東北地方の経済的自立を目的とした地方創生DAO「みちのくDAO」とは?

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近年、地方創生の手段としてDAO(分散型自律組織)が注目されています。DAOはブロックチェーン技術を基盤に、中央集権的な管理者なしで組織運営が行われる仕組みです。この記事では、みちのくDAOの特徴から、DAOを活用することでの可能性、また実際にDAOを使っている地方創生の取り組み事例を紹介します。

目次

  1. DAOとは?
    DAOを使うメリット
    DAOのデメリットについて
  2. みちのくDAOとは?
    みちのくDAOの具体的な取り組みと可能性
  3. みちのくDAOが目指すところ
  4. 地元の活性化を図るための地方創生DAOを実現している事例
    山間部地域の持続可能な発展を目指す「Local DAO」
    複数自治体横断の地域創生コミュニティ「美しい村DAO」
    美しい棚田を後世に残すため新しい村作りに挑戦する「棚DAO」
  5. まとめ

①DAOとは?

そもそもDAO(Decentralized Autonomous Organization)とは基本的に、スマートコントラクトを使用して運営されている自律分散型組織です。スマートコントラクトは、特定の条件が満たされたときに特定の機能を実行する、自己完結型のコンピュータプログラムです。構成員の承認がなければアクセスできない運営資金もシステム内に組み込まれています。そのため中央集権的な組織構造に比べ、効率的で民主的な運営が可能です。

DAOの代表例として挙げられるのが、ビットコインです。マイニングによる報酬としてビットコインが還元される仕組みを作ることで、ネットワーク全体を維持しています。またイーサリアムでは、スマートコントラクトを使用することで取引を自動化し、仲介者を必要としないシステムの構築が進められています。

DAOに参加するには様々な方法がありますが、通常は組織内で使用されているネイティブトークンを購入・保有することで、運営に関連する重要な議題の投票権を得ることができます。また国内のNFTプロジェクトはDAOを使って運営されていますが、スマートコントラクトが使われているわけではなく、あくまで個人がプロジェクトに興味を持ち自主的にプロジェクト内で活動しています。

1-1.DAOを使うメリット

透明性の向上

DAOはブロックチェーンを基盤としているため、すべての取引や意思決定の過程が公開されます。これにより、不正や不透明な操作が排除され、信頼性の高い組織運営が可能となります。

効率的な資金調達と配分

DAOでは、スマートコントラクトを用いて資金調達や配分が自動化されます。これにより、従来の手続きにかかる時間やコストを削減でき、迅速な対応が可能です。

コミュニティの参加促進

DAOはコミュニティメンバー全員が意思決定に参加できる仕組みを提供します。これにより、地域住民の意見が反映されやすくなり、地方創生プロジェクトへの関与が深まります。

1-2.DAOのデメリットについて

合法性、安全性、構造に関する懸念

DAOの革新性はきわめて新しい技術であり、合法性、安全性、構造に関する懸念や批判の声はまだ多く残っています。マサチューセッツ工科大学のメディア企業が刊行するMIT Technology Reviewは、重要な金融の決定を大衆に任せるべきではない、という考えを明らかにしています。

ハッキングリスク

また、DAOでハッキングが起きた場合、スマートコントラクトの欠陥が発見された後でも修正するのが困難なため、セキュリティ上の懸念がされています。問題が見つかったとしても、システムを変更するにはコミュニティからの合意を得る必要があるため、迅速な対応が難しく、盗難や金銭の損失、その他の悲惨な結果につながる可能性があるとしています。

法的な問題

DAOは、複数の管轄区域に分散される可能性があり、現在は法的な枠組みも存在しません。法的な問題が発生した場合、関係者は多数の地域の法律に対応する必要があり、複雑な法廷闘争を強いられるという予想もされています。

②みちのくDAOとは?

