静岡銀行は2月1日、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する企業に融資する「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」を静岡県内の企業に実施すると発表した。国内の金融機関で中小企業向けでは初という。融資先は同県磐田市の平野ビニール工業株式会社で、融資金額は1億円。
同ファイナンスは、企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面において与えるインパクト(ポジティブな影響とネガティブな影響)を包括的に分析し、特定されたポジティブ・インパクトの向上とネガティブ・インパクトの低減に向けた取り組みを支援する融資。静岡銀では、SDGsへの取り組みの一環として、同ファイナンスを提供するための準備を進めてきた。一般財団法人静岡経済研究所が株式会社日本格付研究所の協力を得て、地域金融機関ならではの中小企業向けのインパクト評価を行う体制を構築。「ポジティブ・インパクト金融原則」に基づき構築した内部管理体制に従い、インパクト評価で特定したKPI(指数と目標) について、融資期間中における借入人のインパクトパフォーマンスのモニタリングを実施した。
平野ビニール工業は繊維製品、帆布製品、車両用シートの表皮の裁断縫製メーカーで、外国人労働者にも就業機会を提供、貴重な戦力として育成している。インパクト評価では、期待できる活動として、外国人従業員に対する雇用環境の整備、地域活動への積極的な参加など「多文化共生」、地元の伝統産業の活性化などの「サプライチェーン維持」と「地域経済活性化」が挙げられた。一方、ネガティブなインパクトを低減する活動としては、廃棄物の削減、省エネ機器の導入による環境負荷の低減に取り組んでいる。
SDGsとの関連性は、外国人従業員の教育や雇用環境の整備という観点から「ゴール4」および「ゴール8」への関連性が認められ、自動車産業を支えるサプライチェーンの維持や自動車の重要保安部品を高品質かつ安定的に生産している点では「ゴール8」、新型コロナウイルス感染症対策としてのマスクの製造・販売は「ゴール3」に資すると評価された。一方、環境負荷低減の取組みは「ゴール11」「ゴール 12」に関するネガティブなインパクトを抑制するという評価を得た。
同ファイナンスでは1月27日、サッポロホールディングス株式会社と三井住友信託銀行株式会社が契約を締結。金融機関大手と大企業、地銀と中小企業という枠組みが並行して拡大していくか、注目される。
【参照記事】東邦銀行「地域ESG融資促進利子補給制度」のご利用について
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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