The Sandbox(ザ・サンドボックス)の親会社で、日本進出も果たしたAnimoca Brands(アニモカブランズ)について解説

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今回は、The Sandboxの親会社であるAnimoca Brandsについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. The Sandboxとは?
    1-1.The Sandboxの概要
    1-2.The Sandboxのゲーム内容
    1-3.仮想通貨SAND
  2. Animoca Brandsとは?
    2-1.Animoca Brandsの概要
    2-2.Animoca Brandsの事業展開
  3. 日本企業のThe Sandboxへの進出
  4. まとめ

2021年にFacebookが社名を「Meta」に変更したことをきっかけに、メタバース市場が急激に注目を集めました。それに伴い、インターネット上の仮想空間内でプレイできるブロックチェーンゲームの人気が高まっています。

中でも、「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」はメタバースで遊べるブロックチェーンゲームの代表格として期待されています。The Sandboxの運営会社の親会社であるAnimoca Brands(アニモカ・ブランズ)社はゲーム開発のほか、150以上のNFT・メタバース関連企業に投資していることで有名です。そこで今回は、The Sandboxを率いるAnimoca Brandsについて解説します。

①The Sandboxとは?

まずは、The Sandboxについての基本事項を解説します。

1-1. The Sandboxの概要

Sandbox
「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」とは、ユーザーがメタバースと呼ばれる仮想空間上で、ボクセルアートのアバターや建物などのアイテムやゲームを作成して遊ぶ「ユーザー主導のゲームメイキングプラットフォーム」です。The Sandboxシリーズは2012年のリリース以来、これまでに4,000万ダウンロード・月間ユーザー100万人以上(2019年10月時点)を達成しており、NFTを導入した最新シリーズ(The Sandbox Metaverse PC版)でも、更なる成功へ期待がよせられています。

The Sandbox Metaverseのユーザー(クリエイター)は、オンライン上に構築された3D仮想空間上に「LAND(土地)」を購入もしくはレンタルすることで、LAND上でオリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスの作成が可能です。さらに、所有するLANDやアイテム、キャラクターはNFTとしてプラットフォーム上で自由に売買することが可能です。また、エンドユーザーは自分のアバターを作成して仮想空間にアクセスしている他のユーザーとのコミュニケーションを楽しんだり、仮想空間上に構築されたコンテンツで遊ぶことができるようになっています。

The Sandboxは、2011年にアーサー・マドリード氏とセバスチャン・ボルジェ氏によって設立されたPixowl社によって開発がスタートしましが、2018年にAnimoca Brands(香港)に4,875万米ドルで事業売却されています。現在はマドリード氏がCEOを、ボルジェ氏がCOOを務めるTSB Gaming社がゲームIPを引き継ぎ、Animocaの子会社としてThe Sandboxの開発を主導しています。なお、The Sandbox Metaverseは分散型であるため、実際にこのゲームを「所有」している組織はありません。

The Sandboxの投資家には、スクエア・エニックスやアタリコンピューター、そして人気NFT「CryptoKitties(クリプトキティ―ズ)」を生み「NBA TOP SHOT」でも成功したDapper Labsなどが名を連ねます。2021年11月には、ソフトバンクグループ(SBG)傘下のビジョン・ファンド2などから9,300万ドルを調達したことが報じられています。

1-2. The Sandboxのゲーム内容

The Sandboxはメタバースに仮想通貨を組み合わせたプラットフォームです。ユーザーは仮想通貨ウォレットを接続することで仮想空間内でアバター・アイテム・武器などの様々なアイテムを売買したり、仮想空間に構築されたゲームをプレイしたり、仮想空間上の土地を売買したりできます。

The Sandboxの仮想空間上に存在する土地は「LAND」として販売されており、ユーザーはLANDを購入してアトラクションを構築したり、イベントを開いたり、レンタルして賃貸料を得たり、売却することができます。The SandboxではNFTマーケットプレイスも提供されており、ユーザーは仮想通貨SANDを使用して自分が保有するNFTを他のユーザーと売買することができます。The Sandboxは既に「Snoop Dogg」、「Care Bears」といった様々な個人・企業・プロジェクトと提携しているため、NFTマーケットではそのような有名ブランドのNFTアイテムも販売されています。

The Sandboxでは、LAND上で展開できるオリジナルのアイテムやキャラクター、建物など(ASSETと呼ばれる)を作成できるよう、クリエイター向けに「VoxEdit」というツールを提供しています。さらに、ビジュアルスクリプトツールが搭載されている「Game Maker」を使い、メタバース上に無料で3Dゲームを作ることが可能で、VoxEditで作られたボクセルモデルをゲームに利用することもできます。

VoxEditやGame Makerで制作した作品は、NFTとしてThe Sandboxマーケットプレイスで販売できるほか、自作のゲームを有料で提供することも可能です。

1-3. 仮想通貨SAND

「SAND」とはThe Sandboxエコシステムで決済通貨として使用されるネイティブトークンで、イーサリアムブロックチェーンのトークン規格(ERC20)で発行されています。SANDを介してゲーム内のイベントに参加したり、仮想土地(LAND)やアバターを含むゲームアイテムを取引する際にも使用されます。*現在、SANDを取引できる国内の仮想通貨取引所はないため、Binanceや分散型取引所Uniswapなど国外の取引市場へアクセスする必要があります。

②Animoca Brandsとは?

