気候テックスタートアップの米エクアティック(Equatic)は2月27日、シンガポールで世界最大級の海洋炭素除去プラントを建設する計画「Equiatic-1」を発表した(*1)。同プラントは、2024年半ばにシンガポール・トゥアスで稼働する予定だ。
1日当たり10トンの二酸化炭素(CO2)を除去し、300kgのカーボンネガティブな水素を生成する。プラントが完成すれば、世界最大級となる年産3,650トンのCO2除去(CDR)施設となる。
エクアティックのプリンシパル・アドバイザーを務めるロレンツォ・コルシニ氏は「このプラントは、世界的に通用する規模と競争力のある価格でCO2を除去するために不可欠なステップとなる。除去コストは、2030年よりもかなり前に、業界の目標であるトン当たり100ドルを下回るだろう」と述べた(*1)。
Equatic-1はモジュール式システムで、個々のユニットの性能を段階的に積み重ねることができ、系統的かつ迅速に拡張が可能だ。これらのユニットは、米エネルギー省が立ち上げたエネルギー高等研究計画局(ARPA-E)の支援を受けて開発されたエクアティックの酸素発生用陽極を採用する。
塩素ガスの不要な生成を排除しながら、カーボンネガティブな水素も製造する。これは、ギガトン規模の炭素除去への新たな道筋を開くものであり、カーボンネガティブな水素を製造して、脱炭素化が困難な産業のCO2排出削減を支援するものだ。
エクアティックの炭素除去実証プラントは、海水、空気、岩石、再生可能な電力を活用してCO2を除去・貯蔵し、同時にカーボンネガティブな水素を生成する。
まず、海水に電流を流し(電気分解)、処理された海水に大気中の空気を通す(ダイレクト・エアー・キャプチャー)。これらのステップによって、CO2が固体鉱物や海洋に自然に存在する溶存物質に捕捉され、10万年以上にわたって確実に貯蔵されることになる。最後に、処理された海水を中和し、海の化学的性質を保つために岩石を使用する。
シンガポールでの取り組みは、シンガポール公益事業庁(PUB)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)との独占プロジェクトである。重要なのは、エクアティックが製造する電気化学リアクターを使用したCO2除去のトン当たりユニットコスの削減を実証し、パイロット段階で確立されたISO 14064-2:2019国際規格の測定・報告・検証(MRV) 手法を使用することである。
エクアティックは、2026年の早い時期に、年間10万9,500トンのCO2を除去し、3,600トンのカーボンネガティブな水素を発生させることができる、最初の商業規模展開のためのプラント開発を開始した。
このプラントは、Equatic-1実証プロジェクトで最適化された電解槽を導入するモジュール式システムとなる。同プラントから得られる炭素クレジットと水素は、ボーイングなどに先行販売されており、現在も更なる販売を続けている。
【参照記事】*1 エクアティック「Equatic Unveils Plans for the World’s Largest Ocean-Based Carbon Removal Plant」
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