デジタル証券(ST)の現状

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今回は、様々なモノやサービス、事業を小口化・証券化できる『ST(セキュリティトークン)』事業を準備中のHash DasHから寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. セキュリティトークン(ST)市場の概観 ―グローバルと日本
  2. グローバルの不動産STの第一歩
  3. 国内STの商品ラインナップ
    3-1. ケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南(募集額:14億5,300万円、1口=100万円)
    3-2. トーセイ・プロパティ・ファンド(シリーズ1)(募集額:8億7,000万円、1口=1,000万円)
    3-3. 神戸六甲アイランドDC(募集額:7億6,699万円、1口=503,000円)
    3-4. ケネディクス・リアルティ・トークン赤羽志茂(募集額:21億5,600万円、1口=100万円)
    3-5. 草津温泉 湯宿季の庭・お宿木の葉(募集額:20億8,900万円、1口=50万円)

セキュリティトークン(ST)市場の概観 ―グローバルと日本

米国Security Token Group社によると、グローバルのセキュリティトークン(ST)市場は約180億ドル(約2兆2,500億円、205本)であり、約半年前の2021年10月から比べても16倍に急成長しています。STを流通させるプラットフォームとしては、米国証券取引委員会の規制に準拠したST取引所として、2018年12月にOpenFinance Networkが設立され、現在では、tZERO、Securitize、Securrency、Dsdaq、Poloniex、Kraken、Harbor、SMART VALOR、Brickblockなど主に15の業者があるようです。

一方、日本のデジタル証券(金融商品取引法下のST)は現在までに6本、合計74億3,499万円が発行されており、投資対象(原資産)は、1本(1億円)が社債であるほかはすべて不動産です。また、日本ではブロックチェーン上で投資家から投資家へ直接持ち分が譲渡できるプラットフォームは、近年中の目標ではあるもののまだ存在しません。発行・管理をブロックチェーンで行ってはいますが、STの持ち分を売却する場合、証券会社が一旦買取り、それを購入希望者に転売する形をとっています。

STのプラットフォームをめぐっては、日本有数の金融機関、大企業が精力的に活動を行っています。三菱UFJ信託銀行の「Progmat(プログマ)」、野村ホールディングス系列の「BOOSTRY(ブーストリー)」などのシステムはSTの発行・管理のシーンで既に稼働しています。投資家と投資家を直接結ぶ私設取引システムとしては、その設立を目的としてSBIホールディングスと三井住友フィナンシャルグループの合弁で「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」が設立されており、日本取引所グループも2024年末までにデジタル証券市場の創設を目指すと発表しています。

グローバルの不動産STの第一歩

グローバルのSTでの投資対象は、株式、債券、不動産とありますが、ブロックチェーンを使うことで流動性の高さを提供するSTの存在価値は、もともと流動性が低く、譲渡手続きが煩雑な不動産にこそ真価を発揮することができるものと思われます。

世界初の不動産STは、2017年にシリコンバレーのPropy社が扱った「ウクライナのアパート」です。その後、同社では2018年10月に、スペインの不動産をフランスの居住者に対して販売し、オンラインで国境を越えてのシームレスな不動産取引を可能にしたとして高い評価を受けています。

併せて、一般投資家が参加できる不動産投資として評価を得た案件も登場しました。2018年10月、Templum Markets LLCとIndieGoGoが共同で、ロッキー山脈にある高級ホテルをREIT(不動産投資信託)にしてST化しました。

国内STの商品ラインナップ

先ほども述べた通り、国内STは1本を除く5本がすべて不動産に投資するものです。

不動産STとREIT(不動産投信)の違いは、「不動産の手触り感」といわれます。その要因は、値動きと投資対象資産の2点です。まず、REITは株式同様に日々値段が動くのに比べ、ST不動産は鑑定評価額をベースにした価格での取引となっている安定感があります。そして、複数の不動産をパッケージにして入れ替えもあるREITに対して、不動産STは固有の「この物件」を保有し続けるオーナー感があります。オーナーである意識を持つ以上は、なんといっても物件の魅力が勝負です。それでは、日本国内で今までに発行された不動産STを見てみましょう。

ケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南(募集額:14億5,300万円、1口=100万円)

渋谷と原宿の間にあるマンションです。日本で最も栄えている街の一つといっても過言ではない、都心のレジデンスに魅力を感じる人も多かったのではないでしょうか。

トーセイ・プロパティ・ファンド(シリーズ1)(募集額:8億7,000万円、1口=1,000万円)

横浜にある築27年のマンションです。内装・外装のリニューアルで築年数を感じさせない外観も魅力的です。このファンドは、国内の不動産STで唯一、シンガポールST取引所であるADDXに上場しています。

神戸六甲アイランドDC(募集額:7億6,699万円、1口=503,000円)

大阪と神戸の中間に位置する、海上文化都市の整備を目指して建設された人工島にある物流センターです。世界的に有名な外食チェ―ンの倉庫として使われているとのことですが、西日本の基幹ハブセンターという重要な機能を担っている点が魅力です。

ケネディクス・リアルティ・トークン赤羽志茂(募集額:21億5,600万円、1口=100万円)

東京都北区にある学生向けレジデンスの「エコールヴィレ赤羽志茂」です。栄養士がメニューを作成した食事付き、全室家具付き(電子レンジ、冷蔵庫も付いた部屋があるそうです)、インターネットはもちろん無料で・・・といった現代の学生にニーズがマッチした物件です。

草津温泉 湯宿季の庭・お宿木の葉(募集額:20億8,900万円、1口=50万円)

日本三名泉の一つ、草津にある温泉宿が投資対象です。贅沢な食事やお部屋でグレードの高い「季の庭」、一方「木の葉」は自炊もできる自由に湯治を楽しめるとのこと、日本人なら誰でもくつろぎを感じる素敵なお宿です。

すべて不動産投資ですが、最初の2本は住宅、その後、倉庫、特殊な住宅、温泉宿とバリエーションが増えています。住宅は、立地、周囲の環境や物件の良し悪しで判断することになりますが、有名企業の倉庫ならばテナントについても信頼感や好みが分かれるなど、また別の判断も可能になるでしょう。温泉の案件は、日本人なら誰でも一度は寄ってみたくなる素敵なお宿ですが、それに加えてSTの保有者に宿泊割引券のトークンをプレゼントするといった計画があるようです。

このように、個人投資家に身近でワクワクするような案件ができるのもSTの魅力の一つです。

なお、Hash DasHでも、ベンチャー企業ならではの小回りの利く使い勝手のよいシステムやユニークな商品の開発を強みとして、現在第1号商品の準備中です。やはり不動産小口化商品になりますが、若い方からシニアの方までお試し感覚でも本格資産形成目的にも、長期で保有していただける商品です。単に安定収入を追求するのみならず、「地方創生」「SDG’s No.3(※)」「SDG’s No.11(※)」など社会貢献的な投資ができる機会の提供を行ってまいりたいと考えています。

編集部注釈:SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」

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三好 美佐子

明治大学法学部卒業。1990年東京証券(現東海東京証券)入社、投資信託商品本部に所属、その後、外資系資産運用会社を経て、2004年ユナイテッドワールド証券取締役。銀行のダイレクトマーケティングやおつり投資サービス等にも関わる。2014年には「One Tap BUY(現PayPay証券)」創業、2021年よりHash DasHに参画。個人への財産形成手段の普及がライフワーク・テーマ。Hash DasH株式会社(https://www.hashdash.co.jp/