米電気自動車(EV)大手のテスラ(ティッカーシンボル:TSLA)が5月17日、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが算出・公表する「S&P500ESG指数」の構成銘柄から除外されたことが明らかになった(*1)。
同指数は各企業のESG(環境・社会・ガバナンス)に関連したデータを活用してスコアを割りあてる。地球に影響を与えるビジネス慣行やステークホルダーへの対応に関連する数百種類のデータポイントにもとづきスコアリングする。S&Pのスポークスパーソンは、テスラに低炭素社会の実現に向けた戦略や行動規範が欠如しているほか、カリフォルニア州・フリーモントの工場での人種差別にくわえ、劣悪な労働環境をしいていることが報告されていると説明した。
加えて、自動運転支援システム「オートパイロット」を搭載した車両の死傷事故を調査する米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)への対応もスコアに影響したという。また、テスラはガソリンなどを燃料とする自動車を路上から取り除くことで一役買っているかもしれないが、より広範なESGの観点では他社に後れをとっていると言及した。
テスラは世界中で持続可能なエネルギーへの移行を加速させることを使命としているが、22年2月には大気浄化法違反および二酸化炭素(CO2)排出量のトラッキングを怠ったことに関し、米環境保護庁(EPA)と和解をしていた。
また、テスラは22年第1四半期決算において、カリフォルニア州で水の取り扱いに関して調査を受けているほか、ドイツではバッテリー回収義務を怠ったとして制裁金を支払ったことを明らかにしている。
さらに、フリーモント工場内で黒人に対するハラスメントと人種差別があったとの疑いで、カリフォルニア州の人権保護機関である公正雇用住宅局(DFEH)から訴訟を起こされた。DFEHはテスラが日常的に黒人労働者に身体的負担の大きく危険な業務を割りあて、不満を口にする者には報復を行った証拠を見つけたとの声明を出している。
一方、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は同指数から除外されたことに対して「S&P500によれば、(米石油大手の)エクソンモービル(XOM)がESGの観点で世界上位10社に入る一方でテスラはリストに入らなかった」とツイート(*2)。また「ESGは詐欺だ。インチキ社会正義の戦士によって武器にされている」と批判した。
テスラが直近公表した「インパクトレポート2021」では、大手の投資会社が組成したESGファンドに資金を託す個人投資家は、気候変動を悪化させる企業の株式にその資金を投じることができることをおそらく知っていないと指摘(*3)。温室効果ガス(GHG)をほとんど削減していない他の自動車メーカーが、より高いESG評価を受けているとも主張している。
代表的なESG銘柄としてみられていたテスラが有力株価指数から除外されたことで、ESGスコアリングの基準や評価方法を巡る議論が高まりそうだ。
【参照記事】*1 S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス「The (Re)Balancing Act of the S&P 500 ESG Index – Indexology® Blog」
【参照記事】*2 ツイッター(イーロン・マスク)「Elon Musk(@elonmusk)さん」
【参照記事】*3 テスラ「Tesla 2021 Impact Report」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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