今回は、イーサリアムのスケーリングソリューションについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- セカンドレイヤーとは?
1-1.セカンドレイヤーの概要
1-2.セカンドレイヤーのメリット - セカンドレイヤーの代表的な仮想通貨
2-1.ポリゴン(MATIC)
2-2.ロニン(RON)
2-3.イミュータブルX(IMX)
2-4.ループリング(LRC) - まとめ
近年、仮想通貨の利用量が増加して送金手数料(ガス代)が高騰するなかで、スケーリングソリューションである「セカンドレイヤー」が注目されています。セカンドレイヤーセカンドレイヤーは、ブロックチェーン上に重なるレイヤーのうち2層目にあたるレイヤーで、その大きな目的はレイヤー1のスケーラビリティ問題の解決にあります。
仮想通貨(暗号資産)市場には、ビットコインやイーサリアムなど複数のブロックチェーンがありますが、それぞれ独自の「レイヤー2(セカンドレイヤー)」の研究開発が進んでいます。また、セカンドレイヤーに関連する仮想通貨の注目度も高まっています。そこで、今回は代表的なセカンドレイヤーとその仮想通貨を紹介します。
①セカンドレイヤーとは?
まずは、セカンドレイヤーとは何か、その基本的な事項を説明します。
1-1. セカンドレイヤーの概要
セカンドレイヤーとは、メインとなるブロックチェーンの外部(オフチェーン)に、メインチェーンと接続する形で存在するネットワークのことです。セカンドレイヤー上で取引の実行・処理を行い、ブロックチェーンにその状態情報を格納することで、ブロックチェーンの負荷を減らし、より高速な取引を実現します。
1-2. セカンドレイヤーのメリット
イーサリアムのブロックチェーンは、仮想通貨ETHの決済に用いられたり、NFTの作成・取引に使用されたり、分散型金融(DeFi)のトランザクション処理が動作するなど、多用途に使用されています。しかし、イーサリアムは1つのブロックの中にトランザクションデータを書き込める容量が限られており、大量の取引が発生すると、送付遅延、手数料増加などの問題が発生します。これがスケーラビリティ問題です。
実際にNFTを鋳造(発行)する際のガス代はイーサリアムで50ドル~80ドル必要であるのに対し、イーサリアムのレイヤー2であるポリゴンは0.01ドルと5,000倍以上もの違いがあります。ユーザーとしては、取引手数料を軽減し、取引時間を短縮できるメリットがあります。
②セカンドレイヤーの代表的な仮想通貨
次に、代表的なセカンドレイヤーとその仮想通貨について紹介します。
2-1. ポリゴン(MATIC)
ポリゴン(MATIC)は、イーサリアムのセカンドレイヤー・ネットワークソリューションとして開発されたブロックチェーンです。高速処理が可能な並列ブロックチェーンを作成し、メインのイーサリアムブロックチェーンにリンクしているほか、独自のPoS(プルーフ・オブ・ステーク)ブロックチェーン上で取引を処理することで、取引手数料の大幅な削減を実現します。
ポリゴンは、MATICサイドチェーンを利用して、さまざまなイーサリアムベースの分散型アプリを実行および連携するため、イーサリアムや他のネットワークよりもはるかに安価に、そして高速にトランザクションを実行することが可能です。
前述したように、イーサリアムの1/5000以下のガス代でNFTの運用が行えるため、OpenSeaなどの世界最大手のNFTマーケットプレイスや最大の分散型取引所Uniswap(ユニスワップ)など、多くのNFTマーケットプレイスで採用が進んでいます。
また、2021年は一貫した上昇を見せるなど、投資銘柄としても注目を浴びています。
MATICの仮想通貨としての基本スペックは以下の通りです。
ティッカーシンボル | MATIC |
現在の価格(22年2月22日現在) | ¥156.89 |
時価総額 | ¥1,181,958,612,711 |
時価総額ランキング | 16位 |
循環サプライ | 約74.6億MATIC |
発行上限 | 100億MATIC |
2-2. ロニン(RON)
