東芝の法人向けブロックチェーン「DNCWARE Blockchain+」に期待されるもの

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今回は、東芝の法人向けブロックチェーン「DNCWARE Blockchain+」について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 東芝デジタルソリューションズ株式会社
    1-1.東芝デジタルソリューションズの概要
    1-2.東芝デジタルソリューションズが取り扱うテクノロジー
  2. 「DNCWARE Blockchain+」とは
    2-1.「DNCWARE Blockchain+」の概要
    2-2.「DNCWARE Blockchain+」開発の背景
  3. 「DNCWARE Blockchain+」の特徴
    3-1.信頼性を保ちつつ企業間を自由につなげられる
    3-2.すべての変更を記録することができる
    3-3.記録の改ざんが極めて難しい
    3-4.高い信頼性を実現している
    3-5.アプリケーションの開発が簡単
    3-6.アクセス権の設定が可能
  4. 「DNCWARE Blockchain+」から期待されるもの
    4-1.契約事務の電子化への活用
    4-2.本人性の確認への活用
    4-3.モノのトレースへの活用
  5. まとめ

今回は、東芝の法人向けブロックチェーン「DNCWARE Blockchain+」について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

近年、あらゆる分野においてブロックチェーン技術の導入が進む中、東芝グループのシステムインテグレーターとして知られる東芝デジタルソリューションズ株式会社が提供する「DNCWARE Blockchain+(ディーエヌシーウェアブロックチェーンプラス)」にも注目が集まっています。

DNCWARE Blockchain+は22年5月9日にリリースされたエンタープライズ向けのプライベートブロックチェーンで、その性能の高さからさまざまなユースケースが期待されています。そこで今回は、DNCWARE Blockchain+について、そのサービスの概要や特徴、今後期待されるものなどを詳しく解説していきます。

①東芝デジタルソリューションズ株式会社

1-1.東芝デジタルソリューションズの概要

DNCWARE Blockchain+
東芝デジタルソリューションズ株式会社とは、2003年10月1日に設立された東芝グループのシステムインテグレーターです。

システムインテグレーターとは、社会において必要不可欠な仕組みを、ITを活用することによって構築する情報サービス企業のことを言います。業界では「SIer(エスアイヤー)」と呼ばれることも多いシステムインテグレーターは、クライアントの業務を把握し、課題解決のためのコンサルティングや設計、開発や運用などを一括して請け負います。

システムインテグレーターとして事業展開を行う東芝デジタルソリューションズでは、東芝グループが掲げる「人と、地球の、明日のために。」という経営理念のもと、「SDGs(持続可能な開発目標)」を重要な指針と捉え、「企業活動による貢献」と「事業を通じた貢献」に積極的に取り組んでいくとしています。また、新たな価値を創出することで、SDGsの達成とサステナブルな社会の実現に貢献していくと語っています。

1-2.東芝デジタルソリューションズが取り扱うテクノロジー

東芝デジタルソリューションズが取り扱っているテクノロジーは、下記の通りです。

  • 量子関連技術
  • IoT
  • AI
  • XR(AR,MR)
  • シミュレーション
  • 画像認識、画像処理
  • 音声、音響技術
  • ブロックチェーン
  • セキュリティ
  • マネージドサービス
  • ICT製品、サービス

このように、東芝デジタルソリューションズはさまざまな最先端テクノロジーを駆使することによって、それぞれのクライアントのニーズにマッチしたソリューションの提供を行っています。

②「DNCWARE Blockchain+」とは

2-1.「DNCWARE Blockchain+」の概要

2_DNCWARE Blockchain+

「DNCWARE Blockchain+(ディーエヌシーウェアブロックチェーンプラス)」とは、22年5月9日に東芝デジタルソリューションズよりリリースされた、エンタープライズ向けのプライベートブロックチェーンのことを指します。

DNCWARE Blockchain+は「ビジネスのためのブロックチェーンで世の中のDXを加速させる」というテーマを掲げ、企業間の連携において求められる信頼性の高いプラットフォームの構築に尽力しています。

「DX」とは「デジタル・トランスフォーメーション」のことを指し、進化したデジタル・テクノロジーを⽤いることで、人々の生活をより良いものへと変革させるという概念のことを言います。

DNCWARE Blockchain+では、世の中のDXのさらなる促進を目指し、企業の垣根を超えたデータ連携の実現可能性を飛躍的に高めることで、社会に新たな価値を生み出していくということです。

2-2.「DNCWARE Blockchain+」開発の背景

これまでの社会や産業における基盤・枠組みは、「集中・垂直統合型」であることが一般的でした。しかし近年、さまざまなテクノロジーの発展などにより、その在り方は「分散×ネットワーク型」へと急速に変化しています。

