Ledgerが PoWETHをサポートしない理由 | マージ関連の詐欺に警戒を

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いよいよ、イーサリアムの大型アップデート「The Merge(マージ)」の日が近づいている。イーサリアムのマージを心待ちにしていた暗号資産ファンも多いのではないだろうか?本稿では、今回のマージにおける注意点やLedgerが懸念するイーサリアムPoWのリスク、セキュリティ面での問題を解説する。

目次

  1. イーサリアムの「The Merge(マージ)」とは?
  2. Ledgerユーザーへの影響と注意点
  3. イーサリアムPoWとは?懸念されるリスク
  4. リスクを回避する方法

1. イーサリアムの「The Merge(マージ)」とは?

「The Merge(以下、マージ)」とは、イーサリアムの大型アップデートである。イーサリアムが計画するアップデートの中でも、今回のマージは歴史的な変化となると予想されている。開催日は、2022年9月15日前後を予定。この大型アップグレードの目的は、コンセンサスアルゴリズムと呼ばれるシステムの土台の変更だ。現在採用しているPoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へと移行される。

PoWとは、コンピューターで一番最初に計算を解いた人がこのブロックのマイナーになる仕組みだ。この方法では、計算の過程で莫大な電力がかかることが問題視されてきた。一方のPoSでは、保有する暗号資産の量に応じてブロックを承認する権利が与えられる。このPoSこそが、マージによってイーサリアムの新たな基盤となるのだ。

2. Ledgerユーザーへ起こりうる悪影響と3つの注意点

Ledgerユーザーに限らず、このマージの影響を心配する人も多いだろう。事実、世界が注目する大きなイベントであり、イーサリアムにとっても歴史的なイベントだ。

まず、断言できることは、Ledgerに保管されているイーサリアムやトークン、NFTは、マージ中でも完全に安全である。セキュリティ面で悪影響を受ける心配はない。一方で、Ledgerとして注意喚起しなければならない点もある。以下では、3つの注意点を紹介する。

まず、このマージを利用した詐欺の危険性だ。例えば、マージ関連のエアドロップ詐欺やマージを理由にリカバリーフレーズの入力を求める手法が考えられる。マージにおいてエアドロップが行われることは、絶対にない。そして、リカバリーフレーズの入力が必要となることもあり得ない。

改めて確認しなければならないことは、Ledgerデバイスのセットアップ時に取得した「リカバリーフレーズ」は絶対に他者に教えてはならない点だ。リカバリーフレーズは、人間が解読できる形で表記された秘密鍵である。秘密鍵を持つ人は、紐付くアカウントの資産を自由に引き出すことができる。つまり、詐欺師にとってリカバリーフレーズは何としてでも手に入れたい鍵である。リカバリーフレーズさえ入手すれば、ウォレット内の資産を手にしたも同然だからだ。

2つ目に、マージ中の資産移動を控えることだ。このような大型アップデートでは、あらゆる可能性が考えられる。例えば、マージ中にイーサリアムをウォレット間で移動した場合、テクニカルな問題により資産が紛失される場合もあり得る。マージが完了して、安全性が確認できるまで、イーサリアムを始めNFTの移送は控えることをおすすめする。

3つ目に、Ledger Liveアプリからイーサリアム関連のトランザクションと「Discovery」セクションが一時的に利用停止となる。もちろん、メタマスクなどその他サードパーティを通してLedgerウォレットを接続したりステーキング等を利用することは可能だ。Ledgerは、イーサリアムのマージ後にイーサリアムが安全に作動することを確認した上で、Ledger Liveアプリを利用可能とする。

3. イーサリアムPoWとは?懸念されるリスク

イーサリアムは、マージによってPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へと移行する。つまり、現在採用されているPoW(プルーフ・オブ・ワーク)の事実上の廃止となる。ここで、PoWを存続したいと考える人が、イーサリアムPoWという形でクローンのイーサリアムネットワークを引き継ぐことが発表されている。

イーサリアムPoWチームの発表によると、イーサリアムPoWは、マージ後24時間以内に発足する予定だ。

一つの懸念点としてあげられるのが、PoWのハッシュレートへの懸念だ。ハッシュレートとは、ブロックをマイニング(採掘)する際に必要となるコンピューターの計算力を意味する。一般的に、ブロックチェーンの情報を書き換えてお金を盗むことは不可能だ。なぜなら、ブロックチェーンでは、1人の悪意のある人がトランザクションを書き換えた場合でも、その他9名の人が正しい情報を持っていることが証明できれば、捏造に失敗するからだ。

一方で、悪意のある人が半数以上いた場合は上記が理論上成功することを意味する。悪意のあるグループまたは個人により、ネットワーク全体のハッシュレートの 51%以上をコントロールし、不正な取引を行うことを「51%攻撃」と呼ぶ。

ハッシュレートとは、すなわちセキュリティを意味する。ハッシュレートが高ければ高いほど、取引記録の入ったブロックを生成する難易度が上昇し、ネットワークのセキュリティが高くなる。そして、51%攻撃を実行することが難しくなる。

イーサリアムPoWに関して、マージ後の立ち上げ後、どのくらいのハッシュレートを持つようになるのか不透明だ。もしハッシュレートが高くなければ、51%攻撃にさらされる危険性が高まる。当然、ハッカーたちはその隙を逃さないだろう。

4. リスクを回避する方法

まず、マージ関連の詐欺が多く発生することが予想される。エアドロップ等に騙されず、リカバリーフレーズは絶対に他者に教えてはならない。

次に、マージ中にトランザクションのトラブルが発生する可能性から、イーサリアムやERC20トークン、NFTのトランザクションは控えることだ。特に、多額の資産や高額なNFTは移動せず、Ledgerウォレット内に保管することを強くおすすめする。

イーサリアムPoWがローンチされた後、Ledgerデバイスとメタマスクなど第三者のウォレットを接続することで、イーサリアムPoWへのアクセスが可能となる。しかし、イーサリアムPoWが正しく安全に稼働していることを確認することが最優先だ。

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Kano Terao Ledger 編集者

海外移住を決意し6年間フリーランス翻訳家・ライターとして活動。2017年ビットコイン購入をきっかけにブロックチェーンとWeb3の魅力に目覚め、アルトコインを中心にトレーディングを開始。2021年8月からハードウェアウォレットを販売するLedger社で、アプリやウェブサイトの翻訳とコンテンツ作成を担当。最近は、海外NFTの収集とAMAへの参加が日課。

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