2017年の6月に実施されたICOのうち、90%が資金の調達目標を達成した。この時期はICOブームの絶頂期だったと言えるかもしれない。熱狂的な動きは年末に向かうに従いトーンダウンし、同年11月に行われたICOのうち目標を達成したのは25%にとどまった。こうした流れの中、ICOで調達した資金のセキュリティはどの程度確保されているのだろうか。
会計、税務、アドバイザリーサービスなどを提供するイギリスのErnst and Young社が公表した調査結果によると、ICOで調達された資金のうち10%以上が紛失か盗難に遭っているという。同社は、こうした規制が十分に整っていない市場に投資を行うことをリスクと捉えている。
Ernst and Young社はサイバーセキュリティ支援を行うGroup iBと協力し、仮想通貨市場で行われた372のICOを分析した。分析の対象期間は明示されていないが、データは「取引、データアグリゲーター、ICOレポート、ICOトラッカー、ニュースサイト、ブロックチェーンネットワークの調査/取引所、そしてブロックチェーンに関するソーシャルメディアといった公のソース」から集めたとしている。
調査の結果、ICOで調達された37億ドルのうち約4億ドルが紛失、もしくは盗まれていることが明らかになった。資金の盗難についてはフィッシング詐欺が最も頻繁に行われ、仮想通貨や法定通貨を詐欺サイトに送金させる手口が横行している。フィッシング詐欺だけでも月に150万ドルの被害が発生している、と調査では指摘されている。
こうした結果が出てはいるが、Ernst and Young社は資金調達手段としてのICOを否定しているわけではない。アドバイザリーサービスを提供する同社は、仮想通貨に投資をする際に気を付けるべき点を指摘しているに過ぎない。業界内でもより取引の安全性を高めるインフラが整備され始めており、詐欺などの仕掛けに引っかからないようコミュニティ全体で警戒をしておくことが大切だ。
【参照サイト】10% of $3.7 Billion in ICO Funds Lost or Stolen: Ernst & Young Report
【参照レポート】Big risks in ICO market
木村つぐみ
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