ブロックチェーンを活用したクリーン電力システムとESG投資ファンド

本稿では、SDGs(持続可能な開発)文脈において、エネルギー及び環境問題に対しブロックチェーン技術の活用を試みる「Freeelio」というドイツ企業の活動について解説した渡邉草太氏(@souta_watatata)のコラムを公開します。

目次

  1. クリーンエネルギーとブロックチェーン
  2. Sun Protocol(サンプロトコル)とは
  3. Sun Protocolの展望を考察する
  4. ESG投資「Electraseed Fund」
  5. Electraseed FundとSun Protocol
  6. まとめ

記事前半部分は、太陽光発電によって生み出した電力をトークン化し、エネルギー利用の効率化及び途上国地域の村経済を活性化させる取り組み「Sun Protocol」についての紹介です。そして後半では、クリーンエネルギー向け投資ファンド「Electraseed Fund」と、Sun Protocolとの関連性に関して説明していきます。

【参照サイト】Freeelio
【参照サイト】Sun Protocol
【参照サイト】Electraseed Fun

クリーンエネルギーとブロックチェーン

現在途上国の農村地域では、安価かつ安定した電力源が不足しています。これが原因で、農村の人々は大きな電力エネルギーを必要とする生産活動を十分に行えていません。端的にいえば、電力源不足が経済成長を阻んでいるのです。

Sun Protocolは、クリーンエネルギーとブロックチェーンという独自の手段を活用することで、以上の問題を解決し、農村経済の活性化を図ろうとしています。アプローチは大きく分けて以下の2つです。

一つ目は、ソーラーパネルの導入による、途上国地域の農村への安くて安定的な電力の供給です。そして二つ目が、ブロックチェーンの活用による、生み出した電力のトークン化及びエネルギー利用の効率化です。

Sun Protocol(サンプロトコル)とは

同プロジェクトは、アフリカにある人口4000人程度の農村を対象にパイロットプログラムとして実施されました。

クリーンエネルギーを生産及び配給するソーラーパネル及び送電網などのインフラは、提携企業の「Africagreentec」によって設置されます。このような仕組みはマイクログリッドとも呼ばれています。マイクログリッドとは、大規模発電所の電力供給に頼らず、コミュニティでエネルギー供給源と消費施設を持ち地産地消を目指す、小規模なエネルギーネットワークです。

Sun Protocolでは、ユーザーが太陽光発電を通して供給された電力を消費すると、モバイルアプリを通して独自トークンが配布される仕組みになっています。そしてユーザーはトークンを電力の購入に利用可能です。加えて、実用性のある電力を価値の裏付けとしたこのトークンは、信頼に足る通貨にもなり得るため、村内の店頭決済や個人間送金に利用できます。

※トークンシステムはブロックチェーン及びスマートコントラクトで管理されます。

興味深いポイントは、Sun Protocolが採用するトークン設計です。同プラットフォームでは、より生産的な電力消費に対してインセンティブを提供しています。具体的には、電力を工房やミシンなどビジネス目的で使用すると、テレビやラジオに用いるより多くのトークンが配布される報酬設計です。

※電力の使用履歴は、家庭に設置されているスマートメーターによって計測されます。

まとめると、Sun Protocolが行っているのは、以下の2つです。

  • ソーラーパネルの導入により安価で安定したエネルギーの提供
  • ブロックチェーンを基盤としたトークン設計によって、人々の創造や生産を促し、村の経済成長を加速させる

【参照サイト】Africagreentec

Sun Protocolの展望を考察する

途上国地域では、銀行インフラが未発達である地域が非常に多く存在します。特に小さな農村では、紙幣や硬貨はあれど、預金やローンなどの銀行サービスが十分に提供されていない場合がほとんどです。銀行口座がなければ安全な資産管理は難しく、借入ができなければビジネスに一切レバレッジをかけられません。

そのような現状を踏まえると、将来的にSun Protocolのトークンシステムは、単なる決済システムとしてだけではなく、包括的な金融インフラへと進歩する可能性も考えられます。具体的には、モバイルアプリ内で銀行サービスを提供し、村経済の成長スピードをさらに加速させることが可能です。

