デジタル技術が生命を生むと聞くと、まるでSFの世界のように思えるかもしれませんね。しかし、クリエイティブ集団 Transeedsはブロックチェーン技術を駆使し、約40週間という妊娠・出産体験を再現することで、新たなBABYを世界に送り出しました。それが「LOM BABY」というアートプロジェクトです。ブロックチェーンによる「存在証明」を活用し、まるで新たな命を生み出すかのような体験を提供しています。
これまでにもNFT(非代替可能トークン)の育成ゲームや成長するNFTというコンセプトは存在しました。しかしながら、LOM BABYはそのどれとも異なる、新しいタイプの育成可能なNFTです。以下ではこの「LOM BABY」について、詳しくご紹介します。
目次
- Transeedsのアートプロジェクト「LOM BABY」とは
- LOM BABYの体験
- LOM BABYの今後
- 「金」と「愛」を比較するような思考実験
- NFTを継続保有させるプロジェクト運営者の取り組み
- まとめ
①Transeedsのアートプロジェクト「LOM BABY」とは
「LOM BABY」とはデジタル世界での出産体験とブロックチェーンの存在証明を結びつけることで、独特の「デジタルDNA」を融合し、新しい「生命」を創造する体験を提供しています。プロジェクトは、クリエイターやエンジニアの国際的な集団Transeedsが主導しています。
プロジェクトの目標は「全く新たな生命体の誕生を実現する」ことで、既に120名を超えるユーザー(被験者と呼ばれています)が、妊娠や出産とは異なる新たな感動を体験しています。今年の5月には、最初の「BABY」がデジタル世界で誕生しました。これは「デジタル技術と人間の創造性が融合した、新たな出産体験」を象徴する出来事で、プロジェクトの開発チームによって特に強調されています。
さらに、公式サイトでは、NFTを活用して存在証明がなされたデータに対する「愛」を育むことが、人類の躍進的な発展への重要な使命と位置づけられています。これは多様性についての社会問題にも通じる重要なテーマであると強調されています。
世界的なアーティストであり、RTFKTの共同創設者であるBenit0氏も、「LOM BABYの親になることは、非常に魅力的な体験で、それを可能にするシステムが素晴らしい」と高く評価しています。
②LOM BABYの体験
「LOM BABY」の体験は、「Phase:MOM」、すなわち母親の期間という初期段階からスタートします。これは実際の妊娠体験を模倣し、ユーザーがデジタル世界で妊娠する体験を提供します。ブロックチェーンを介してユーザーはMOMと繋がり、人間の妊娠期間と同様の約40週間を経ると、「LOM BABY」がデジタルデータとして誕生します。
MOMは多様なDNAを持っており、それらのDNAはBABYに遺伝します。性別や肌の色、宗教観を問わず、また天使や悪魔、エイリアンといった人間以外の存在とも共存し、一緒に生活することが可能です。そして、MOMの価値はBABYに受け継がれ、MOMの価値が高いほど、BABYが誕生した際には豊かな装飾や特殊な形態を持つ可能性があります。
「LOM BABY」に参加するには、まず「LOM BABY」の公式サイトにアクセスし、「Register」ボタンをクリックします。その後、必要な情報を入力してMOMとの契約を結びます。これにはTwitterID、名前、ウォレットアドレス、性別、年齢、主な仕事の情報が必要となります。このプロセスを経ることで、自身がパートナーとなり、新たな生命体の誕生に関与することが可能となります。
③LOM BABYの今後
LOM BABYはこれからも世界中の人々に新しい体験を提供していくとしており、デジタル技術とアートの融合を通じて、未来的な妊娠・出産体験を可能にするとしています。またLOM BABYという新たな生命体との生活を介して、人々のライフスタイルにも新たなインスピレーションをもたらすことを、目指しているとのことです。LOM BABYは人類の可能性の拡張をもたらそうとしています。
【プレスリリース】
今夜から開催予定のLOM BABY × CNF 1st Anniversary SALEについての詳細と、
ERC-6551(TBA)に対して想う可能性。その最新システムの発表予定について掲載させていただきました。ぜひ、ご覧ください🧩https://t.co/CUEpXGePqH
— LOM BABY (@LOMBABYnft) July 7, 2023
LOM BABYは2022年のプレセール以降、様々なシステムやエンタメ性を組み込んでおり、まったく新しいWeb3体験をこれから提供できるとしています。パブリックセールから提供されるMOMには、「JAM」というウォレットコネクト型のAIシステムが導入されるそうです。BABYの誕生体験を、独自に開発した「感情」にコミットしたAIエンジンによって実現するとしています。また、パブリックセール後に、「ストーリー型」と「コミュニケーション型」のAIエンジンを搭載したNFTの販売を実施する予定です。