みちのくDAOは、東北地方の経済的自立を目的とした活動をしている地方創生DAOです。このプロジェクトは、地域住民や起業家や事業者などの外部の支援者がブロックチェーンを通じて協力し、資金調達や東北各地域におけるNFTプロジェクトの立ち上げ支援を行います。みちのくDAOの発起人である福留秀基氏は、スパークル株式会社の代表取締役であり、東北地方のデジタル技術を活用した事業創造と事業変革を推進しています。

2-1.みちのくDAOの具体的な取り組みと可能性

以下にみちのくDAOのプロジェクト詳細に記載されていた主な役割と機能、そこから見えてくる可能性について考えていきます。

デジタル・Web3を活用した事業応援コミュニティづくり

みちのくDAOは、東北地方の産学官金と起業家・エンジニアをマッチングし、デジタル技術を活用した新規事業の創出を支援します。DAOの仕組みを利用しすることで、地域住民が主体的にプロジェクトに参加できるようになります。それにより住民の意見が反映されやすくなり、地域全体の結束力が高まると考えられます。また、地域外の支援者もプロジェクトに参加しやすくなり、広範な協力関係が築かれます。

NFTによる資金調達 NFT発行

NFTを通じてクラウドファンディングに代わる低手数料での資金獲得を実現し、事業推進のための原資を確保と意思決定方法の設計を行います。プロジェクトに必要な資金を迅速かつ低コストで調達する方法として、地域の特産品やイベントチケットをNFTとして販売することで、新たな収益源を確保できると言えるでしょう。

デジタル地域通貨の導入

地域金融機関を発行体としてデジタル地域通貨を作成し、NFTの裏付けを構築します。これにより、デジタル地域通貨の取引量増加による地銀ビジネスモデルの再興を目指します。デジタル地域通貨を導入することで、地域内での取引を活性化が期待できます。また地元企業の売上向上や雇用創出にも繋がると言えるでしょう。さらに観光客向けに地域通貨を利用した特典を提供することで、観光業の振興にも寄与します。

サブコミュニティ作成キットの展開

コミュニティや事業推進の原資確保、意思決定方法をパッケージ化し、東北各地域におけるNFTプロジェクトの立ち上げ支援を行います。NFTプロジェクトの立ち上げがマニュアル化されることで、東北各地域でプロジェクトを立ち上げやすくなり、観光地域をWeb3を使って話題性を作りやすくなります。

地域経済活動の主体としてのDAO

地域に展開したサブコミュニティを統括する「みちのくDAO」が、地域の経済活動の主体を担い、地域振興活動の管理と促進を行います。東北各地域のサブコミュニティを「みちのくDAO」がハブとなることで、より東北地方の多極化・分権化を進めることができます。

③みちのくDAOが目指すところ

みちのくDAOは、地域経済にリスクマネーを供給しつつ、地域通貨を通じて海外投資家を呼び込むことを目指しています。具体的には、以下のような取り組みが進められています。

クラウドファンディング代替サービスの構築

NFTや地域通貨を活用したクラウドファンディング代替サービスを地域資本で作成し、地域内での経済循環を促進します。

インパクト投資のエグジット・コミュニティの創出

投資のエグジット先として、DAOを利用したエグジット・コミュニティを構築し、地域での持続可能な投資活動を支援します。

地銀再興の手段としての地域通貨発行

地方銀行がステーブルコインを発行し、海外投資家を呼び込むことで東北の経済圏の拡大を目指します。

④地元の活性化を図るための地方創生DAOを実現している事例

4-1.山間部地域の持続可能な発展を目指す「Local DAO」

Local DAOは、デジタル村民によって自律的に運営される共同体です。地域住民とデジタル村民が協力し、地域の課題解決や新たな価値創造に取り組むことで、持続可能な発展を目指します。現在は、旧山古志村をモデル地域として推進しています。

Local DAOの第一弾「山古志DAO」では、21年12月に「電子住民票」という意味合いを含むデジタルアート「Nishikigoi NFT」を発行し、話題となりました。地域のシンボルとして親しまれている錦鯉をモチーフにしたこのNFTは、地元自治体の長岡市を公式パートナーとする自治体公認のNFTプロジェクトとなっています。第一弾セールにおいて1,500点がミントされ、発売からたった二ヶ月で約600万円の資金調達に成功しました。山古志はこのNFTを「共感と仲間の証」としており、NFTのホルダーを「デジタル村民」と呼んでいます。

