扱いが難しい場合があります。また、ブロックチェーン技術によりチケット情報の改ざんは困難ですが、中央集権型のNFTチケット管理システムはハッキングやウイルス攻撃のリスクがあるため、安全対策が必要です。

④まとめ

ここまで、アルゼンチンのLCCフライボンディが提供しているNFT搭乗券についてご説明しました。この航空会社では、NFT化したチケットによって名義変更や譲渡、売買が容易になり、利用者に新たな選択肢を提供しています。飛行機の利用が困難になった際にキャンセル料を支払う代わりに、チケットを譲渡や売却することでコストを抑えることができます。一方、航空会社側も顧客サービスのコストを削減し、取引手数料を収益源として期待することが可能になります。

NFTは、デジタルアートなどのコンテンツとしてだけでなく、実社会での利用にも幅広く応用されています。ライブチケットをNFT化することにより、保有者特典の提供やマーケットプレイスでの売買、偽造防止といった、従来の紙チケットでは考えられなかった新しい可能性を見つけ出すことができます。これからもNFTがさまざまな場面で活用されることが期待されるため、このトピックを引き続き注視していきたいと思います。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。