次に、The Sandboxの親会社Animoca Brandsについて、解説します。

2-1. Animoca Brandsの概要

Animoca
Animoca Brandsは2014年に設立され、香港に拠点を置くデジタルエンターテインメント、ブロックチェーン、ゲーミフィケーションのリーディングカンパニーです。The Sandbox、Crazy Kings、Crazy Defense Heroesなどのオリジナルゲームに加え、Disney、WWE、Snoop Dogg、The Walking Dead、Power Rangers、MotoGP™、Formula Eなどの人気のIP(知的財産)を活用したプロダクトなど、幅広いポートフォリオの開発・パブリッシングに携わっています。Animoca portfolioオープンメタバースの構築に関係するNFT企業や分散型プロジェクトの分野では、Axie Infinity、OpenSea、Dapper Labs(NBA Top Shot)、Yield Guild Games、Harmony、Alien Worlds、Star Atlasなど150以上に投資ポートフォリオを拡大しています。

Animoca Brandsの累計調達額は約7億米ドルに上り、直近の資金調達ラウンドでは54億米ドル(約6160億円)の評価額で3億6000万米ドルを調達しています(2022年1月発表)。既存出資元のLiberty City Venturesが主導し、ウィンクルボス兄弟の投資会社やSoros Fund Managementなどが新規で参加した結果、同社の評価額は2021年10月の調達ラウンド時点の22億米ドルから2倍以上に拡大しています。Animoca Brandsは調達した資金を投資ファンドやゲームプロダクトの開発に充てる予定です。

2-2. Animoca Brandsの事業展開

Animoca Brandsは、ゲームやメタバースにおいてブロックチェーンやNFTを活用することで、オンラインゲームユーザーに真の「デジタル所有権」を提供することを目指しています。「The Open Metaverse(オープンメタバース)」の構築に注力しており、ユーザーがデジタルアセットや知的財産を真に所有し、GameFi(ゲームファイ)に公平に参加できる環境を実現しようとしています。

2021年12月にAnimoca Brandsは、バイナンス・スマートチェーン(BSC)上に構築されるNFT・ブロックチェーンゲームのアクセラレーションを支援する目的で、BSCの投資部門「1B Growth Program」と約230億円(2億ドル)規模のファンドを設立しています。

2021年10月には、日本の戦略的子会社「Animoca Brands株式会社(Animoca Brands KK)」が設立されました。Animoca Brands KKは大手出版社やブランド、スポーツ競技団体、アーティスト、ゲーム会社といった日本のコンテンツ(IP)ホルダーと連携して、グローバルでのファン獲得を支援します。同社はまた、2022 年 1 月のシードラウンドで MCP アセット・マネジメントが組成した IPX1 号ファンドから 500万米ドル、Animoca Brandsから500万米ドルの資金調達を完了。IPX1 号ファンドには講談社、西日本鉄道、三井住友信託銀行などが参画しています。

③日本企業のThe Sandboxへの進出

2022年に入り、日本企業が続々とThe Sandboxへの進出を表明しています。

①SHIBUYA109

The sandbox 109
株式会社SHIBUYA109エンタテイメントは2022年3月1日、The Sandbox上に「SHIBUYA109 LAND」を開設することを発表しました。SHIBUYA109はBACASABLE GLOBAL LIMITED*と業務提携し、専用の土地「SHIBUYA109 LAND」を開設しています。SHIBUYA109 LANDはメタバースだからこそできる新しい体験(オリジナルNFT販売やNFTが手に入るミニゲーム、メタバース上での広告事業など)を提供していくだけでなく、これまで同社がリアルで展開してきたアーティストやキャラクター等とのコラボレーションなど、様々な仕掛けを検討しています。*The Sandboxの商標を所有する香港企業

②エイベックス・テクノロジーズ

エイベックス・テクノロジーズ株式会社は2022年2月28日、本年度中を目途にThe Sandbox内にテーマパーク「エイベックスランド(仮称)」を設立する計画を発表しました。この参入は「NFT、メタバース領域でのグローバルなIP(知的財産権)展開の拡大」を目的としています。エイベックスランドを通してイベントや展示会、ファンとのミートアップやライブ配信などを開催することで、アーティストとファンが交流できる場所を提供することを予定しており、NFTアイテムの販売なども検討していく見込みです。

Sandbox avex

Metavex District LANDセールで発売されたエイベックスアーティストの関連NFTアイテム

④まとめ

Animoca Brandsは世界各地に150社以上のポートフォリオを有する世界最大規模の多様なエコシステムを形成しており、関連サービスの利用者は1億人を超えていると見積もられています。The Sandboxをはじめとする人気NFTゲームに多数関与しているAnimoca Brandsは、今後もWeb3の開かれた世界(The Open Metaverse)の実現に向けて様々なプロジェクトと提携していくことが予想されるため、その動向から目が離せません。

昨今、グッチやUbisoft、アディダスといった世界的な企業がThe Sandoboxへ進出するケースが増えるなか、同じタイミングで日本企業も参入してきています。昨年10月に設立されたAnimocaの日本子会社Animoca Brands KKがどのように関与しているかは明かされていませんが、国内企業が所有するIPがNFTやブロックチェーンゲームの分野に展開する動きは加速していくことになりそうです。

The Sandboxの仮想通貨SANDは国内の仮想通貨取引所では取り扱っていませんが、仮想土地LANDはCoincheck NFT(β版)で購入することができます。Coincheck NFT(β版)はコインチェックの口座開設者なら誰でも利用できるので、興味のある方はこの機会にコインチェックの口座開設を済ませておきましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12