以上は筆者による考察に過ぎませんが、実際にSun Protocolが提示する興味深い展望もいくつか存在します。それは、Sun Protocolを利用する異なる村同士を、単一のトークン経済圏として統合し、村同士の取引を効率化させていくという構想です。その単一の経済圏で生まれたサプライチェーンをベースとし、透明性がありかつトレーサブルなフェアトレードを実現するといった可能性もあるといいます。

ESG投資「Electraseed Fund」

もう一つSun Protocolと関連して、Freeelio社が手がけるプロジェクトを紹介します。それがElectraseed Fundと呼ばれる、ブロックチェーンを活用したESG投資ファンドです。ESGとは、Environmental Social Governance投資の略で、日本語では社会的責任投資と呼ばれています。その名の通り、環境や社会、企業統治を配慮した投資スタイルを意味します。

Electraseed Fundは、ESG投資に関心のある機関投資家から資金を得て、スマートマイクログリッドなどの太陽光エネルギー関連プロジェクトを複数支援する投資ファンドです。特徴は、全ての投資先の事業価値を単一のトークンとして一元化し販売する点にあります。言い換えれば、投資信託のような形態を取っているのです。

これ仕組みは、投資リターンと社会的リターンのトレードオフを調整するために考案された方法です。途上国のマイクログリッドは、地域社会にとって極めて重要な資源を創り出すため、社会的価値の高い投資対象とされています。しかし、事業が不安定である傾向が高いため、同ファンドは安定している先進国のソーラーパネルプロジェクトも投資先に追加することで、リスクを相殺しているのです。

以上のように、同ファンドが機関投資家向けに販売するトークンは、リスク分散によって投資リターンを担保しつつ、社会的価値も高い投資対象となるように設計されています。現在投資対象に含まれているソーラーパネルプロジェクトは、アフリカのマリとバングラデシュに1つずつと、ドイツに2つあります。

Electraseed FundとSun Protocol

同社によれば、一般的に小規模なマイクログリッドは、導入後のエネルギー効率改善の証明が難しく、資金調達に苦戦する傾向があるといいます。しかし同ファンドは、ブロックチェーンに記録されたマイクログリッド関連のデータをリスク分析に用いるという方法を取っています。つまり、ブロックチェーンの透明性及び信頼性の高さを生かし、小さなマイクログリッドでも簡単に資金調達を行える環境を創り出そうとしているのです。

もうお気づきの方もいるかもしれませんが、Electraseed Fundは上述したSun Protocolと大きく関連するプロジェクトです。同ファンドが活用する投資分析用データは、Sun Protocolを導入するマイクログリッドのエネルギーデータやペイメントデータから収集される設計となっています。すなわち、Electraseed Fundは、Sun Protocolを導入するマイクログリッドプロジェクトの資金調達を簡易化することを主な役割としているのです。

まとめ

日本国内でも、電力ネットワークにブロックチェーン技術を活用するという試みは既に行われています。しかしFreeelio社のアプローチは、途上国地域の農村が対象であるが故に、電力だけでなく決済インフラまで提供するという点において、いささか斬新的ではないでしょうか。

加えて同社は、データの透明性及び信頼性といったブロックチェーンの特性を活かして、マイクログリッドに対して、資金調達面での支援策も提供します。ここまで多面的にサポート環境の構築に取り組む事例は非常に希少だと考えられます。

Freeelio社は上記2つのプロジェクト以外にも、エネルギー×ブロックチェーン分野で様々なプロジェクトを実施しています。同領域における先進的な企業の一つとして、今後の同社の動向は注目に値するでしょう。

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渡邉草太

渡邉草太

ドイツ・ベルリン在住。放送大学情報コース在籍。2018年頃からブロックチェーン業界にてライターorリサーチャーとして活動。ブロックチェーン学習サービスPoL(ポル)でリサーチャーとして活動中。主な研究・執筆対象はパブリック・ブロックチェーンの分散型金融システム(DeFi)やフィンテック、分散型アイデンティティなど。Twitter : https://twitter.com/souta_watatata