宝石ECショップにトレーサビリティにブロックチェーンを採用!消費者と原産地を裏切らない仕組みとは

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ブロックチェーン技術によるトレーサビリティの採用は、ブランド品業界において珍しい事例ではありません。特に、LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)などの高級ブランドでは、この技術の活用が進んでいます。宝石取引は複雑なサプライチェーンを通じて行われ、消費者に対して原産国の正確な情報提供が求められます。

このため、ブロックチェーンを基盤としたトレーサビリティシステムの構築が不可欠となります。今回は、ブロックチェーンを用いて宝石の品質や責任ある調達を記録するECブランドショップ『RURI.shop』に注目し、その仕組みを詳しく解説します。

目次

  1. 株式会社RURI Social Innovationとは
  2. 宝石市場が抱えている課題
  3. サプライチェーンの透明性を高めたECブランド「RURI」とは
    3-1. RURIのECショップとは
    3-2. RURI.shopオープンまでの経緯と今後の展望
  4. JMACが出資・支援するブロックチェーンプラットフォーム「Tracified」とは
    4-1. Tracifiedよる楯の川酒造株式会社「閃光」のトレーサビリティ
  5. ブロックチェーンによる透明化で生産者へ利益還元
    5-1. ブロックチェーンを使って資産者の利益を上げるには
  6. まとめ

①株式会社RURI Social Innovationとは

株式会社RURI Social Innovationは、東京・銀座を拠点に、2021年にスタートした天然宝石とジュエリーのグローバルブランドです。同社は、スリランカをはじめとする宝石原産地と世界の消費者とを繋げ、持続可能な方法での生産・取引を重視するブランドとして知られています。

また、RURIは、社会起業家、宝石デザイナー、宝石鑑定士、宝石サプライチェーンに精通した工学博士、ブロックチェーン企業代表者など、多様なバックグラウンドを持つプロフェッショナルたちによって運営されています。

RURIは、単に製品が持続可能であると主張するだけでなく、その証明として、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティで、真の透明性を持ったブランドであり続けることを目指しています。

②宝石市場が抱えている課題

宝石の取引は、原産地から消費地まで複数の業者が介在し、複雑なサプライチェーンを形成しています。専門家でない限り、宝石の価値を正確に判断することは難しく、流通する宝石の多くは原産地が不明確です。これに加え、環境破壊や児童労働、品質改編による処理、資金洗浄や偽装された鑑別書など、多くの問題が存在しています。これらの課題は、消費者にとっては宝石購入の大きなリスクとなっています。

ダイヤモンドは大企業による厳格な管理がなされているのに対し、カラーストーンはスリランカなどで市民レベルの小規模鉱山から産出され、そのサプライチェーンはより複雑です。スリランカでは、鉱夫たちの努力により環境に配慮した採掘が行われていますが、彼らの収入は依然として低いのが実情です。鉱山経営者たちも、宝石の専門知識や市場へのアクセスが限定されており、彼らが採掘した宝石は世界市場で意外と高い値段で取引されているのが現状です。

③サプライチェーンの透明性を高めたECブランド「RURI」とは

RURIは、世界に名だたる宝石産出国、スリランカでメンバーが駐在・出張し、鉱山やカッター、ジュエラー、鑑別機関、政府機関との協働を通じ、法令順守、倫理性、透明性、品質の高基準を確立したサプライチェーンを構築しています。

直接現地で宝石の評価・調達が行われることで、品質と価値が正確に管理され、消費者に確実に届けられます。また、各宝石が最終的にどの価格で販売されたかを原産国に報告し、透明性のある公正取引を促進しています。

3-1.RURIのECショップとは

RURIのサプライチェーンとオンラインショップでは、公共ブロックチェーンを基盤にした先進のトレーサビリティ技術が導入されています。この技術開発は、トレーサビリティに特化したブロックチェーン企業、Tracified Technologies社との協力により実現しました。

サプライチェーンにおいて、宝石が採掘、加工、鑑別、取引、評価、販売される各工程で、多様な品質や社会背景情報が収集されます。これらのデータは、タイムスタンプ、ジオコーディング、暗号化、検証、所有権の確定を経て、パブリックブロックチェーンに記録・保存され、RURI.shopでの購入者に適切に開示されます。

RURIで取り扱う宝石情報はブロックチェーンに記録され、それにより「双子の宝石(デジタルツイン)NFT」が生成され、世界で唯一無二の証明となります。これにより、宝石とNFTのペアが消費者に提供され、資産化が可能となります。

この技術は、Tracified Technologies社とRURIの技術提携により、「Tracified」プラットフォームとデジタルツインNFTが結合されたものです。RURIは、この双子の宝石を「GEMini™」と命名し、顧客には真実に基づく豊かな宝石体験とともに、価値ある資産としての保有が可能になります。

3-2.RURI.shopオープンまでの経緯と今後の展望

RURIは長年にわたり、宝石の真の価値を追求してきました。宝石は、その美しさと社会へのポジティブなインパクトにより、経済的、精神的、社会的な幸福を向上させる特別な存在とされています。

