欧州のグリーンウォッシュ規制でESGファンドが大量改名 化石燃料投資は継続

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欧州連合(EU)で2025年5月末に施行された新たなグリーンウォッシュ規制を前に、金融機関が数百本のファンドから「ESG」や「サステナブル」といった環境関連用語を削除していたことが、新たな分析で明らかになった。

欧州証券市場監督局(ESMA)の新規則では、ファンド名にサステナビリティや環境関連の用語を含む場合、石炭・石油・ガス・汚染度の高い発電事業から一定以上の収益を得る企業への投資が制限される。また、投資の80%がファンド名に示されたESG目標を満たす必要がある。ドイツのキャンペーン団体Finanzwendeの分析によると、約674本のファンドが環境関連の用語を削除。特にステート・ストリート、UBS、ノーザン・トラストが高い割合で改名を実施した。

多くのファンドは「スクリーニング」「セレクション」「トランジション(移行)」といった代替語を採用。これらの用語を使用するファンドは、新規制下でも化石燃料企業への投資を継続できる。例えば、インベスコは「サステナブル・ユーロ圏株式ファンド」を「トランジション・ユーロ圏株式ファンド」に変更。2025年4月時点で、ガスや化石燃料電力を販売するイタリアのエネルとドイツのE.ONに投資していた。

一方で、化石燃料投資を実際に削減し、環境関連の名称を維持するファンドも存在する。世界最大の資産運用会社ブラックロックは、56本(510億ドル相当)のファンドからサステナビリティ関連用語を削除する一方、60本(920億ドル相当)については名称を維持し、持続可能な特性を強化したと発表。モーニングスターの分析では、名称を変更しなかったESGファンドは、2024年5月から2025年3月にかけて、トタルエナジーズ、ガルプ、エニなどの化石燃料企業への投資を減少させていた。

ファンド運用会社は名称変更を投資家に通知する義務があるが、多くは機関投資家向けの目論見書での通知にとどまる。モーニングスターのオルテンス・ビオイ氏は、一部のファンドが持続可能な投資配分を引き下げており、「従来型ファンドに近づいている」と指摘する。

今回の大量改名は、グリーンウォッシュ規制の実効性に疑問を投げかけている。規制の本来の目的である環境配慮型投資の促進ではなく、単なる名称変更による規制回避が横行している実態が浮き彫りになった。

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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