日用品・消費財企業のESG・サステナビリティの取り組みは?企業の取り組み事例も

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日用品・消費財企業は、材料の調達や製品の使用など、製品のバリューチェーンを通して、サプライヤーや生活者を含む様々なステークホルダーとつながっています。各企業は、ステークホルダーとともに環境負荷を抑え、社会的にポジティブなインパクトを与えるような、持続可能な取り組みを期待されています。

今回の記事では、日用品・消費財企業のESG・サステナビリティの取り組み内容について、詳しくご紹介するので、ESG投資に関心のある方は参考にしてみてください。


※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年9月5日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 日用品・消費財企業のESG・サステナビリティの取り組み内容
  2. ユニ・チャーム
    2-1 健康寿命延伸やQuality of Lifeを目指す取り組み
    2-2 環境配慮型商品・リサイクルモデルの開発
  3. 雪ヶ谷化学工業
    3-1 環境面における取り組み
    3-2 社会面における取り組み
  4. 花王
    4-1 Quality of Lifeの向上のための取り組み
    4-2 責任ある原材料調達に向けた取り組み
  5. まとめ

1 日用品・消費財企業のESG・サステナビリティの取り組み内容

ESG・サステナビリティに対する関心が高まる中、企業による原材料の調達や製造過程における環境負荷の低減や、製品やサービスを通した社会課題の解決など、環境面や社会的責任の観点から、投資家や生活者からの期待も高まっています。

日用品・消費財関係の企業も、こうした期待に対応するため、ESG・サステナビリティの取り組みを行っています。ESG活動に取り組んでいる日用品・消費財企業の例として、「ユニ・チャーム」「雪ヶ谷化学工業」「花王」が挙げられます。各社の具体的な取り組み内容を見ていきましょう。

2 ユニ・チャーム

ユニ・チャーム(8113)は、愛媛県に本店を置く、日本を代表する日用品・消費財メーカーです。不織布、吸収体の加工・成形技術を活用した製品を、ウェルネスケア関連、ペットケア関連、フェミニンケア関連、ベビーケア関連分野で展開しており、ペットを含めた幅広い年齢層向けの製品の製造・販売を行っています。

同社は、共生社会の実現を目指した中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030 ~ For a Diverse, Inclusive, and Sustainable World ~」を2020年に発表しました。「生活者がさまざまな負担から解放されるよう、心と体をやさしくサポートすること」と、「生活者一人ひとりの夢を叶えることに貢献すること」(NOLA&DOLA)をビジョンに、環境問題や社会課題の解決、生活者と地域社会への貢献と、継続的な事業成長の同時実現を目指しています。

それでは、同社の取り組みを見ていきましょう。

2-1 健康寿命延伸とQuality of Lifeを目指す取り組み

女性の健康に関する教育プロジェクト

同社は、性別や性的指向により活躍が制限されない社会を目指し、その取り組みの一つとして、2019年にソフィ「#NoBagForMe」プロジェクトを開始しました。企業向けの生理研修プログラムの提供を通し、女性の健康や生理ケアについての理解醸成、婦人科検診の啓発に取り組んでいます。2022年時点で、計158の企業・団体等に研修や動画提供を行いました。

アジア地域でも、現地NGOと協力し、学生を対象に初潮教育や月経教育プロジェクトを行っています。2013年にインドでプロジェクトを開始し、2022年までに約483,000名が教育プロジェクトに参加しました。

超高齢社会への対応

日本では65歳以上の人口が増え、超高齢社会を迎えています。医療の発展により平均寿命が延びる一方で、健康上の問題で日常生活が制限されず、自立した生活を送ることのできる「健康寿命」にいかに取り組むか課題となっています。こうした中、ユニ・チャームは、高齢者の歩行や足腰への負担、肌への負担に配慮した薄型パンツ製品の開発に努めています。2020年に同社の大人用おむつシリーズから、関連商品を発売しています。

2-2 環境配慮型商品・リサイクルモデルの開発

大人用紙おむつのリサイクル

超高齢社会の日本において、紙おむつの使用量は年々増加しており、家庭から排出されるごみにおける紙おむつの量の増加が懸念されています。2020年3月に環境省から「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」が公表されたことを受け、ユニ・チャームは使用済み紙おむつのリサイクル事業化に取り組んでいます。