そんな中、東芝デジタルソリューションズでは、これから主流になると考えられる「分散型社会」および「循環型社会」に向け、ビジネスのための新たなブロックチェーンである「DNCWARE Blockchain+」の開発をスタートしたということです。ブロックチェーン・テクノロジーによってエコシステム型のビジネスを構築することを目指すDNCWARE Blockchain+では、これまで独立していた企業や製品、サービスなどをつなぎ合わせ、相互に連携させることによって、企業にとってもユーザーにとっても高い価値を生み出すことを目指しています。

また、DNCWARE Blockchain+を用いることでデータ連携の信頼性に関する課題を解決し、イノベーションを起こす自由な創造活動を加速させていくと説明しています。

③「DNCWARE Blockchain+」の特徴

3-1.信頼性を保ちつつ企業間を自由につなげられる

これまでの一般的なパブリックブロックチェーンは、ノード参加が自由であることから、運用者の顔が見えないという不安がありました。また、プライベートブロックチェーンに関しては、自分たちで運用するためにはアプリケーション開発とは異なるスキルが必要であるため、参入障壁が高いと懸念されていました。

そんな中、DNCWARE Blockchain+では、運用を気にすることなく顔の見えるブロックチェーンネットワークを構築することが可能となっているため、信頼性を保ちながら企業間を自由につなげることが可能となっています。

3-2.すべての変更を記録することができる

DNCWARE Blockchain+では、スマートコントラクトの呼び出しのみならず、スマートコントラクトの変更やユーザーおよびアクセス権限の変更など、あらゆる事項がすべてブロックチェーンに記録される仕組みとなっています。また、システム管理者やアプリケーション開発者の行動もすべて記録されるため、透明性の高いシステム構築が可能です。

3-3.記録の改ざんが極めて難しい

DNCWARE Blockchain+では、トランザクションへの電子署名を検証することによって、第三者による改ざんを検出することが可能となっています。また、トランザクションはブロックチェーンとつながっているため、当事者による二重発行や隠ぺいを検出することもできるようになっています。

このほか、記録内容やコントラクトの実行は分散環境でバックアップが取られる仕組みとなっているため、ピアの改ざんを検出することも可能なほか、トランザクションが改ざんされていないことを証明する検証データをダウンロードすることもできるということです。

3-4.高い信頼性を実現している

DNCWARE Blockchain+は、東芝デジタルソリューションズが20年以上にわたって実績を積んできた「クラスタ技術」をベースとして開発されています。

東芝デジタルソリューションズのクラスタソフトウェアは、企業の重要システムや社会インフラシステムなどにおいて広く導入されており、そこで培われてきた、ネットワーク上の複数サーバの連携を高度に制御するクラスタ技術をベースとして開発した新たな合意形成のアルゴリズムによって、高い信頼性を実現しています。

3-5.アプリケーションの開発が簡単

DNCWARE Blockchain+では、初心者でも扱いやすいとされているプログラミング言語「JavaScript」が利用できるため、比較的簡単にアプリケーションの開発を行うことが可能です。

また、アプリケーションの開発者はブロックチェーンネットワークの管理者や運用者の承認を得ることなく、スマートコントラクトの作成やリリース(デプロイ)ができるようになっているため、アプリケーションの開発者同士が自由にビジネスを展開できるというメリットもあります。

さらには、スマートコントラクトを開発するためのツールも用意されているなど、利便性の高い開発環境が整備されています。

3-6.アクセス権の設定が可能

DNCWARE Blockchain+では、ブロックチェーンの記録閲覧や、コントラクトの変更または呼び出しなどについて、ユーザーやグループ、コントラクト単位でのアクセス権限を設定することが可能です。

④「DNCWARE Blockchain+」から期待されるもの

プライベート型のブロックチェーンは今後、行政や社会インフラといった分野で特に活用が進んでいくと見られています。

ここでは、「DNCWARE Blockchain+」がこれからどのように活用されていくのか、その技術から期待されるものについて解説していきます。

4-1.契約事務の電子化への活用

これまで契約事務は書面による押印手続きが採られていたため、効率化することが比較的困難だと言われてきました。そんな中、2021年1月に地方自治体法施行規則の改正が行われ、電子署名法に基づく電子署名による電子契約が可能となったことを受け、契約手続きをデジタル化しようという取り組みが全国で拡がっています。

東芝デジタルソリューションズにおいても、DNCWARE Blockchain+を活用した電子契約サービスを提案しており、現在、自治体とともに調達業務における契約事務の実証実験を実施しているということです。この電子契約サービスは当事者型の電子契約となっており、電子ファイルの契約書におけるハッシュ値に対して電子署名したものをブロックチェーンに記録することによって、締結後に契約内容を書き換えられた場合、検知することができる仕組みとなっています。契約書自体はこれまでと同様、契約管理データベースにおいて管理しつつ、「いつ」、「誰が」などといった当事者が契約した事実とそれが改ざんされていないことをブロックチェーン・テクノロジーによって担保するということです。