④「金」と「愛」を比較するような思考実験
「LOM BABY」プロジェクトは、ブロックチェーンとアートが融合した全く新しいユーザー体験を提供します。このプロジェクトは、「データに存在を付与できる」かという課題に挑んでおり、人間と同じ妊娠期間である十月十日を利用し、デジタル空間で「生命」を誕生させる試みを行っています。
ブロックチェーンにデータが書き込まれると、その「BABY」はデータとして半永久的に存在し続けます。そして、そのデータに愛情を感じる人々も存在しますが、その愛情を証明することは容易ではありません。
この「BABY」はOpenSeaにリストすることが可能で、つまりNFTとして出品して現金化することも可能ということになります。人間と同じ妊娠期間を経て誕生したBABYを育てるか、それとも「Juicer」にかけて即時に金銭に変換するか、という選択を持つことができます。
ここでは、「愛」と「金」を比較する思考実験が提示されています。一部の人々はNFTをただのデータとして捉え現金化、つまり「金」を選びます。また、BABYを「Juicer」にかけると「チケット」が得られ、これによって金銭を得られる「墓場ゲーム」の招待状をもらうこともできます。
BABYを現金化してしまうのか、それともBABYを育てて本来の姿に変容させ、特別な存在にするのかという選択をすることが、このプロジェクトが提供する新しい体験の一部です。これは、単にNFTを所有するだけでなく、NFTという新しい形の資産を通じて「生命」を創り、育て、そしてその価値を最大限に引き出すという、全く新しいパラダイムを提示しています。
⑤NFTを継続保有させるプロジェクト運営者の取り組み
「LOM BABY」プロジェクトは、従来のデジタルアートを進化させた新しい形の生命体を創り出すというアートからアートを生むというコンセプトを掲げています。その核となるのが、NFT(非代替性トークン)というブロックチェーン技術を用いたデジタルアートです。このNFTを生命体として表現することで、「金」と「愛」の天秤にかけ、所有者がその生命体を手放すかどうかという決断を迫っています。
NFTは当初、投機的な資産として注目されていましたが、昨今ではNFT所有によって特典や独自の体験を提供する「ユーティリティ」の側面が注目されるようになってきています。「LOM BABY」のようなプロジェクトは、こうしたNFTの新たな可能性を追求しながら、一方でデジタルアートという新しい領域を拡大し、その中で生命体としての存在感を創り出す試みを行っているのです。
このように一点一点が特別なNFT以外にも、ジェネラティブNFTと呼ばれるNFTも存在しています。これは、基本キャラクターが定まっており、さまざまなパーツやアイテムを自動的に組み合わせて作り出される、何百種類もの統一されたアートNFTです。大量販売することでNFTプロジェクトが資金を得る手段ともなっています。
しかし、NFTがリリース後に大量に低価格で出品されると、そのプロジェクトの期待値が下がり、DAO運営やプロジェクト全体の進行に悪影響を及ぼします。そのため、プロジェクト運営は所有者がNFTを継続的に保有し続けることを望んでいます。そのために、所有者特典を提供するなど、NFTの出品を抑制する工夫を行っているのです。
⑥まとめ
「LOM BABY」は、ブロックチェーン技術を活用して、約40週の妊娠・出産の体験を通じて新たなデジタルアート、すなわち「BABY」を誕生させるユニークなプロジェクトです。多様なDNAの組み合わせによって構成されたBABYは、40週間を経て誕生し、その成長をユーザー自身が体験することができます。
従来のNFTには育成要素を含むものも存在しましたが、「LOM BABY」はそれをさらに一歩進め、BABYを最後まで育て上げるか、それとも金銭的な価値に換えるかという選択を所有者に求めます。これは、従来のNFTやデジタルアートには見られない新しい試みであり、ユーザーの思考や価値観を問う挑戦的な内容を含んでいます。
このプロジェクトにはすでに120人以上が参加し、現在のところBABYがリスト(販売)されることはほとんどありません。これは、「LOM BABY」が提供する新たな体験が、参加者にとって大きな魅力となっている証拠でしょう。デジタルアートとブロックチェーン、そして新しい生命体の誕生という全く新しい経験に興味を持った方は、ぜひ「LOM BABY」の公式サイトを訪れてみてください。
立花 佑
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