例えば、回収した使用済み紙おむつを洗浄・分離し、取り出したパルプにオゾン処理を施して排せつ物に含まれる菌を殺菌し、パルプを再生するリサイクルシステムの開発です。実証実験として、2022年6月に鹿児島県の一部の介護施設で、吸水紙の一部にリサイクル材を使用した大人用紙おむつのテスト使用を開始しました。今後は、日本だけでなく海外でも実施できるリサイクルモデルを構築し、2030年までに10以上の自治体への導入を目指しています。

100人分の使用済み大人用紙おむつを、1年間にわたり焼却処分した場合と、リサイクルした場合では、CO2排出量が約87%削減、ごみ収集車23台分のごみを削減、100本分の森林資源を保護することにつながると、同社は考えています。

プラスチック使用量の削減

ユニ・チャームは、プラスチックを使用するメーカーの責任として、サーキュラー・エコノミーへの転換を目指しています。商品パッケージだけでなく、小売店の商品陳列時に用いる販促物におけるプラスチック使用量を、2025年までに50%削減し(2019年比)、2030年までにゼロにすることを目標にしています。

例えば、陳列用のフック器具や什器、POP等を紙素材へ切り替えたり、紙製ラックの開発を進めたりしています。2022年時点で、販促物におけるプラスチックの使用量が、2019年比で約81.8%削減されたと同社は発表しています。

(※:ユニ・チャーム「サステナビリティ」、「サステナビリティレポート2023」)

3 雪ヶ谷化学工業

雪ヶ谷化学工業は、特殊発泡体(気泡を含ませて小さな穴がたくさん開いているプラスチック素材)や、化粧品用具の製造・販売の事業を行っている化学品メーカーです。1976年、天然ゴムを使用していた化粧用スポンジを合成ゴムに置き換えることに成功して以降、雪ヶ谷化学工業は化粧用スポンジ「ユキロン」を中心に事業を伸ばしました。

雪ヶ谷化学工業は、ESGやサステナビリティに対する長期目標として「雪ヶ谷サステナブルチャレンジ2030」を定め、以下の目標を掲げています。

  • 植物由来等の再生可能原材料比50%
  • スコープ1、2のCO2排出量を実質ゼロに
  • 調達~納入工程での廃棄物50%
  • フェアトレード天然ゴム100%
  • 女性管理職割合50%

それでは、同社のサステナブルレポート(2022)で紹介されている取り組みを見ていきましょう。

3-1 環境面における取り組み

石油由来原材料を植物由来等の再生可能原材料に

雪ヶ谷化学工業は、植物由来等の再生可能原材料の比率を50%にするため、植物由来原料(ひまし油)を混合したハイブリッドウレタンフォーム(ポリウレタンを原料として作られる柔らかい素材)の化粧用スポンジを新たに開発、2022年に販売開始しました

2022年時点で同社の植物由来の再生可能原料比は20%を超え、目標50%の達成に向けた取り組みが期待されます。また、ハイブリッドウレタンフォームを用いた化粧用スポンジは、従来のウレタンフォーム製品に対し、製造から廃棄時のCO2排出量が約36%削減される見込みだと同社は発表しています。

CO2排出量実質ゼロに向けた取り組み

二酸化炭素排出量実質ゼロに向けては、リモートワークを進めることでオフィスを一部解約したほか、白熱灯や蛍光灯から省エネ効果のあるLEDへの変換を進めることで(LED比率61.2%)、CO2排出量の削減に取り組んでいます。2022年度のCO2排出量は、2021年度比で48.7トン減少したと同社は発表しています。

廃棄物量50%削減に向けた取り組み

さらに、製造の全工程における廃棄物量半減に向けて、部署ごとに紙類用のリサイクルBOXを設置したり、つくば工場で排出される一般ゴミのうち、ペットボトル、紙、プラスチック製に分けてリサイクル活用したりする取り組みを行いました。こうした取り組みにより、2022年の廃棄物発生量は、2010年から2019年までの廃棄物発生量の平均値の70%程度に抑えられたと同社は発表しています。

3-2 社会面における取り組み

フェアトレードに関する取り組み

フェアトレードとは、途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入する、公正な取引のことです。フェアトレードの実現により、不当な労働搾取や児童労働を防止し、途上国の労働者の生活環境が守られ、持続可能な社会への実現につながります。

同社では、社員が現地農家を訪れ、強制労働や児童労働が行われていないかなどの実地調査を定期的に行っています。フェアトレードだと確認できた天然ゴムを使用した化粧用スポンジシリーズの販売に加え、フェアトレード天然ゴムの重要性と国内認知度を高めるために「フェアトレード天然ゴムマーク」を作成し、普及活動を行っています。

