PR大手の株式会社ベクトルは4月9日、九州大学の馬奈木俊介教授と提携し、ESG(環境、社会、ガバナンス)投資分野における産学連携プロジェクトを開始すると発表した。馬奈木教授の知見とベクトルグループのテクノロジー、マーケティングコミュニケーション力を掛け合わせ、日本企業のESG情報の総合的なプラットフォームの開発を目指す。
ベクトルグループはニュース配信プラットフォーム「PR TIMES」の運営、コンサルティング事業、ブランディング事業などを手掛ける。国内のほか中国、東南アジアに事業拠点を持ち、グループ従業員数は連結1037名(2019年2月28日現在)。馬奈木氏は九州大学大学院工学研究院都市システム工学講座教授、九州大学都市研究センター長・主幹教授。2018年に世界環境資源経済学会共同議長を兼任。17年には独ベルリンで開催された環境会合で「富の計測プロジェクト」を代表し「国連・新国富報告書2018」を発表した。近年では国連プロジェクトを主導し気候変動や人的資本の分析、SDGs(持続可能な開発目標)の施策を進め、豊かな社会づくりを実現するための新しい指標を作る研究を行っている。
連携プロジェクトでは①機関投資家やESG評価機関に対して、ワンストップでESGデータの検索や分析が可能となるサービスの提供②日本企業に対して、多様なESGリサーチ及び格付機関対応の効率化やESGスコア・格付けの向上を目的とした各種コンサルティングサービスと施策案の提供の実現を図る。
産学連携の背景について、同社は次のように説明する。「サステナビリティやシェアリングといった価値観が生活者に支持され、企業が提供するプロダクトやサービス、コミュニケーション活動において、社会的課題に対する具体的なビジョンを盛り込むことが重要視されている。また、ESGの観点から企業の将来性や持続性などを分析・評価した上で、投資先を選別するESG投資が注目されている」。こうした機運の中、20年3月にはグローバル最大級の年金基金であるGPIF(日)、CalSTRS(米)、USS(英)の3社が「Our Partnership for Sustainable Capital Markets」という表題の共同声明を発表しており、同社も「世界的なESG投資の潮流がさらに加速し、投資対象の選定において、企業のESGへの取り組みが一層重要となる可能性」を見込んだ。
国連の責任投資原則(PRI)に署名している投資家の運用資産総額は19年に80兆ドルとなり、20年には90兆ドルに達するともいわれる。企業経営においてESGの観点を積極的に取り込む必要性とそれに伴うメリットが増加してきた一方、日本の機関投資家によるESG投資は北米・欧州に比べ7分の1程度にとどまっている。同社は「今後は日本でも投資規模拡大が期待される」と、プロジェクトの推進に意欲を示している。

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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