また、22年3月には第二弾となるデジタルアート作品が発売されました。NFTを通して、国や性別、地位、物理的制約に関係なく、自分自身の想いや信念ともいえるモノの帰属先を自らが選択できるということを世界に伝えています。

4-2.複数自治体横断の地域創生コミュニティ「美しい村DAO」

群馬県が公表したDAOガイドラインの中にも、例としても挙げられている「美しい村DAO」は、これから長く継続して欲しいDAOの一つです。「美しい村DAO」とは、地方創生をDAO(自律分散型組織)で行う内閣府地方創生推進事務局 広域連携SDGsモデル事業の、「日本で最も美しい村デジタル村民の夜明け事業」による複数自治体の連合DAOとなっています。スタート時は、鳥取県智頭町と静岡県松崎町の二つの自治体から、ブロックチェーン技術を活用したNFT販売プラットフォーム開発やDAO自走のためのコミュニティ活動を開始しました。

事業概要は、ブロックチェーン技術に裏付けられたスマートコントラクトを構築し、DAO方式で管理する「デジタル村民コミュニティ」を創設するとしています。具体的な内容としては、デジタル村民証となるNFTの発行や、地方の魅力的なコンテンツを体験できる権利を含む地域資源NFTが購入でき、美しい村とデジタル村民をつなぐ、共創型地方創生プラットフォームとなっています。そしてデジタル村民証は、リアル村民と同じように村民向けサービスを受けられるなどの、特典を受けることができます。

地方では人口減少やそれに伴い文化の衰退や、自然環境の維持が難しくなってきます。そこでDAOのメンバーであるデジタル村民と地域のメンバーが共創し、美しい地域資源を活用したサービスによって、地方の活性化・関係人口の増加を持続的に続け、美しい村が持続可能な社会を実現するのが目的です。

また「日本で最も美しい村」連合サポーター有志で構成されるコンソーシアムの協力により、ブロックチェーン型スマートコントラクトプラグラムをDAO方式で管理し、加盟町村のNFT発行とデジタル村民のインセンティブをマネジメントします。

4-3.美しい棚田を後世に残すため新しい村作りに挑戦する「棚DAO」

棚DAOは、新潟県十日町市の「特定非営利活動法人地域おこし」の活動に賛同する人なら、誰でも参加することができる棚田を中心としたコミュニティです。会員権をNFT(非代替トークン)でデジタル化し、会員同士がコミュニケーションをとり、池谷集落の発展に自発的に関わるコミュニティを築くとともに、仲間を増やしながら都会の方々と協力して新しい形の村づくりを進めていくことを目指しています。

そしてノーコードWeb3プラットフォーム「Clubs」を開発するフレームダブルオー株式会社は、新潟県十日町市池谷・入山集落を拠点に、棚田保全等の活動を行う特定非営利活動法人地域おこし(以下、地域おこし)に対して、 Clubs を活用した web3導入サポートを提供し、棚DAOメンバー募集を2023年11月20日より開始しました。

棚DAOがある新潟県十日町市は、2004年中越大震災被災後6世帯13人になった集落が、地域おこし活動に取組み、若い移住者を迎え、2016年9月には11世帯24人にまで増えた「奇跡の集落」といわれる集落です。美しい棚田の風景を今に残しています。DAOによって集落が抱えている集落存続問題を解決するためには、地元住民だけでなく、地域外の関係者も含めた新しい村作りを進めていくとしています。

⑤まとめ

みちのくDAOは、東北地方の復興と発展を目指して、デジタル技術とブロックチェーンを活用した新しい地域経済モデルを構築しています。透明性や効率性の向上、コミュニティの参加促進など、多くのメリットを活かして、地域社会の発展に貢献することが期待されています。

みりのくDAOや他の地方創生DAOのように、地元を盛り上げて経済を活性化させるため、DAOを使った地域創生のプロジェクトが増えつつあります。今後さらにDAOを活用した地方創生の取り組みが広がる可能性があり、持続可能な地域経済の実現が期待されます。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。