今回は、ビットコインの上昇相場での心得について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- 仮想通貨の上昇局面の特徴
1-1.スパンの長い仮想通貨の上昇局面
1-2.利確売りや調整の程度 - 仮想通貨の上昇局面でありがちな高値掴み
2-1.上昇局面で発生するハーディング現象
2-2.買い増しをしすぎて、平均購入単価をあげてしまう - 仮想通貨の上昇局面で注意すべきこと
3-1.SNSなどの噂を無闇に信じない
3-2.ビットコイン先物の未決済建玉(OI)の動きに注意する - まとめ
仮想通貨(暗号資産)の上昇局面で市場が盛り上がってる時は、ついつい自分も買いたくなるものです。しかし、このタイミングでの投資は上昇局面が終わった後に大きく損失を抱える可能性が高くなります。そのため、今回は仮想通貨の上昇局面の特徴や高値づかみをしてしまう原因など、上昇局面で盛り上がってる時に注意すべき点について解説したいと思います。
①仮想通貨の上昇局面の特徴
まずはじめに仮想通貨の上昇局面にはどのような特徴があるのかという点について解説します。
1-1. スパンの長い仮想通貨の上昇局面
過去を見ると、仮想通貨の上昇局面は数ヶ月に渡る長いものとなる傾向があります。
例えば、ビットコインの上昇期間を見ると、2017年の上昇は3月26日から2017年12月16日まで、約9ヶ月半に及ぶ長い上昇トレンドが続きました。この間、上昇相場は緩やかにスタートし、4度のある程度大きな反落をするも、反発する度に勢いを強めました。特に11月12日の5,950ドル~12月16日の19,467ドルまで、ラスト1ヶ月で3倍へ急上昇しています。
その後は長いダウントレンドに入りましたが、2018年12月14日の3,242ドルを起点に再び上昇を始めました。2019年6月26日には13,016ドルと、約7ヶ月に渡る上昇トレンドが続きました。
その次の上昇局面は2020年3月16日の5,014ドル~2021年4月13日の63,505ドルで、約13ヶ月もの長期に渡るものです。
そして、現在の上昇は2021年7月20日の29,807ドルから始まり、執筆時点11月9日の67,500ドルと、3ヶ月で2倍以上の急騰を見せています。
当然、その期間で利益確定や調整などの大きな反発はあるものの、仮想通貨でトレンドが発生した場合は非常に長い期間にわたり続くということが言えるでしょう。
1-2. 利確売りや調整の程度
長い期間にわたる上昇局面においても、一方通行で相場が上がり続けるということはなく利益確定売りや調整が入ります。また、下降局面においてもスパンが長くなる傾向があります。急激な上昇をした後ほど急激な下落も発生しやすくなるのは、仮想通貨であっても他の金融商品であっても共通して言えることです。
ビットコインを例にとって解説すると、1ヶ月で3倍の上昇を見せた2017年12月16日~2018年2月5日までの約1ヶ月半で6,955ドルと、当時の直近最高値から約12,000ドルの下落をしています。次の下落トレンドは2019年6月26日の13,016ドル~2020年3月16日の5,014ドルと、9ヶ月で8,002ドルの下落をしています。2021年4月13日の63,505ドルからは、7月20日の29,807ドルまでの期間は約3ヶ月で33,698ドルの下落をしています。
このように、ビットコインが最高値を付けた後は、最高値から約50%から65%の下落をし、再び上昇トレンドに入っていると言えます。
②仮想通貨の上昇局面でありがちな高値掴み
次に仮想通貨の上昇局面でありがちな高値掴みについて解説します。
2-1. 上昇局面で発生するハーディング現象
ハーディング現象とは行動経済学における群衆心理に関する用語で、大多数の人と同じ行動をとることで安心感を得ようとする心理のことを言います。
ハーディング現象は仮想通貨取引だけではなく、金融市場の様々なシーンで発生するといえます。
特に仮想通貨の上昇局面におけるクライマックスの際は急激な上昇局面となるため、「今買わなければ自分だけが損をしてしまう」という気分になり、心の片隅で高値だとわかっていてもついつい買ってしまうことで安心感を得る心理状態のことを言います。