女性管理職50%に向けた取り組み

女性管理職の割合を50%にする取り組みでは、外部研修を受講できる環境を設けたり、将来的なキャリア像を具体化させるための体制づくりを進めたりしたほか、女性が管理職に昇進しやすい環境を整えるため、ジョブローテーション制度の導入が検討されています。2022年度における女性管理職の割合は25%であり、さらなる取り組みが期待されます。

(※参照:雪ヶ谷化学工業「「YUKIGAYA × SDGs」、「YUKIGAYAサステナブルリポート2022」)

4 花王

花王(4452)は、東京都中央区に本社を置く、国内大手の化学品・消費財メーカーであり、主に洗剤・シャンプー等の家庭用製品、化粧品、食品・工業用製品等の製造・販売を行っています。

花王は、ESG戦略として「Kirei Lifestyle Plan」をビジョンとしています。自分らしく快適な暮らしを送ること、社会のために思いやりのある選択ができること、すこやかな地球環境であることを目標として、環境面・社会面に関する様々な内容のESG活動に取り組んでいます。

以下では、花王が取り組むESG活動の中で、「Quality of Lifeの向上」と「責任ある原材料調達」に向けた取り組み内容について紹介していきます。

4-1 Quality of Lifeの向上のための取り組み

花王は、人々のライフスタイルの多様化や、環境へのインパクトを配慮した商品開発を進めています。また、感染症対策などの衛生問題や、気候変動による紫外線や熱中症対策など、地域や時代によって異なる「快適な暮らし」に対するニーズに応えることを重視しています。

例えば、東南アジアでは蚊を媒体とした感染症(デング熱)が社会問題となっています。花王は、デング熱への対策として、「肌の表面を蚊が嫌う性質に整えることで、蚊に刺されなくする」という新しい発想のもと技術開発を行っています。タイで産官学連携のプロジェクトを開始し、本プロジェクトを元に開発された商品が、2022年6月にタイで発売されました。

また、新興国の社会課題の一つに、衛生対策に必要な、清潔な水へのアクセスが挙げられます。そのため同社は、WOTA株式会社と業務提携し、水不足が深刻な地域の衛生対策や感染症予防などに取り組んでいます。例えば、インドネシアでは、保健省と共同で水衛生に関する教育プログラムを8都市、50校で実施し、WOTA社の水衛生型手洗いスタンドを4校に導入しました。

4-2 責任ある原材料調達に向けた取り組み

日用品・消費財企業は、製品を製造するための原材料を各方面から調達しています。しかし、原材料によっては、調達時に環境破壊や生物多様性の損失等のネガティブな環境インパクトを与えてしまう恐れもあります。

花王は、環境の保全や生物多様性の保全に配慮した上で、持続可能なパーム油調達に向けた活動を行っています。パーム油とは、「アブラヤシ」という植物の実から得られる植物油で、化粧品や食品等さまざまな製品に利用されている油です。

花王は、インドネシアの小規模パーム農園の支援を行うとともに、2020年に油脂製品製造・販売会社、農園会社と共同し、持続可能なパーム油に対する認証の取得を支援する「SMILEプログラム」を開始しています。このプログラムでは、2030年までに約5,000農園を対象に、生産性向上の技術指導や、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」の認証取得に向けた教育を行うことを目標としています。

さらに、原材料のトレーサビリティ(調達・製造・販売・消費までの履歴を追跡可能な状態にすること)の確保については、パーム油や紙・パルプなどで取り組みを始めています。

パーム油については、2022年時点で、パーム搾油工場および売り手所有の自社農園まで追跡が完了しています。今後は、2025年までにインドネシアの小規模パーム農園までのトレーサビリティ完了を目指しています。

紙・パルプについては、2025年までに家庭用製品に使用する紙製品およびパルプを100%認証品とすることを目指し、原産地までのトレーサビリティ確認に取り組んでいます。

(※参照:花王「サステナビリティ」、「花王サステナビリティレポート2023」)

5 まとめ

日用品・消費財企業の事業内容は、環境面と密接に関連しており、リサイクルによる廃棄物削減と再資源化、生物多様性の保全等のESG活動に取り組む企業が多く存在します。また、人々の衛生的で快適な生活に貢献する製品の開発に取り組んだり、労働環境における人権保護に取り組んだりするなど、製品やサプライチェーンを通じて社会に貢献する姿勢も求められています。

ESG投資に関心のある方は、日用品・消費財企業など、様々な企業のESG指標や取り組み内容について、ご自身でもお調べになった上で検討してみてください。

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