相場の値動きの特徴を「6つの基本法則」で説明!暗号資産でも使えるダウ理論とは?

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今回は、ダウ理論について、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. ダウ理論とは
  2. ダウ理論の6つの基本原則
    2-1.価格は全ての事象を織り込む
    2-2.トレンドは短期、中期、長期の3つに分けられる
    2-3.主要トレンドは3段階から形成される
    2-4.価格は相互に確認される必要がある
    2-5.トレンドは出来高でも確認されなければならない
    2-6.トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する
  3. ダウ理論はチャートで描くとわかりやすい

暗号資産(仮想通貨)は投資対象としての歴史は浅いものの、市場参加者の上昇への期待や下落へのヘッジなどが混在して値動きが形成されているという点で、相場の考え方は伝統的な市場と共通する部分があります。

株式だろうとFX(外国為替市場取引)だろうと投資家心理には普遍性があり、著名なトレーダーや投資家が導き出した理論は暗号資産にも通用することがあります。ここではチャート分析の手法として重要な「ダウ理論」について紹介したいと思います。

①ダウ理論とは

ダウ理論は、19世紀後半に米国の証券アナリストであるチャールズ・ダウ氏によって考案されました。ダウ氏は、金融専門紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」を創刊し、1896年にはダウ・ジョーンズ工業株平均株価を開発した人物です。

ダウ理論は、相場の値動きの特徴を「6つの基本法則」で説明しています。それぞれ見ていきましょう。

②ダウ理論の6つの基本原則

1. 価格は全ての事象を織り込む

これは、マーケットで飛び交う様々な材料は既に価格形成に織り込まれているという意味です。例えば、金融政策や経済指標、高官の発言や、地政学リスク、政治的なイベントなどがあります。

マーケット関係者が知ることができる情報は全て現在の価格に反映されているため、将来の価格予想の参考にならないという意味になります。これは、ニュースなどのファンダメンタルズから株価予測は不可能であり、超過リターン(リスクに見合うリターンを上回るリターン)は見込めないとする「効率的市場仮説」と似ています。

言い換えると、ダウ理論はテクニカル分析を重視していると受け取ることができます。

2. トレンドは短期、中期、長期の3つに分けられる

次の原則は「トレンドは短期、中期、長期の3つに分けられる」ということです。おおまかに、以下のようなスパンを想定できます。

  • 短期トレンド:数時間から1か月くらい
  • 中期:1か月以上から数か月
  • 長期:1年以上

長期の上昇トレンドの中に中期の下落トレンドが存在し、中期の下落トレンドの中に短期の上昇トレンドが存在するという構造となります。現在のトレードがどの長期・中期・短期トレンドのどの部分に該当するかをチェックするといいでしょう。

3. 主要トレンドは3段階から形成される

ダウ理論は、主要なトレンドを3つのフェーズにわけています。

  1. 先行期
  2. 追随期
  3. 利食い期

「先行期」は、底打ちと見る投資家が早めに仕掛けていくフェーズです。この段階では下落トレンドに対して、徐々に買い始める格好となるため、価格への影響は限定的です。市場ではまだ下落トレンドが継続していると思う投資家が多数派なため、売り圧力が残されています。目利きが難しいため、一般的な投資家がこのタイミングで買いを入れるのは困難です。

次は「追随期」です。上昇トレンドが明確に出始め、ニュースでもポジティブな材料が報じられ、多くの投資家が参入するフェーズです。このタイミングで価格が大きく上昇しやすくなります。トレンドフォロー型の投資家はこのタイミングで参入することが多いでしょう。

最後は「利食い期」です。誰でもわかるほど価格が変動する時期で、多くの初心者の投資家がエントリーします。しかし同時に、先行期でポジションを保有した投資家が利食いを始めます。トレンドの終了が近づいており、この時期の購入は高値掴みとなりやすいため、初心者の方は利食い期に手を出していないかどうか、チェックして頂くといいでしょう。

4. 価格は相互に確認される必要がある

これは、市場の様々な数字には相関関係があるという考え方です。ダウは特に、アメリカの「工業株平均株価」と「鉄道株平均株価」の相関性について研究しました。景気が良ければ、生産が増加し、また、輸送も増える考えられるため、「工業株平均株価」が上昇すると、「鉄道株平均株価」も併せて上昇するといった動きになります。

ビットコインの場合、NYダウやゴールドと相関するといった見方もありますが、曖昧な状況です。私個人はビットコインを独立したプロダクトに近いと考えており、他の資産との相関性をこじつけて考えるのは現段階で難しいと見ています。一時的に相関したかと思えば、すぐに逆になることもあります。

ビットコインにこの原則を当てはめるには、まだ研究が必要です。

5. トレンドは出来高でも確認されなければならない

個人的にはこの原則をとても重視しています。出来高を伴うとトレンドが継続しやすく、出来高が少なければトレンド転換の可能性が高いという意味です。上昇・下降トレンドのそれぞれについて、出来高は以下のように変化します。

  • 上昇トレンド時:価格上昇時に出来高も増加、出来高の減少は価格下落を示唆
  • 下降トレンド時:価格下落時に出来高が増加、出来高の減少は価格上昇を示唆

これはトレンド転換の判断材料にもなります。例えば、上昇トレンドにおいて徐々に出来高が減少している場面では、上昇圧力が弱まっていると見て下降トレンドに転換する可能性が高いと判断できます。チャート値動きと出来高の関係性をチェックして、相場の転換を考えることが大切です。

6.トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する

Uptrend
この原則はチャートの値動きに基づいており、転換シグナルが出るまではそのトレンドが続くという意味です。上昇トレンドの場合は、高値と安値を切り上げているかどうかが、トレンド継続の判断材料となります。反対に下降トレンドの場合、上値と安値を切り下げる動きとなります。

つまり、上昇トレンドで安値を切り下げたり、高値を更新できなかった場合はトレンドの終了と判断する考え方になります。この原則を活かして「トレンドが続く限りポジションをホールドし、トレンド転換を確認したら決済する」といった戦略が考えられます。

③ダウ理論はチャートで描くとわかりやすい

ダウ理論の理解を深めるためにも、ビットコインやイーサリアムの実際のチャートで出来高やラインを使ってトレンドを確認してみると良いでしょう。暗号資産は上下の値幅が大きいため、難しいようだったらドル円などFXのチャートでまずは行っても良いと思います。

ダウ理論は割とシンプルですが、これだけで勝てるほど相場は甘くありません。トレードにおいて、色々なテクニカル分析を組み合わせる中でダウ理論を活かして頂くといいでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12