現在、多くの電子契約システムが「PDF署名」を採用していますが、DNCWARE Blockchain+では契約書に付随する各種届出や図面、図書などといったPDF以外の書類についても、契約書にひも付けてブロックチェーン上で管理できるようになっています。またさらには、書類の脱ハンコやペーパーレスの実現にもつながるということで、業界からは大きな注目が集まっています。

現在進められている実証実験では、DNCWARE Blockchain+をベースとした電子契約サービスが既存のシステムと連携するような形で導入できるかについて検証しています。これによって、電子契約サービスを導入することで自治体のブロックチェーン基盤を整備することが可能になり、今後の自治体DXの推進にも大きく貢献することができると期待されています。

このように、DNCWARE Blockchain+をベースとして活用することで、社会全体のデジタル化やスマート化を加速することができるということです。

4-2.本人性の確認への活用

DNCWARE Blockchain+は「人生の終わりのための活動」という意味を持つ「終活」や相続においても、その活用が期待されています。

相続では、相続財産や相続税の対象となる資産を明確にしなければなりませんが、これまで遺族は、金融機関によって発行される紙の通帳を手掛かりとして、故人の預貯金の調査を行っていました。しかし最近では、電子化された通帳である「デジタル通帳」や、インターネット上で預貯金の管理を行う「インターネットバンキング」を利用する人も増加しており、遺族が預貯金の有無を把握することがますます困難になっています。

また、相続財産の対象のほかにも、大切な思い出の品であるデジタル写真などにアクセスできず、放置されてしまうケースも少なくありません。こういったことから、生前に自らが相続財産や遺品を財産目録にまとめておき、それらをどう処理してほしいのかを明確にしておくことが重要となっています。

そして、これを比較的簡単に行えるようにサポートするデジタルサービスとして、「SAMURAI Security株式会社」が展開するオンライン相続支援サービス「サラス」があります。サラスでは財産目録を作成し、その財産を対象とした家族信託契約を締結することが可能となっており、当事者型の電子契約を実現する認証局の仕組み「KAMS」はDNCWARE Blockchain+上に構築されています。KAMSでは、ブロックチェーンの分散認証テクノロジーを駆使することで、作成および登録した電子実印の不正使用を防止する仕組みが整備されています。また、本人認証の履歴や契約書はすべてブロックチェーンに記録され、改ざんが極めて困難となっています。

今後、自筆証書遺言制度のデジタル化についての議論が進み、法整備が実施された場合、オンラインで完結できる遺言書作成サービスにDNCWARE Blockchain+が用いられる可能性があるほか、ブロックチェーンで担保されたデータは、不動産の契約手続きやローンの審査手続きなどへの応用も期待されています。

4-3.モノのトレースへの活用

DNCWARE Blockchain+は製品などの追跡を行う「トレーサビリティ」においても活用が進んでいます。

具体的には、「ZEROBILLBANK JAPAN株式会社」が展開する物流管理(サプライチェーン)サービス「Trace Ledger」において、DNCWARE Blockchain+を活用した基盤が採用されており、すでにいくつかの実証実験が実施されているということです。

従来の物流分野では、各事業者が管理する「ERP(統合業務システム)」や「WMS(倉庫管理システム)」などのデータをもとにして取引が行われているため、他の事業者との情報連携にある程度の時間を要するほか、紙の帳票のやり取りなどによる手間が発生したりという問題点がありました。

そんな中、ZEROBILLBANK JAPAN株式会社は商品を「いつ」、「どこで」、「誰が」、「どのように」扱ったのかについて、QRコードを用いてブロックチェーン上で記録するサービスを開発しました。これによって、トレーサビリティの透明性がさらに高まるほか、検品書と納品書のペーパーレス化や、販売証明としての活用、また二次流通において本物であることの表章を管理する「真贋(しんがん)」管理もできるようになるということです。

さらに、今後はモノの紛失が関わる物流保険の証明などへの活用も期待されています。

⑤まとめ

DNCWARE Blockchain+は東芝グループのシステムインテグレーターとして知られる「東芝デジタルソリューションズ株式会社」が提供しているエンタープライズ向けのプライベートブロックチェーンのことを指します。

近年、さまざまな分野においてブロックチェーンの活用が進んでいる中、DNCWARE Blockchain+はその利便性の高さから、ユースケースをますます拡大しています。現在すでにオンライン相続支援サービスや物流トレーサビリティをはじめとするあらゆる分野で実証実験が進められているということで、今後も引き続きその動向に注目していきたいと思います。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12