シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は9月28日、「シュローダー・グローバル投資家意識調査2022」の結果を発表した。シュローダーが個人投資家の投資動向や投資意識を把握することを目的に実施しており、今回は世界33の国/地域の2万3950人(うち日本1000人)の個人投資家を対象に、2022年2月18日~4月7日にオンラインで調査。結果は3つのテーマで分析し、初回は個人投資家の力と自信について、今回はサステナブル投資をテーマにまとめた。サステナブル投資を実行する日本の投資家は、世界全体では少数にとどまる。一方、日本独自の志向も調査で明らかになった。
世界の個人投資家の9割近くがサステナブル投資を行っている一方、日本の投資家は56%にとどまる結果になった。日本では「高いリターンが見込めない」という理由でサステナブル投資に魅力を感じない投資家が36%で、世界全体を上回った。
サステナブル投資を躊躇する要因として、日本の投資家は「パフォーマンスに対する懸念(38%)」が最も高い割合を占め、「サステナブル投資がおよぼす影響に関し透明性とデータが不足(34%)」、「サステナブル投資について、明確で合意を得た定義がないこと(30%)」が続いた。
投資知識レベルの高い投資家ほど、サステナブル投資の役割に期待している。「投資は気候変動などサステナビリティ(持続可能性)に関する課題を前進させることができる」に対して「同意する」と答えた世界の投資家の割合を投資知識レベル別(自己申告)に見たところ、「専門家/上級レベル」の投資家では69%、中級レベルでは57%、初心者/初級レベル」では49%と、投資知識レベルの高い投資家ほど、投資がサステナビリティに対して果たす役割に期待していることがわかった。「サステナブル投資は長期的な収益を確保する唯一の方法」への回答にも同じ傾向が見られた。
「何がサステナブル投資を増やす要因になるか」を尋ねたところ、日本、世界の投資家ともに、「サステナビリティに関する個人的な志向に合う投資先を選択できる」が最も多く、特に、日本の投資家では75%と、世界(57%)と比較して大幅に高い。これに「サステナブル投資がより良いリターンをもたらすことを示すデータや証拠」(41%)、「サステナブル投資に関する教育の拡充」(33%)が続く。
また、日本を含む世界の投資家は、投資を通じて幅広い社会課題に対してプラスの影響を及ぼしたいと考えていることも示された。日本の投資家は「健康と福祉」(46%)や「質の高い教育」(43%)にプラスの影響を及ぼしたいと考える割合が高く、「貧困の解消」、「格差の縮小」、「気候変動」(それぞれ37%)が続く(日本の投資家が投資によってプラスの影響を及ぼしたいと考える5つの分野)。世界全体では、「質の高い教育」(47%)、「健康と福祉」(44%)に続いて「安全な水と衛生」(39%)、「飢餓の撲滅」(34%)、「気候変動」(32%)が上位を占めた。
また、企業に働きかけを行う上で重要な課題を尋ねたところ、日本の投資家の65%、世界の投資家の66%が「人的資本管理」を挙げた。「インクルージョンとダイバーシティ」を挙げる日本の投資家も50%を超え、多くの投資家が重視する課題であることが示された。
調査結果を受け、投資信託営業部長の堀本亜紀子氏は「日本と世界ではサステナブル投資に対する意識に大きな差がある。サステナブル投資は気候変動など社会課題の克服に役立つだけでなく、投資家の長期的なリターンに資するものということを実績で証明していく必要がある」とコメント。さらに「『ウォッシング』と呼ばれる見せかけだけのESG(環境・社会・ガバナンス)やサステナビリティが問題視されており、情報開示は鍵。データの開示が進み投資家が自分にあった投資商品を選択できるようになることも重要」と指摘している。
地球や社会のサステナビリティに貢献し続ける企業や事業は未来の社会において必要とされる存在となるはずであり、その信頼や期待が利益などの源泉となって、結果として投資家にも経済的なリターンとして還元されると考えられる。それにも関わらず、日本の投資家がサステナブル投資には「高いリターンが見込めない」と考えているということは、そのストーリーが企業から個人投資家にきちんと伝わっておらず、企業や事業への信頼や期待が十分に形成されていないということでもある。
今回のような調査結果を課題認識のきっかけとして、日本における企業と個人投資家のコミュニケーションが活性化し、対話や相互理解が進むことを期待したい。
【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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