経済産業省は2月14日、トランジションファイナンス(移行債)の普及を目的とした「令和3年度クライメート・トランジション・ファイナンスモデル事業」で、電力分野とガス分野のモデル事例を発表した。
脱炭素化のための移行資金を円滑に供給することが目的で、今回選定されたのは東京ガス株式会社、東京電力フュエル&パワー株式会社と中部電力株式会社が50%ずつ出資する株式会社JERAのトランジションボンド。東京ガスは天然ガスへの燃料転換、ガス体エネルギーの脱炭素化への取り組み、JERAは火力発電における化石燃料とアンモニア・水素の混焼実証、既存の非効率な火力発電所の廃止に関する支出に充てる。
東京ガスは、都市ガス事業者として国内で初めて国内公募形式のトランジションボンド発行となる。同日の発表などによると、発行総額は200億円規模、発行時期は今年3月を予定しており、年限は7年および10年。東京ガスグループが進める3つのプロジェクト(新居浜LNGプロジェクト、スマートエネルギーネットワークプロジェクト、晴海水素事業)への投資に活用する。主幹事証券会社はみずほ証券・野村證券。
同社はグループ経営ビジョン「Compass2030」の具現化に向け、2021年11月に公表した「Compass Action」でカーボンニュートラルへの移行をリードすることを掲げている。今後もESGファイナンスを活用しながら、30年までに脱炭素含む成長領域に約2兆円規模の投資を行い、2050年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に貢献していくとしているESG債の発行は20年12月に発行したグリーンボンドに続いて2例目。
JERAも電力分野で初めての発行で、発行総額は東京ガスと同規模と見られる。トランジションボンド発行に係る各種基準への適合性について、第三者評価機関であるDNVビジネス・アシュアランス・ジャパン株式会社から評価を受けている。3月上旬の条件決定を予定する。
経産省は、カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーなど既に脱炭素の水準にある取り組みに加え、CO2多排出産業が着実に脱炭素化に向かうための移行(トランジション)の取り組みへの資金供給を促進していくことが重要と考え、環境省、金融庁と共同で21年5月にクライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針を策定。2月4日に電力、ガス分野のロードマップを公表している。
同事業は基本指針、ロードマップと整合し、モデル性を有する事例について、情報発信、評価費用の負担軽減を行う。今年1月、JFEホールディングス株式会社、2月には日本航空株式会社(JAL)がトランジションボンドの発行を発表。このうち、JALは省燃費性能の高い最新鋭機材(A350・787など)への更新費用を調達する計画。
大手企業の発行が相次ぐトランジションボンドだが、同省はファイナンスの金融商品(債券、貸出)としてのリスクについては評価の対象としていない。モデル事例でも通常のファイナンスと同様、信用リスクなどは存在することに留意するよう、同省はアナウンスしている。
【参照リリース】
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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