今回は、Astar Network(アスターネットワーク)について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- Astar Networkとは
1-1.Polkadotのスマートコントラクト・ハブ
1-2.Polkadotのパラチェーンを獲得
1-3.異なるブロックチェーンのdAppハブ
1-4.開発会社Stake Technolosiesについて - 仮想通貨ASTRとは
2-1.ASTRのユーティリティ
2-2.ASTRのステーキング - Astar Networkの今後のロードマップ
- まとめ
2022年1月、コインチェック株式会社は「Coincheck Labs」を通して日本発のパブリックブロックチェーンである「Astar Network(アスターネットワーク)」を開発するStake Technolosiesへの出資を発表しました。Coincheck Labsは、Web3.0時代を牽引する日本のスタートアップを支援するプログラムです。
Astar Networkは2022年1月17日にメインネットを立ち上げたばかり。これに伴ってASTRが複数の海外取引所に上場されており、国内外で大きな注目を集めています。そこで今回はAstar NetworkおよびそのトークンであるASTRについての概要や今後の見通しについて解説します。
①Astar Networkとは
まず、Astar Networkについてその概要と特徴を解説します。
1-1. Polkadotのスマートコントラクト・ハブ
「Astar Network(アスターネットワーク)」はシンガポールを拠点とするStake Technolosies(ステイクテクノロジーズ)が開発したパブリックブロックチェーンです。Astar Networkのトークンは「ASTR」と呼ばれています。
Astar Networkは元々「Plasm Network」という名称でしたが、2021年9月にリブランディングをして改称しています。同社はPolkadot(ポルカドット)上でスマートコントラクト機能を提供する基盤となるために構築を進めており、Polkadotの「スマートコントラクト・ハブ」になることを目指しています。
Polkadotもブロックチェーンですが「リレーチェーン」の接続機能とセキュリティの維持に特化しており、スマートコントラクトをデプロイしたり、実行するために設計されていません。AstarはEVM(イーサリアム仮想マシン)とWASM(ウェブアセンブリー)に対応しているため、イーサリアム互換のdAppsに加えてPolkadotネイティブなdAppsの構築も可能となっています。
1-2. Polkadotのパラチェーンを獲得
Polkadotエコシステムでは中心に「リレーチェーン」があり、「パラチェーン」と呼ばれる単一のブロックチェーンの相互運用性を実現しています。パラチェーンの枠(スロット)は最大100枠となっており、定期的に開催される「パラチェーンオークション」で埋まっていきます。
Astar Networkはこのオークションにおいて枠(スロット)を獲得し、世界で3番目にPolkadotに接続し、2022年1月にメインネットをローンチしています。
1-3. 異なるブロックチェーンのdAppハブ
Polkadotの言う相互運用性は「Substrate」という独自のフレームワークに基づいたブロックチェーンのみが対象となっています。そこで、ビットコインやイーサリアムなどSubstrate以外のブロックチェーンとの相互運用は、Astar Networkも提供する「ブリッジ機能」が担います。
Astar Networkが提供するブリッジは現時点でイーサリアムとの接続が完了しており、今後はコスモスなど複数のブロックチェーンと接続する計画です。つまり、Astar NetworkはPolkadotエコシステムにおけるスマートコントラクトの基盤としてだけでなく、マルチチェーンの「dAppsハブ」として重要なプロジェクトとなっているのです。
1-4. 開発会社Stake Technolosiesについて
Stake Technolosiesは2019年に渡辺創太氏が日本で設立した企業です。現在はシンガポールに拠点を移しています。Stake Technolosiesの事業内容は下記の通りです。
- ブロックチェーンの研究開発
- プロダクト開発
- コンサルティング
- 教育事業
Stake Technolosiesは、Polkadotの開発を主導するWeb3 Foundationから複数回助成金を受け取り、一環してPolkadotのエコシステムに貢献してきました。また複数の資金調達ラウンドで4,400万ドル(約25億円)以上を調達しており、主要な投資家としてAlameda Research、Gumi Cryptos、Binance、OKEx、Fenbushi Capital、出井伸之氏、内山幸樹氏、坂井豊貴氏、本田圭佑氏などが支援しています。
②仮想通貨ASTRとは
次に、Astar Networkで使用されているASTRについて解説します。
2-1. ASTRのユーティリティ
ASTRは、Astar Networkでのトランザクションのガス代の支払いに使用されます。また、ガバナンストークンとして、プロジェクトの方針についての提案・投票機能に使用されます。今後の可能性としては、ASTRを裏付けとするステーブルコインやDeFiアプリケーション上の流動性マイニングなどの用途も出てくることが予想されます。
2-3. ASTRのステーキング
Astar Networkでは「dAppsステーキング」という仕組みによって、独自のBuild to Earn(構築して稼ぐ)モデルを採用しています。Astar Networkではブロック報酬のASTRの半分がdAppsステーキングに配分されており、開発者:ステーキングするユーザー=4:1の割合で分けられます。このステーキング報酬はASTRホルダーにとってはdAppを支援(投票)するインセンティブとなります。そして開発者にとってはプロダクト未ローンチの段階でさえ収益を見込めるため、Astar Networkで構築する動機となります。
③Astar Networkの今後のロードマップ
最後に、Astar Networkの今後について解説します。公開されたロードマップでは、2022年第1四半期には、Astor Portalへクロスチェーンのトークンスワッププロトコル「AnySwap」のブリッジ統合を実施、第2四半期には、Astar Network上のネイティブDEX(分散型取引所)「ArthSwap」を、ローンチ予定としています。また、2020年12月にはWeb3 Foundationからグラントを受け取り、注目度の高いL2スケーリングソリューション「ZK Rollups」の開発を進めており、こちらの動向も注目されています。
④まとめ
DeFi関連サービスの実用性を高めWeb3.0を実現する為には、インターオペラビリティが一つの鍵となります。その流れに乗ってマルチチェーンdAppsiハブを目指すAstar Networkは、Polkadotにおける重要なプロジェクトと言えるでしょう。ASTRはリリースされたばかりであり、現在のところ海外の仮想通貨取引所で上場しています。PolkadotとAstarNetworkのエコシステムが拡大するにつれて、ASTRの需要も高まってくるでしょう。
中島 翔
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