ロニンは人気NFTゲームの「Axie Infinity」(アクシー・インフィニティ)を手がけるSky Mavis社によって開発された、イーサリアムサイドチェーンです。ロニン上のDEX「Katana」を利用することで、Axie Infinityのユーザは外部の取引所を使用することなく、Axie Infinityのエコシステム内で使用されている2つのトークン(AXSとSLP)を米ドルにベックされたステーブルコインであるUSDCやWappedイーサリアムに交換することが可能です。
RONの仮想通貨としての基本スペックは以下の通りです。
ティッカーシンボル | RON |
現在の価格(22年2月22日現在) | ¥267.34 |
時価総額 | ¥39,656,892,944 |
時価総額ランキング | 179位 |
循環サプライ | 約1.48億RON |
発行上限 | 10億RON |
ロニンチェーンはPoS(プルーフオブステーク)のコンセンサスメカニズムに基づいており、バリデーターは一定数の仮想通貨RONをステークし、ブロックの検証作業の報酬として新たに発行されたRONを得ます。RONは、ロニンブロックチェーンのエコシステムで使われるガバナンストークンでもあり、RONは手数料の支払いや、今後ロニンチェーンに構築される新しいゲームやプロダクトの安全性を保障するために使用されます。
2-3. イミュータブルX(IMX)
ImmutableX(イミュータブルエックス)は、Immutable社によって開発されたNFTに特化したイーサリアムのレイヤー2ネットワークです。Gods Unchainedや、Guild of GuardiansやilluviumなどのNFTゲームが ImmutableXを活用しています。Immutable Xはガス代をゼロとしながら、最大秒間9,000トランザクション処理を実現します。
Immutable XはZK-Rollupを採用しており、レイヤー2上でのトランザクションをまとめ、証明可能な形式でステータスのみをL1に記録します。イーサリアムのセキュリティを活用でき、不正・改ざんに対してより強い耐性を確保します。
仮想通貨IMXはImmutable Xのガバナンストークンであり、ステーキングにより取引手数料の一部を受け取ることができます。IMXの仮想通貨としての基本スペックは以下の通りです。
ティッカーシンボル | IMX |
現在の価格(22年2月22日現在) | ¥209.52 |
時価総額 | ¥43,117,331,449 |
時価総額ランキング | 131位 |
循環サプライ | 約2.35億IMX |
発行上限 | 20億IMX |
2-4. ループリング(LRC)
Loopring(ループリング)はイーサリアムのレイヤー2ソリューションで、ZK-Rollupを使用して高スループット、低コストの取引と支払いを可能にします。Loopringはイーサリアム上にノンカストディアルかつオーダーブックベースの分散型取引所を構築できるツールを構築しています。zkRollupは複数のトランザクションをオフチェーンで処理してゼロ知識証明を作成し、検証可能な状態でオンチェーンにアップロードします。Loopringはイーサリアムのセキュリティを利用しながら、大量のトランザクションの処理コストを削減できます。
仮想通貨LRCはLoopringのガバナンストークンであり、ステーキングによりLoopring上に構築されたDEXで発生した取引手数料の70%を受け取ったり、マーケットメイカーが手数料の割引を受けるために使用することができます。
LRCの仮想通貨としての基本スペックは以下の通りです。
ティッカーシンボル | LRC |
現在の価格(22年2月22日現在) | ¥84.70 |
時価総額 | ¥113,672,832,883 |
時価総額ランキング | 75位 |
循環サプライ | 約12.45億LRC |
発行上限 | 13.74億LRC |
③まとめ
イーサリアムにおいて、セカンドレイヤーはブロックチェーンの性能や実用性を高めるために必要不可欠な存在となっています。ポリゴンなどのレイヤー2関連の仮想通貨は、海外仮想通貨取引所で購入する必要がありますが、その為にもCoincheckなどで仮想通貨を購入できるよう口座開設すると良いでしょう。
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中島 翔
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