RURIは5年前から準備を進め、2019年にスリランカ政府を訪れ、その支援を受けることができました。スリランカのコミュニティと連携し、持続可能な方法での宝石生産と、それを市場に届けるための最新技術の開発に努めてきました。

しかし、コロナの影響でスリランカは財政危機と政情不安に見舞われ、採掘に必要な資金や燃料の確保が困難な状況となりました。これに対応するべく、RURIは2023年1月に法人設立を果たし、スリランカでの活動を再開しました。そして、遂にRURI.shopの開設を迎えることができました。

④JMACが出資・支援するブロックチェーンプラットフォーム「Tracified」とは

Tracified Technologies 株式会社は、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティにより、「本物」の品質を証明し、中小企業や生産者が消費者に安心と信頼の品質を発信することを目的としています。スリランカ生まれのTracifiedは、2020年に東京に本社を構え、新たなスタートを切りました。そして、株式会社日本能率教会コンサルティング(JMAC)が2021年より支援を始めています。

JMACは、先進技術の商業化やスタートアップ支援に、360ipジャパン株式会社と共同で取り組んでおり、研究開発型スタートアップの育成を通じて社会課題の解決を目指しています。

Tracifiedはこのスキームの中でJMACが立上げより参画し、出資・支援を進めている研究開発型の、スタートアップの1号となっています。

4-1.Tracifiedよる楯の川酒造株式会社「閃光」のトレーサビリティ

楯の川酒造株式会社が2022年11月10日より、発売を開始した日本酒「閃光(せんこう)」に関して、ブロックチェーンプラットフォーム「Tracified」を活用し、日本酒の生産に関するトレーサビリティを証明する取り組みを開始しました。

この取り組みにより、「閃光」の生産過程が透明化され、消費者は安心して高品質な日本酒を楽しむことができます。トレーサビリティ情報の確認は、商品ラベルのQRコードから簡単に行えます。

「閃光」は、楯の川酒造が新しい日本酒の時代をつくり、新たなる価値を見出すブランド「SAKERISE(サケライズ)」として展開している商品です。

⑤ブロックチェーンによる透明化で生産者へ利益還元

多くの製品は複雑なサプライチェーンを持ち、原産地が不明確なことも少なくありません。これにより、環境破壊や児童労働の問題が潜んでいることがあります。ブロックチェーンの活用は、これらの課題に対して有効な解決策となりうるでしょう。

5-1.ブロックチェーンを使って資産者の利益を上げるには

ブロックチェーンは、分散型台帳と暗号化技術を駆使し、情報の透明性と信頼性を確保することが可能です。これを活用することで、生産者に対する利益の還元と市場競争力の強化が図れます。

・透明性とトレーサビリティ
ブロックチェーンの利用により、製品の生産過程や供給チェーンの各工程が明確になり、透明性とトレーサビリティが向上します。これによって、生産者は製品が市場に届くまでの流れを正確に把握し、重要な情報を消費者と共有できます。

・スマートコントラクトと中央集権性の排除

ブロックチェーンは、スマートコントラクトというプログラム可能な契約の実行プラットフォームを提供します。これを利用することで、生産者と消費者や他の関係者間の契約や取引が効率化されます。さらに、利益還元の条件や支払いスキームのプログラムも可能です。

中央集権的な機関や第三者を介さず、分散化されたネットワーク上で取引や情報の管理が可能になるため、生産者は消費者と直接関係を築き、中間コストを削減できます。これにより、生産者はより多くの利益を享受できるのです。

・データのプライバシーとセキュリティ
また、ブロックチェーンは強固なセキュリティ機能により、データの改ざんを防ぎます。取引情報は暗号化され、安全に保護されるため、悪意のある行為や不正取引からの保護が期待できます。システムの運用は自動化され、人の手が介在することなく稼働し続けます。

ブロックチェーンのトレーサビリティ導入により、仲介業者の削減が可能となり、生産者の収益向上が期待できます。ただし、全ての組織がブロックチェーンを導入できるわけではなく、ブロックチェーン企業との協力や組織の柔軟性も重要です。

⑥まとめ

トレーサビリティのブロックチェーン導入は、ハイブランドだけでなく宝石やお酒、コーヒーやカカオ豆といった食品にも活用されるようになりました。特に国境を跨ぐ原材料や製品などのサプライチェーンは複雑であり、生産者の利益が少なかったり、持続可能な生産が難しい状況にあったりします。

消費者も生産元の情報にアクセスでき、安心して商品を選べるようになります。ブロックチェーンの活用は今後もサプライチェーンの透明化に大きく期待できると言えるでしょう。

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立花 佑

自身も仮想通貨を保有しているWebライターです。HEDGE GUIDEでは、仮想通貨やブロックチェーン関連の記事を担当。私自身も仮想通貨について勉強しながら記事を書いています。正しい情報を分かりやすく読者の皆様に伝えることを心がけています。