ハーディング現象を後押しする要因として、マスメディアによる報道や、SNSでの他者の発言、知り合いの投資家の意見などがあります。
2-2. 買い増しをしすぎて、平均購入単価をあげてしまう
上昇局面をうまく捉えて利益をあげたことがある中堅トレーダーに多い失敗例がこれです。上昇局面において押し目買いを続け、ポジション料と平均購入単価を上げてしまい、最高値を付けた後の急激な下落の際に損切りをし、結果的に損をしてしまう場合があります。
これは、仮想通貨の上昇トレンドが長く続くことを知っているが故の失敗です。これを防ぐには、客観的に捉えてクライマックスに近づいていることを察知し、売り時をあらかじめ決めておくことが大切になります。
③仮想通貨の上昇局面で注意すべきこと
最後に仮想通貨の上昇局面で注意すべきことについて解説します。
3-1. SNSなどの噂を無闇に信じない
ビットコインの上昇局面においては、前述したようにハーディング現象が起こるということを理解しておく必要があります。特にクライマックスを迎える直前にはハーディング現象が起こり、TwitterなどのSNS上でも強気な発言が相次いだり、知人が仮想通貨を購入するなど自分もそこに乗らなければ損をするような心理状態となります。
ハーディング現象が蔓延すると、確たる根拠がなく買われている場合が多く、いわゆる「相場は感情で動く」という言葉を地で行くような状態となります。つまり、SNSやマスメディアで盛んに強気な発言が見られる場合は、クライマックスが近づいている予兆だと捉えると良いでしょう。これは、上昇局面に限らず下降局面においても同様のことが言えます。
3-2. ビットコイン先物の未決済建玉(OI)の動きに注意する
相場がクライマックスに近づいているかどうかを客観的に知る方法の一つとして、OIと呼ばれるビットコイン先物の「未決済建玉(Open Interest)」の動きに注意をする方法があります。
OIは売買出来高と合わせて見る事で、価格上昇の背景にハイレバレッジをかけた先物投機家のツッコミ買いがあるのか、それともショートカバーの結果としての価格上昇なのか、現物主導の上昇なのか、ということを判断することができます。OIとは、証拠金取引で決済されていないデリバティブ契約の総数です。つまり、現物取引ではなく証拠金取引のポジション量となるため、OIは近い将来に反対決済をされるということになります。
証拠金取引ではロングとショートのそれぞれのポジション数は常に同数となるため、価格の上昇局面においてOIが増加しているからといって、単純にロングポジションが増えたということにはなりません。そこで、売買出来高と合わせて分析する必要があります。
相場の上昇局面において、OIが増加し、売買出来高で買いの方が多い場合は、新たにロングポジションが立てられ、売りの方が多い場合は売り板が薄くて上昇しているため、下に戻りやすい状況だと解釈することができます。
OIが減少し、売買出来高で買いの方が多い場合は、ショートカバーが多く、売りの方が多い場合は、ショートカバーとロングの解消が錯綜していると解釈できます。
また、下降局面においては、上昇局面の逆で考えればよいため、 下降局面においてOIが減少しているときはロングポジションをクローズするための成り行き売りが行われていると解釈することができるため、相場が下がり始めてOIも減少している時は、利益確定売りが出ていると解釈することができます。
このようにOIと売買出来高を組み合わせて分析することにより価格の値動きの背景を推測することが可能となります。
④まとめ
仮想通貨の上昇局面で最も注意すべき点はハーディング現象に巻き込まれないようにするという点です。
OIと出来高の関係から相場の動きを分析しつつ、トレードをする以前から長期にわたるトレードシナリオを考案していくことをおすすめします。
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中島 翔
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